山田克哉先生の「ゼロからわかるアインシュタインの発見」「重力波観測」を予想したアインシュタインの原点とは??

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「ゼロからわかるアインシュタインの発見」

理論物理学者の山田克哉先生が、

アインシュタインの発見について、

ゼロからわかりやすく解説されています。

文系でもイメージしやすくわかりやすい

アインシュタイン物理学の入門書です。

今から100年前、アインシュタインは

世界観を大きく変える第一歩を人類史に刻印しました。

とはいえ、今でもアインシュタインが発見した全体像は

未解明のまま・・・

今回は、この本をご紹介します。

「ゼロからわかるアインシュタインの発見」         (山田克哉著、講談社現代新書、2006年)

山田克哉先生(以下、著者)は、理論物理学者として、

これまでも一般向けに難しい物理学の世界をわかりやすく

解説されてこられました。

2016年になり、久々に人類の世界観を大きく更新させる

観測が実現しました。

今から、100年前にアインシュタインが予言したとされる

「重力波」の観測です。

1905年に、アインシュタインは3大発見をします。

前にも当ブログ記事にて、ご紹介させて頂いた

①特殊相対性理論

②ブラウン運動の説明

③光電効果(光量子仮説)の説明

の3つです。

前回の記事では、主に②について語らせて頂きましたが、

今回は、①特殊相対性理論、③光電効果(光量子仮説)

そして、今から100年前の

1916年に提唱された「重力波」とも関わりのある一般相対性理論について

本書のご紹介とともに解説していきます。

アインシュタインの発見には、これほどの業績が残されています。

21世紀現在でも、このアインシュタインの発見の全貌は、

未解明というほど、人類にとっては謎に満ちた存在であります。

後ほど本文でも語っていきますが、アインシュタインと言えば、

「相対論」として知られ、現代物理学では「主流」である「量子論」とは

相容れない存在だとされているようです。

しかし、意外も意外なことに、アインシュタインこそが「量子論の元祖」でも

あるようです。

アインシュタイン自身も、自ら研究していた「量子論」でありますが、

その「量子的世界観」には嫌悪感を抱き、なかなか納得することが

出来なかったことから、安定的な世界観モデルである「相対論」に

固執しながら、その波乱に満ちた生涯を閉じます。

一方、アインシュタインの晩年から死後にかけて、現実的な観測から

得られた「宇宙膨張(インフレーション)理論」による

アインシュタインの置き土産である「宇宙定数」への相次ぐ反論や、

今回観測された「ブラックホールと重力理論」に対する重力の説明に関する

「相対論的限界」といった難問を抱え込んでしまったことから、

「量子論」からの反撃も相次ぎ、次第に影が薄くなっていったようです。

もっとも、ここ最近の「量子論」の最前線でも、その「量子論的限界」に

直面させられてきていることから、再び「量子論」と「相対論」の結合が

試みられようとしています。

そうした最中にある、一般相対性理論の発見からちょうど100年後に

再びアインシュタインの魂は甦ろうとしています。

生前のアインシュタインも苦難に満ちた人生でしたが、死後も

一般世間に、なかなか容易には受け入れられませんでした。

それでも、アインシュタインの愛に満ちた魂は何度でも不死鳥のように

復活しようとします。

そこで、アインシュタインの苦渋に満ちながらも、最期まで「愛と希望と勇気」

忘れなかった魂に感謝しながら、本書を通じて、「アインシュタインの発見」と

その「生き様」を皆さんとともに学ぶことは、

再び世界に不協和音が押し寄せようとする今日において、

大変意義深いことだと思いましたので、本書を取り上げさせて頂きました。

現在も全貌が未解明の「アインシュタインの発見」

さて、冒頭に掲げさせて頂きました「アインシュタインの発見」のうち、

①一般相対性理論、②特殊相対性理論、③光電効果(光量子仮説)について、

本書では「アインシュタイン」以前の物理学史とともに、わかりやすく

解説されています。

まずは、2016年現在において、世界で話題となっている「重力波」を

予言したとされる「一般相対性理論」から触れていきます。

そもそも、「物理学とは何か?」ということから始めましょう。

「物のことわり(理)」を究明するのが、物理学だとされています。

「どのように事物は存在しているのか?」

その存在態様を、「作用(働き方・あり方)」の点から解析していくのが、

物理学の役目だとされているようです。

厳密には、「化学」との競合場面もありますが、

狭い意味での「化学」の方は、

「事物の存在構造や性質・変化を考察する科学」のようです。

つまり、「物理学とは、つまるところ、世の中の事物のすべては運動だ!!」

という見方を提示します。

その「運動」を科学の世界では、「力学」として「物理学の一分野」として

扱われてきました。

ガリレオからニュートンに至る「引力解析」は、重力も含めた「万有引力理論」の

探究の歴史でした。

なぜ、物は落下するのか(または、落下しないのか)は、現代でも「重力の謎」

として、未解明のまま残された難問です。

そもそも、物理学を含め「科学」は、「いかに」を問うことは出来ても、

「なぜ」という不思議にまでは、答えてくれないようです。

それは、「科学」ではなく「哲学」の分野に任されてきました。

しかし、「いかに」だけを問い続けても、「なぜ」が解明されないことには

人々の知的好奇心を満足させないことも事実です。

しかも、「いかに」を問う大前提として、「なぜ」という問いは、

暗黙の了解として絶えず引っ掛かる存在です。

そこで、現代物理学では、本来のその謎の解明の原点に立ち返り、これまでの

実験観察の結果、得られた科学的知見とともに、その存在のありように

対する「解釈」も重視されるようになってきました。

その原点を19世紀末期から20世紀初頭にかけて、あらためて甦らせたのが

アインシュタインでした。

それまでの「古典物理学」の世界観を転換させようと試みます。

研究室という「閉ざされた世界」では、静止した安定型モデルでもってしか

事物の解明をなし得ません。

ところが、現実世界には、常に揺れ動いている現象が満ち溢れていますので、

そのような「静止安定型の閉じられた世界モデル」では、世界における

事物の現象のすべてを解明することは出来ません。

ここで、アインシュタインの慎重な取り組みが意味を持ち始めます。

いきなり、「動態的不安定型の開かれた世界モデル」に挑戦していくのは、

誰しも困難であり大変険しい道のりです。

そこで、アインシュタインの慎重な性格もあってか、一歩一歩地道な

研究を積み重ねていきます。

それは同時に、「子どものような素朴な疑問に対する探求心」

大切にする姿勢でもありました。

アインシュタインも、自らが関与してきた科学的恩恵の「逆説」により、

進学や就職に大変苦労しました。

皮肉にも、科学による「技術革新」が「雇用を奪う」という現状に

巻き込まれることになったのです。

それでも、アインシュタインは神経質ながらも、「子ども心」を

忘れることなく、自分の好きな分野に熱中します。

素朴な疑問は、やがて世の中の公式見解という「常識」に挑戦する

逞しい姿勢に現れてきます。

そのため、アインシュタインは、学校教育では疎外され、

大学受験に失敗しながらも、その才能を評価してくれた

数少ない協力者との縁から、条件付きで大学入学しますが、

就職時にもまた、つまずきます。

それでも、物理学という「学問への止みがたい魂」を失うことは

ありませんでした。

最低限の条件として、物理研究の出来るような職場に潜り込みます。

まったく、場違いな「特許局」の事務員でしたが、一応は

技術的知識に長けていないと携われない仕事ですので、

これはこれでアインシュタインにとっても、心地よい職場だったようです。

たまたま余裕のある職場だったこともあり、好きな物理研究に集中します。

そして、ついに「世紀の3大発見」がなされるに至るのです。

「歴史は、運命の歯車」と、しばしば言及されますが、この間の事情を

観察していてもそのように思います。

「自分の才能磨き」とともに、それを発掘してくれる「良縁」・・・

この2つが、うまく噛み合わないと、なかなか厳しいようです。

それでも、この「回り道」がアインシュタイン個人にとっても、

人類史にとっても大きく影響して、人類の「世界観」を大きく変えていくのですから、

まさに「歴史とは、妙であり因果」であるようです。

この「3大発見」についての詳細な解説については、本書をお読み頂くとして、

少しだけ触れておくなら、アインシュタインは「相対論」だけでなく、

「量子論の元祖」でもあったことは、もっと強調されてもいいのかもしれません。

①「特殊相対性理論」(閉じた静止系力学)

これは、ニュートン以来の古典力学を「相対的」な視点から考察していった

「時空拡張理論」です。

有名な「エネルギーは、質量に光速の二乗を掛けたもの」という方程式は、

ここから導き出されました。

前にもご紹介させて頂いた記事でも軽く触れましたが、この方程式の意味は

「エネルギー(波動)と物質(粒子)の光速内における相互転換」を表しています。

アインシュタインは、「光速度一定の法則」を大前提に「光よりも速い事物なし!!」

という条件で、世界の諸現象を記述します。

そこで、次に「光とは何か?」という問題に遭遇します。

現在では、「量子論」の研究成果も踏まえて「光は粒子であり波動でもある」と

みなされていますが、アインシュタインは、「光量子(粒子)仮説」を採用します。

では、「光=粒子(物質)」は、どのようにして空間を進むのか?

特に、「真空中では??」

大昔から、エーテル波のような「媒介者」が存在していたとする

見解もあったようですが、現在の「公式」見解としては

「完全否定」されているようです。

正直、「目に見えない領域」のことなので、管理人にはよく分かりません。

ここでアインシュタイン自身は「エーテル波」を否定し、

光そのものの波動的性質よりも、

「光は、非連続(離散)的なエネルギーを持った粒子として振る舞う」として

実体的な存在として考えていたようです。

それにしても、「光ほど不思議な存在」もないようです。

そのあたりが、③「光電効果」の実験観察でも確認されて、

ノーベル物理学賞の受賞につながりました。

そのノーベル物理学賞が授与されることを知ったのも、日本での講演旅行へ向かう

船旅の最中だったというのですから、後に日本に起こった大厄災のことを思えば、

歴史的運命とは、あまりにも過酷かつ皮肉であります。

そして、日本での講演旅行の際には、すでに「一般相対性理論」の

アイディアの糸口をつかんでいたといいます。

ここまでは、私たちの住む日常環境のテーマでした。

残された課題が、「目に見えない重力」です。

ここから、一気に「宇宙物理学の世界」へと飛躍します。

「光速度は一定」なのですから、「光速度」を無視して

単純にこの方程式を眺めると、エネルギーは、質量に比例すると

いうように錯覚してしまいます。

質量がゼロに近づけば近づくほど、エネルギー量も少なくなります。

一般的な見た目では、このように解釈されて誤解されやすい方程式です。

ところが、ここに「光速度」が関わってきます。

「光速度」は、きわめて大きな数値(秒速30万㎞)ですので、

ゼロに近づくような極々小さな質量を持った物質であっても、

莫大なエネルギー量を取り出せる可能性も出てきます。

その悪用が、20世紀の大惨事につながってしまうのです。

アインシュタイン自身は、あくまで平和愛好者であり、

もちろん科学の平和的利用という「善用」を願っていたようですが、

いかんせん時代が悪すぎたのです。

この「特殊相対性理論」方程式の意味は、質量とエネルギー量の相関関係も

終局的には「光速度」に依存するということです。

逆に、遠ざかれば遠ざかるほど(つまり、重くなればなるほど)、

エネルギー量は大きくなります。

こちらの方は、一般常識的な直感でもイメージしやすいかと思われます。

その実在が、「ブラックホール」の存在です。

重力が強すぎるために、光も含めて何もかも吸い込んでしまうと

される「ブラックホール」。

当然に、強力なエネルギーが潜在的に含まれている訳ですが、

この「ブラックホール」の合体から超強力な「重力波」が

検出されたといいます。

それは、「見る」ことも、波ですから、音にも変換して

「聞く」ことも出来るそうです。

但し、地球からはあまりにも遠いため、「小鳥のさえずり」の

ような微細な音だそうです。

いずれにせよ、この「ブラックホール」の解明が、

「宇宙創生の秘密」を解く鍵にもなるそうなので、これで

人類がまた一歩「未知の世界」に踏み込んだと言えるでしょう。

この「重力」をも加味した「相対性理論」が、①「一般相対性理論」

だと説明されています。

それは、現在ではカーナビや人工衛星などのGPS機能にも活用されています。

まとめますと、アインシュタインの発見は、現代生活に欠かせない

飛躍的な進歩を人類にもたらしたということです。

その発見を、正しく活用すればという「条件付き」ですが・・・

「光」の正体が、「宇宙開闢」の秘密を解く鍵!?

このように、「相対論」も「宇宙物理学」の最前線を解き明かす鍵として、

必須の発見でありました。

ところで、「量子論」による反撃も見過ごす訳にはいかないようです。

アインシュタインも「光量子(粒子)仮説」、現代量子論との混同を

避けるために、「光子仮説」とも称されている発見でしたが、

「光=波動(運動量を持ったエネルギー)+粒子(位置を持った物質)」

ということは、すでに20世紀までに解明されてきました。

それでは、残された課題として「重力の謎」と「光の謎」には、

どのように迫っていけばよいのでしょうか?

このあたりで、アインシュタインの「相対論」も「量子論」も

行き詰まりを感じてきたようです。

「光自身がエネルギーと粒子を流出している??」

また、「光は電磁場を創出する性質がある」らしいことも

解明されてきたようですが、現在の観測技術でも未解明の領域で

あるようで、なかなか向こうから発信してくれないようです。

アインシュタインも、宇宙膨張が実測されるまでは、

「宇宙は伸縮するはずがない!!」と信じていたようで、

ここに生涯悔いたとされる「宇宙定数」が「一般相対性理論」の

方程式に組み込まれます。

安定した宇宙像を維持するために・・・

この「宇宙定数」をわざわざ導入しなくとも、「一般相対性理論」の

方程式自体が、現実の宇宙の実体を反映することも出来たようなのですが、

現在では、アインシュタインが「宇宙定数」に込めた意味とは

まったく異なる観点から、「宇宙定数」の存在意義も見直されています。

他でもない最期まで受け入れ難かった

「宇宙膨張(インフレーション)理論」自体によって。

ところで、「重力の謎」や「光の謎」とは別に「量子論」の世界では、

「量子ゆらぎ現象」から「宇宙開闢論」に迫ろうとする試みも続行中です。

イメージ像では、宇宙開闢時には、宇宙に遍在するエネルギー量と

物質(粒子)量のうち、若干「物質(粒子)量」の方が多く存在したために、

「陰と陽のバランスが崩壊」する「非対称性による量子破れ現象」から

「無(ゼロ)から有は生じた!!」のではないかとの仮説も提唱されています。

宇宙は、本当に真空なのかどうかも明確ではないようです。

アインシュタインの「相対論」を大前提にする限り、「真空のエネルギー」のような

「厄介な幽霊」も現れるようで、ここでも「相対論」に対する「量子論」などの

立場に立つ物理学者からの不信感が根強く残っているようです。

まとめますと、「相対論」にせよ「量子論」にせよ、その「仮説理論」には

それぞれ魅力もあり、一長一短も含まれていますが、「宇宙のゆくえ」や

「宇宙のはじまり」の解明については、ようやく光が差し込みつつある段階です。

その最大の謎解きの鍵が、「重力波の検出」です。

このテーマについては、今後とも様々な角度から書物の紹介とともに考察していく

予定でいますので、どうぞ楽しみにお待ち頂ければ幸いです。

ということで、本書は「アインシュタイン入門書」としては、わかりやすい部類に

入る好著だと思いますので、皆さんにも是非ご一読下さいますようお薦めさせて頂きます。

まだまだ「一般社会」では、正確に全貌が解明されていない「あらたな世界観」で

あるだけに、皆さんにもきっと、なにがしか有益な視点が得られることでしょう。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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3 Responses to “山田克哉先生の「ゼロからわかるアインシュタインの発見」「重力波観測」を予想したアインシュタインの原点とは??”

ジョン・W・モファット氏の「重力の再発見~アインシュタインの相対論を超えて」謎に満ちた重力を探究する試み!! | 双龍天翔 へ返信する

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