藤田孝典さんの「貧困世代~社会の監獄に閉じ込められた若者たち」誰しも他人事ではない身近に忍び寄る貧困に支援の手を!!

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「貧困世代~社会の監獄に閉じ込められた若者たち~」

藤田孝典さんが、

現代日本における「貧困世代」の実態に鋭く迫っています。

「失われた20年」における「ロストジェネレーション」という

言葉が、社会の主流に定着していく中で、

各種社会コスト負担率も高まっていく一方です。

社会制度の不備も指摘され、「受益者負担の原則」すら

守られていないとの「不満の声」も・・・

今回は、この本をご紹介します。

「貧困世代~社会の監獄に閉じ込められた若者たち~」    (藤田孝典著、講談社現代新書、2016年)

藤田孝典さん(以下、著者)は、1982年生まれ。

社会福祉士業務の傍ら、NPO法人ほっとプラス代表理事や

反貧困ネットワーク埼玉代表、ブラック企業対策プロジェクト

共同代表などの「社会問題支援活動家」としてもご活躍中の若者です。

2013年には、厚生労働省社会保障審議会特別部会委員も

務められています。

著書には、話題作『下流老人-一億総老後崩壊の衝撃』

(朝日新書、2015年)などがあり、この『下流老人』は

大ベストセラーとともに、2015年のユーキャン新語・流行語大賞の

ノミネート50語にも選ばれました。

こうした『下流老人』や『暴走老人』(藤原智美氏)といった

誠に痛ましい言葉が大流行するのも、嫌な感じのする時代です。

これらは、高齢者世代の「社会問題」でありましたが、

今回ご紹介させて頂く本書は、現役世代真っ盛りの「若者世代」へ

向けられた問題提起の書であります。

1982年生まれの著者も、1979年生まれの管理人と同じく

「ロストジェネレーション世代」となります。

「失われた20年」の中で、恵まれた就職活動の機会が

多かれ少なかれ「閉ざされていた」世代であります。

社会人の第一歩を、社会への不信感とともに出発せざるを得ない時代とは、

誠に不幸で悲しいことでもあります。

また、若者の未来への希望や挑戦意欲も喪失させ、「景気よく」経済社会を

循環させていくための「先行投資」をする機会すら減少していくことになります。

この「失われた20年」で、日本社会に大きな「世代間の断絶」を招き、

「万事がカネの世の中」で、相互の人間不信感すら危機的な勢いで、

世界中に拡散されていっています。

そのような現状の下では、安定した社会基盤すら確保することが

難しくなってしまいます。

当ブログでは、主にこれからの未来を担う意欲的な若者への応援メッセージも

込めさせて頂いてきましたが、明るい楽観的な未来を切り拓いていくためにも、

暗く悲観的になりがちな状況も正確に把握しておかなくてはなりません。

そこで、これまでも様々な角度から「楽観論」「悲観論」語ってきました。

本日は、私たち「若者世代」にとっても、すべての世代の方にとっても

重いテーマではありますが、皆さんとともに真剣に考察していきたいと思います。

特に、「若者世代」だけではなく、「若者世代」とともに過ごされることも多い

「高齢者世代」(著者は、あえて<大人>世代という言葉で表現されていますが・・・)

の方にも是非ご一緒に考察して頂けることをお願い申し上げます。

著者も、本書でそのことを強調されています。

その意味で、社会問題を解決する責務は公平に分配されています。

ということで、皆さんとともに、一刻も早く安定した社会基盤を

再建していこうとの趣旨で、この本を取り上げさせて頂きました。

「大人」が「若者世代」に無関心であることが、「大惨事」をもたらした!?~「失われた20年」とともに考える~

まず最初にご了承願いたいのですが、著者と管理人の問題意識も

「世代間バッシング」を容認するものではないということを

強調させて頂きます。

なぜなら、「世代間バッシング」こそ、

「社会矛盾」をより一層押し広げることになり、「無責任社会」を

さらに強化させてしまうからです。

また、これまで「世代論」も、様々なところで論じられてきましたが、

各人各様の人生は一律平等ではありませんので、

あまり「一般化」しすぎることも生産的な議論の妨げとなります。

ですので、本書での論旨展開も、健全な議論を深めていくための

一つの「便宜上の措置」として「若者世代論」も位置づけられていることに

注意されながら、読み進められて頂くと幸いであります。

さて、いきなり著者は本書の<はじめに>で、「貧困世代」の定義から

入っていきます。

著者によると、『貧困世代とは、「稼働年齢層の若者を中心に形成される世代であり、

貧困であることを一生涯宿命づけられた人々」である。概ね10代から30代

(15~39歳)を想定しており、本書で使用する「若者」も、この年代の人々-

わたし自身を含む-である。』(本書4頁)とされています。

著者は、別の箇所で、「貧乏と貧困の違い」にも短く触れられていますが、

「貧乏」は、「一過性」のものとして、今を耐えれば「乗り越え可能な経済状況」のこと

でもあり、人によっては「生き方の選択肢」としても容認され得ますが、

「貧困」は、「長期的に貧乏が固定化された(社会的)経済状況」のことであります。

つまり、「貧困」は「社会問題」だということです。

また、上記の「貧乏」も、「個人的な選択肢」の問題に限定されず、社会全体が

「貧乏」でありながら、ともに「経済成長の伸びしろの余地がある」ところから、

総世代全体の「乗り越え可能な経済状況」のことを指してイメージされています。

そして、本書で提示されるのも「若者世代の貧困問題」であります。

ここで、この「若者世代の貧困問題」を考察していくうえで、最重要な論点は、

「いつの時代も、若者は貧しかったのだ。若い内は苦労してでもはい上がれ!!」との

「高齢者世代」に典型的な認識像を改めて頂きたいとの著者や管理人の願いであります。

簡単に言えば、「時代環境があまりにも違いすぎる!!」のだという視点を

是非「高齢者世代」の方にも共有して頂きたいのです。

特に、私たち「若者世代」と同居暮らしされているなど、身内に「若者世代」が

おられる方々には、真摯に耳を傾けて頂きたいテーマであります。

現代日本は、言うまでもなく長期的な少子高齢化とデフレ(物価下落)経済化の

影響から「人口減少」に直面しています。

この問題も、これから考察していく「失われた20年問題」だけではないとの見方も

含まれており、その根本的な原因も百家争鳴中であります。

長らく続いてきた日本の戦後政策の現れの一環だと見る「保守的な」考えもあるようです。

もちろん、現政権も含めた「保守層」の見方にも一理あるものと思われます。

そうした問題意識からも、こうした「少子高齢化」の歯止めをかけたりする諸政策が

打ち出されてきた訳ですが、肝心なところで「つまずき」もあります。

それは、「貧困問題(経済的社会問題の共有)」の視点が、

あまりにも狭く偏りがあるという点です。

本年度からは、選挙年齢も18歳へと引き下げられるなど、「若者世代向け」の

啓蒙活動もなされているようですが、概ね「高齢者世代向け」の目玉商品に比重が

置かれています。

本書13頁の「人口ピラミッド図」を見れば、一目瞭然なのですが、

60代を中心に40代以上の年齢層と40代以下の年齢層とでは、

人口比率に大きな差が出ています。

2016年現在から本格的な「老齢年金生活」を始められる60代が

「第1ピーク」だとすれば、(管理人の親の世代です。)、

今もっとも気になるのが、

現役社会の主流となりつつある40代も、この60代と同じくらい

人口増にある年齢層だということです。

ですから、今後20年内外には、この現在40代の「第2ピーク」も

到来するということです。(著者の表現では、「下流老人予備軍」)

そして、著者や管理人などの私たち30代もまた、「失われた20年」で

なかなか「生活設計」の目途も立たず、「家族も、住居も、食も、職も・・・」

「持てない」状況にあります。

「持っている」方も、現代の「高齢者世代」とは比較することも出来ない

難題を抱えています。

人によっては、将来を完全に早期から見切って、

「諦めて(もっとも、<明るい>諦めならまだしも)」意識した「持たない」生き方を

選択(と言えば、聞こえは良いのですが、実質は<余儀なくされた>)されている方も

おられるようです。

では、ここからが、著者の問題提起ともつながる現代若者「貧困世代」の特徴ですが、

①安価で安全な生活環境にないこと。

(快適かつ安全な<衣食住生活>が出来ない!!)

②学生時代から「学資(奨学金)ローン」を抱え込み、現在「返済中」のために、

「住宅ローン」融資も受けられないという「二重ローン問題」。

③②とも関連する、そもそも「年収基準」が厳しすぎる中での

賃貸用不動産の家賃高騰とともに、諸物価等も相次ぎ値上がり、

「住む場所すら確保出来ない」とする深刻な住居不足問題。

その他諸々のことが、提示されています。

このあたりは、管理人もかつて「司法書士事務所」に勤務していましたので、

強く実感もしましたし、学ばせられた問題でもあります。

さらに、「貧困ビジネスの実情」も間近で触れる機会もありました。

ほぼ100%「住宅ローンなどの生活ローンと住宅福祉問題」であったことを

申し添えておきます。

著者の最大の主張も、この「住宅は最大の福祉制度である」(本書135頁)

という視点を外しては、

あらゆる「貧困問題」の解決方法の突破口すら見つけられないとの

深刻な指摘であります。

こうした「失われた20年」の中で、現在の「貧困世代」が続々と

世に送り出されていきました。

一番戦慄を感じさせられたことが、著者や管理人などが学生時代を過ごした

1990代最末期から2000年代初期と現在の若い学生さんとの

「アルバイトや教育などの生活環境事情」の違いです。

管理人の頃も、「超就職氷河期」の真っ只中にはありましたが、

もちろん、人によって感想も違いますが、「アルバイトシフト」にも

まだ「ゆとり」がありましたし、過剰ローンまで抱え込み

落ち着いた勉学環境とは無縁な学生生活にまで、追い込まれてしまっていた

学生も少なかったように見受けられるからです。

遊ぶためのお金も、多少は残されていたような気がします。

管理人の場合には、「塾講師」でしたが、残業代や福利厚生まで

ありました。

(それなりの「報酬」で、意欲を喪失させるような金額でもなかった

ようです。)

先輩や同僚同士でも、シフト面で相互協力出来る余地も残されていました。

ところが、あれから15年ほど経た今日では、

「そんなの今では夢物語」のようです。

厳しいご指摘をされる若い方なら、

「このおっさん、何寝ぼけたこと言ってんの・・・」ですね。

「申し訳ございません・・・」

本業の「学業」にすら集中出来る環境にない学生生活だといいます。

本書の事例も、「貧困世代」との問題意識から極端な事例に偏重しすぎではないかと

読み始めの時点では、感じるところもありましたが、

データにより明確に「見える化」されている点が説得力を持たせています。

特に、「下宿生」の場合には、「親からの仕送り」も極端に減少していることや、

奨学金受給環境すら「無利子から有利子へと」大幅に追いつめられている事情も

紹介されています。

そんな若者事情ですから、「貧困世代」を抱え込んでおられる「大人世代」なら

まだしも、すでに「子ども」を世に送り出した「高齢者世代」との間では、

相当な「意識のズレ」があるようです。

そのような「意識のズレ」に気付いて頂きたいと願うのが、

「著者の訴え」であります。

「ワーキングプア」から、単なる「プア」へ・・・

これは、管理人周辺の同級生や友人知人との最近の会話例の

「断トツトップ」のテーマですが、お互いに「揶揄して慰め合う」というのが

悲しいところであります。

いや、「笑うことすら、ままなりません!!」

本当に、30代の同級生は軒並み「厳しい環境」にあります。

「厳しい環境」は、もちろん、現代日本の大多数の方々にも当てはまりますが、

特に、「子育て世帯」にとっては、

不安感も増幅させられるような「深刻すぎる生活環境」にあります。

それは、管理人の身近なところでも実感されます。

兄弟の「暮らし」を垣間見ていますから・・・

待機児童問題は、昔から一向に改善される余地もないようで、

最近の「社会問題」でも取り上げられましたが、

保育園事情も厳しすぎるようです。

そのあたりの難題も幾層と積み重なったこともあり、

「子育て世代」にとっては、ますます肩身の狭い世間となっています。

「子どもの貧困」は、何とか早期に改善して頂きたいという思いは、

著者だけでなく、「心ある」すべての方の願いであります。

※「子どもの貧困問題」についての参考資料は、「内閣府」のサイト

ご参照下さいませ。

また、両親など近親者の「介護問題」も出始める世代が、30代です。

さらに、最大の問題は、やはり「雇用環境の激変と社会不適応観」であります。

すでに、「人間の労働」は斬り捨てられていっています。

今は、辛うじてそのような「人間の労働」に就けていても、

職場環境は悪化していく一方だといいます。

経済環境の酷さが、人間の心を病ませています。

そのような「赤裸々な雇用事情」も詳細に描写されています。

「精神的ストレスによる疾患」から「労災認定」も増加の一途でありますが、

もちろん、すべての「精神的・肉体的疾患者」に「労災認定」が下される訳でも

ありません。

今後の「人工知能」などの進展で、「人間の労働」も減少していくとともに、

安易な経営判断から、「安価な労働者」として「移民・難民依存社会」へと

静かに移行していくことは、極端な差別感情を持った人間でなくとも、

正直不安になるところでもあります。

「世の中は、他人事・きれい事だけで済む社会ではない!!」からです。

今現在ですら、国内の「在日」の方など、生活に深刻な不安を抱えておられるなど

厳しい生活環境にある中、「移民・難民」を安易な考えで受け容れようとするのは

国内外問わずに、深刻な「政治問題」にまで発展していくことになります。

その意味で、「深刻な紛争の火種」は未然に抑止しておく必要もあるのです。

「多様性尊重」は、もちろん大切ではありますが、「同化政策」もうまくいった事例は

歴史的な観点から見ても、「非常に稀!!」だからです。

さらに、「外国人技能実習生制度」の「隠れた問題」もあります。

酷い「ブラック企業」になると、「最低賃金以下」や「囲い込み生活」の実態すら、

摘発されているところであります。

私たちは、このような「世の中」を望んだのでしょうか?

断固として、違うはずです。

誰もが、「共存共栄」しながら「共生」していける社会を想定してきたはずです。

「ものづくりの現場」でも深刻な状況にあるようです、

今朝も、大阪の大企業が「外資系」と提携したとの重大ニュースがありましたが、

何か、最近の風潮は、歪み狂ってしまっているように感じられます。

「そうか、世の中って万事カネか!!」などと、幼少期から柔軟な感性に

焼き付けられていくのを想像すると、薄ら寒いものを覚えます。

「同情するならカネをくれ!!」などと、子どもに叫ばせる社会など

どこにあるでしょうか?

「いのちの方が、断然カネよりも大切なはず」です。

「いのち」を救えるのであれば、ただで「カネ」をやってあげてもいいでは

ありませんか?

何か、思考における「価値基準」が狂っているとしか言いようがないようです。

このように「貧困世代」だからこそ、見えてくる「厳しい視点」もあります。

本書では、他にも社会へ向けた問題提起がなされていますが、

これ以上考察していくと「息苦しく」なってしまいますので、

このあたりで止めておくことにさせて頂きます。

最後に、著者の思いも汲み取って、管理人も強調しておきますが、

「各人各様の事情に、寄り添った視点と理解が重要」だということです。

個別具体的な「特殊例外事情」を、ことさら「針小棒大」に興味本位で

取り上げて「社会的バッシング」する方もおられるようですが、

「絶対にやめて頂きたい!!」と強くお願いしておきます。

また、「経済問題を政治問題(イデオロギー化)にして頂きたくはありません!!」

政治家を始め、政策立案担当者にも、一国民からの要望として

提言させて頂きます。

財界人の方にも、「社会問題」について「カネの視点」だけではなく、

視野を広げて頂くことを切望いたします。

「社会問題」を取り上げる際には、必ず「印象操作」ではなく、

正確な検証もお願いしたいと各種メディアには要望しておきますとともに、

管理人も自らに言い聞かせる努力をして参ります。

ということで、大変「重苦しいテーマ」ではありますが、

前著『下流老人』に引き続いて、出版されたばかりの本書も

ご一読されながら、ともに考察して頂ければ幸いであります。

「すべては、より良き社会実現のために」であります。

なお、「生活保護問題」については、

「生活保護の謎」

(武田知弘著、祥伝社新書、2012年)

また、「世界の貧困事情比較」には、

『世界「比較貧困学」入門~日本はほんとうに恵まれているのか~』

(石井光太著、PHP新書、2014年第1版第1刷)

※こちらも、1977年生まれの若き「貧困世代」からの真摯な啓蒙書で

あります。

いずれにせよ、国内の狭い視点だけで見ていては、

都合の良い「(印象)操作情報」で

振り回されてしまうことにもなりかねません。

さらに、現代日本の「貧困ビジネスの実態」について、

「漂泊される社会」

(開沼博著、ダイヤモンド社、2013年)

をご紹介しておきます。

※「フクシマ論」でも話題になった方が、

日本国内を取材して得られた貴重な情報源であります。

「貧困ビジネスの実態」を社会学的手法から描き出された

「現代社会時評」であります。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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