大岡敏昭さんの「清閑の暮らし」から探る「隠者」たちはどんな庵に住んでいたのか??昔のミニマリストの知恵に学ぼう!!
「清閑の暮らし」
建築学者の大岡敏昭さんが、
『昔の「隠者」たちはどんな庵に
住んでいたのか?』を考察されています。
2015年現在、若者の間に急速な勢いで
浸透しつつある「持たない生活」・・・
「最小限の生活に満足する人」という意味の
「ミニマリスト」という言葉が
話題になっているようです。
経済生活が厳しくなってくると、
必然的に生活コストを切り詰めざるを得ません。
今回は、この本をご紹介します。
「清閑の暮らし~隠者たちはどんな庵に住んでいたのか~」 (大岡敏昭著、草思社、2013年)
大岡敏昭さん(以下、著者)は、建築学者として
「歴史は現在の問題から遡るべし」との理念で、
古代から現代までの日本住宅と中国住宅、および
その暮らしの風景を研究されてきました。
21世紀になり、技術革新とともに住宅事情にも
変化が現れてきているようです。
前にもご紹介させて頂いた
坂口恭平さんの「モバイルハウス」など、
自分で家を建てる意欲的な若者も
増加しつつあるようです。
経済生活が厳しくなれば、衣食住のどれかを
切り詰めていかざるを得ません。
通常の感覚だと、衣→食→住(そのまんまか??)の
順序で、生活コストを下げていかれるかと思われます。
現代社会では、「住」を自前で用意するには
かなり熟練した技がないと難しいですよね。
現代人は、物質的な豊かさに馴染めば馴染むほど、
精神的には貧しくなる傾向にあります。
今や、物質的生活ですら厳しくなる中で、
いかに絶望的にならずに優雅な生活を過ごしていくかに
注目が集まっているようです。
日本人は、昔から「最小限の生活」に憧れてきました。
とはいえ、現実的にはなかなか難しいようです。
最小限の生活といえば、鴨長明の「方丈」記が
常に話題になります。
「方丈」とは、「庵(住まい)」のことです。
この本では、この「方丈」以外にも
様々な隠者の「庵」が紹介されるとともに、
「精神的に豊かな生活とは何か?」を学べる内容に
なっています。
最近ますます増加する傾向にある
「最小限の生活人(ミニマリスト)」ですが、
皆さんにも興味関心がおありのテーマかと思います。
今回は、隠者の「住まい」と「生活スタイル」に
学びながら、「精神的に豊かな生活とは何か?」
について考えていこうと、
この本を取り上げさせて頂きました。
起きて半畳寝て一畳(天下取っても二合半)
著者は、以下の人物の「生活スタイル」と「人生観」を
それぞれの芸術(詩・歌・句)を通じて、
淡々と描写されています。
中国からは、
①陶淵明
②白楽天
日本からは、
①兼明親王
②慶滋保胤
③西行
④鴨長明
⑤芭蕉
⑥良寛
の合計8名を取り上げておられます。
このすべての人物に共通するのは、
「隠者(隠遁生活者)」です。
世俗の煩わしさから離脱し、自然のままに
自分の本心に忠実に生きる人間です。
ここでは、西行法師と松尾芭蕉について
触れていきます。
ちなみに、前にも当ブログにてご紹介させて
頂きました以下の人物に関する記事は、
それぞれのサイト記事をご参照下されば幸いです。
①鴨長明
②良寛
さて、西行法師と松尾芭蕉に共通するものといえば、
「旅芸人」ですね。
松尾芭蕉は、西行法師を敬慕していたと言われています。
ともに「元武士」です。
松尾芭蕉は、生涯に4つの「俳諧紀行文」を残しています。
①「野ざらし紀行」
②「笈の小文」
③「更科紀行」
④「奥の細道」
です。
「野ざらし」とは、「骸骨」のことで
芭蕉は、死ぬ覚悟で旅を続けていたことが
伝わってきます。
「旅そのものが、人生」
芭蕉の「辞世の句」とされているのが、有名な
「旅に病(やん)で夢は枯野をかけめぐる」(笈日記)です。
芭蕉の最期の場所は、大坂でした。
芭蕉の人生観は、次の文章に尽きます。
「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。
舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらへて老を
むかふるものは、日々旅にして旅を栖(すみか)とす。
古人も多く旅に死せるあり。」ですね。
皆さんも学生時代に、一度は耳にされたことがあるのでは
ないでしょうか?
芭蕉の俳諧の特徴は、「侘び・寂び」をテーマにしながらも
どこかユーモア感覚にあふれる「軽妙洒脱」なところにある
ようです。
悩み多き憂いに満ちた世を、いかに軽やかに生き抜くことが
出来たのか?
どうやら、こうした「生活感覚(人生観)」にヒントがあるようです。
この本のメインテーマは、
「隠者たちはどんな庵に住んでいたのか」です。
美しい挿絵とともに、詳しく描写されています。
現代人にとっては、いずれも「贅沢な住居」に感じられます。
一番質素に見えそうな庵でさえ、「茅葺き」なんですから・・・
昔は、「茅」や「葦」が住居の素材になっていたようですが、
現在では、「田舎の古民家」でもないと
なかなか手に入れられないようです。
冒頭でご紹介させて頂いた坂口恭平さんの「モバイルハウス」でも
実際に「公道」を走行して移動させるのは、困難なそうです。
最近、意欲的な若者の間では「小屋暮らし」も流行っているようですが、
土地自体を取得する手続きや税金の面など何かと面倒なようです。
昔は、どうだったのでしょうか?
旅をしながら移動し、仮設小屋を簡単に持ち運べる
スタイルだったのでしょうか?
鴨長明の「方丈」などは、そうだったようです。
また、明治以前の税金制度などは
どのような仕組みだったのでしょうか?
現代ミニマム生活に活かす隠者の知恵
著者が、「あとがき」で簡潔にまとめて下さっていますが
以下の「共通スタイル」があるようですね。
①自然を愛でる暮らし。
②人とのかかわりも大切にする。
③質素な暮らしでも「小欲知足」出来ること。
④独り身生活を慎みながら「積善」を行う。
簡潔な言葉でまとめると、
「天を楽しみ命(めい)を知る、ゆえに憂えず」(易経)
ということだそうです。
なかなか「悠々自適・晴耕雨読」の暮らしも難しそうですね。
現代社会で生活していると、かなり「欲深い生き方」が
身に染みついていますから・・・
いずれにせよ、
「孤独を愛し、時に人との交流も楽しむ!!」くらいの
性格でないと「理想の生活」もハードルが高そうですね。
それでも、誰しも憧れる「隠居(隠遁)生活」です。
皆さんも、洗練された趣味を友にして優雅に遊ぶことが出来れば
人生苦も少しは楽になるのではないでしょうか?
現代社会で、「隠者生活」をするには、
人生に対する確固たる自信がなければなりません。
かなり困難な世の中ではありますが、
努力と工夫次第で出来ないことでもありません。
現代の「隠者」を目指される方のご参考になるかどうかは、
心許ないですが、今回ヒントとなりそうな本をご紹介させて
頂きました。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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