「つながりすぎた世界」による「思考感染」にいかに立ち向かうか!!インターネット時代の「生活防衛術」!?
21世紀に入り、「社会時間」が急激に速くなっていると
思いませんか?
異常に「つながりすぎた世界」
IT革命による「社会革命」は、止まる所を知りません。
インターネットが広げる「思考感染」にどう立ち向かうか?
網目のように広がる「ネット社会」で、どのように生活を
防衛していくのか?
もはや、誰もITによる技術革新とは「無縁」ではいられません。
今回は、「過剰結合」と「思考感染」をキーワードとして、
この本をご紹介していきます。
「つながりすぎた世界~インターネットが広げる「思考感染」にどう立ち向かうか~」(ウィリアム・H・ダビドウ著、酒井泰介訳、ダイヤモンド社、2012年)
著者は、米国のIT業界にて経営者・ベンチャーキャピタリストとして
30年以上もの経験を積んできました。
また、「投資コンサルタント」としての顔も持っています。
IT業界にいる方は、基本的に「楽観的」な考えを好むタイプが多いようです。
そんな中で、業界の事情を知り尽くした著者の「警告論」は貴重な存在です。
ITは、使い方によって「薬にも毒にも」なります。
昨日のブログでもお伝えしましたように「メディアリテラシー」の能力が
これからはますます重要となってきます。
世界は、あまりにも「つながりすぎた」ということは同時に「リスク分散」が
しにくくなった社会ということでもあります。
インターネットは、私たちの世界を豊かにし、今までの「リアル社会」では
救われなかった人の「生活」も支えてきたので「悪い点」ばかり強調するのも
バランスを失した考えです。
反面、一瞬にして「ニセ情報」が飛び交い、社会を混乱させる凶器にもなります。
インターネット情報は、「玉石混淆」です。
メディアリテラシー能力を向上させていくことは、21世紀を生きる「生活防衛術」
でもあります。
今回は、「過剰結合(つながりすぎ)」がもたらす「思考感染」に
いかに立ち向かっていくべきか?をテーマに考えていきたいと思います。
「つながりすぎた世界」は、バラ色の未来を約束するか?
著者は、「過剰結合」と「思考感染」をキーワードにして、現代社会の問題点を
様々な事例を挙げながら語っていきます。
まずは、「IT革命」以前以後における世界史の流れについてざっと説明します。
いうまでもなく、1990年代以降に一般に「IT技術」が普及していく以前から
「技術革新」が人々の「世界観」を大きく揺さぶってきたのは周知のことです。
特に、19世紀中頃から始まる「産業革命」により蒸気機関が発明され、
「家内制手工業」から「工場制大規模工業」へと発展していったこと・・・
20世紀から整備されていった「鉄道輸送網」は、本格的な「流通革命」を
促進させました。
これらの「社会革命」が相まって、それまでの「職住接近」の暮らしから
今に至る「職住分離」の暮らしへと「生活の大激変」をもたらしました。
ここから、私たちの「生活リズム」が狂い始め、「新たな社会時間」の
導入とともに「生活感」を根底から変えていきました。
こうしたプロセスを経て、「規模の経済性(スケールメリット)」を
求めて「経済生活」は身の丈にあったものから離れていったようです。
「生活コスト」にかかる「貨幣依存度」も高まっていく一方でした。
そして、二度の世界大戦を経て20世紀半ば頃から「新たな世界秩序」が
さらなる「グローバル化」を飛躍させていきました。
この間、経済成長に比例するかのように「エネルギー消費度」も増え続け
1990年代以降の「IT革命」により、もはや収拾がつかないところまで
来ていることは皆さんもご存知だと思います。
「大きすぎてつぶせない!!」という言葉も、昨今「金融危機」などが
生じるたびに叫ばれますが、このように「世界がつながりすぎる」と
後戻りして調整することも困難になります。
それを、著者は「過剰結合」というキーワードで説明しています。
「つながりすぎて、世界は制御不能になり収拾困難な状態」という意味で
使用されています。
過剰な情報洪水による「思考感染」にいかに立ち向かうか?
本書におけるもう一つのテーマは、「思考感染」です。
このように、「IT革命」による「過剰結合」から
私たちの生活世界も常に不安定にさらされることになります。
インターネット社会は、原則「匿名社会」なので「無責任な情報」も
洪水のように日々流され続けます。
もちろん、「匿名」だから全く信用できないという訳ではないのですが、
往々にして「過激な言論情報」が飛び交うようです。
最近の自然災害などで、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が
被災民の救助活動に役立つなど長所もあります。
一方、悪質なデマや風評が驚異的なスピードで拡散するなど短所もあります。
このように出所や真偽不明な情報が世界を駆けめぐると大変な事態を巻き起こします。
著者も、本書の中で様々な事例を取り上げています。
「個人情報の流出」
「アイスランドの金融機関破綻」
「バーニー(バーナード)・マドフの大規模ねずみ講詐欺事件」などなど・・・
このように「思考感染」による巨大な被害が跡を絶ちません。
また、前にも当ブログで語りましたが「仕事そのもの」が大幅に減少して
世界に大規模な「生活不安」が広まっていることも懸念されます。
現代経済は、公害などのいわゆる「外部不経済性」が経済成長の定義に
組み込まれていないことから「膨大な負のコスト」がかかります。
つまり、現代資本主義社会には「ムダ・ムリ・ムラ」が多すぎるということです。
21世紀に生きる私たちは、このような困難な課題を一つ一つ時間をかけてでも
解決していく義務があります。
いずれにしても、著者も語っているように「過剰結合」を少しずつ紐解いて
「危険性を回避」していく仕組みを作っていく必要があるようです。
私たちも各自出来る範囲で「メディアリテラシー能力」を高めていく努力を
するとともに、今までの「生活コスト」の改善を模索していく時期に来ているようです。
なお、本文中でご紹介した「バーナード・マドフ事件」について
「バーナード・マドフ事件~アメリカ巨大金融詐欺の全容~」
(アダム・レボー著、副島隆彦監訳・解説、古村治彦訳、成甲書房、2010年)
さらに、「経済成長」について考えたい方へ
「経済成長って、本当に必要なの?」
(ジョン・デ・グラーフ&ディヴィッド・K・バトカー他共著、高橋由紀子訳、
早川書房、2013年)
をご紹介しておきます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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