TPP妥結によりデジタル著作権はどうなるの?
TPP(環太平洋経済連携協定)が、概ね妥結に至ったとのことです。
日本のメディアでは、なぜか「知的財産分野」に関する報道が
少なかったように思います。
「自動車や農産物」に関する話題が、
あたかも主要分野であるかのような感じがしました。
さて、今回は「インターネットビジネス」をやっておられる方。
一般のクリエイターの方。
にも大きな影響があるといわれる「デジタル著作権」について
知識を習得したい。
昨今の「著作権の考え方」を知りたい。
そんな方にお薦めの本を取り上げます。
「デジタル時代の著作権」 (野口祐子著、ちくま新書、2010年)
著者の野口祐子さんは、弁護士であり、
主に「デジタル著作権」に取り組んでこられました。
私も、「インターネットビジネス」に関わっている以上は「著作権」に充分配慮して
記事を書き進めなければなりません。
同じ環境で仕事をされている方も多いと思われます。
そもそも、日本の著作権と米国の著作権では大きく構造が違うとのこと。
特に「フェア・ユース規定」(一般例外規定)
つまり、「原則オーケー、例外アウト。」ということです。
これを「ネガティブリスト」といいます。
日本の場合は、「原則アウト、例外オーケー。」(有名なのは「私的利用は許諾不要」)
これは、「ポジティブリスト」といいます。
また、アナログ対象の著作権とデジタル対象の著作権でも大きく違うようです。
アナログ上は問題なくとも、インターネット上になると厳しい運用が課せられます。
私もこの本で学んだのですが、つい最近までインターネットの「検索エンジン」も
「著作権違反」の扱いだったようです。
そこで、先だっての一連の安保関連法案でもついぞ議論されなかった問題。
この日米逆転の見解の相違をどのようにして乗り越えていくのか?
このあたりが今後、政府も厳しい対応を迫られるようです。
「インターネットビジネス」をされておられる方ならどうしても理解しておく
必要があります。
典型的な国境を越えた「ビジネス」
もちろん、普段は「インターネット」といえども日本国内だけに閉じた構造の
中で「ビジネス」をする感覚なのであまり国外のことは想定しませんよね。
しかし、グーグル規約などを読むと「デジタルミレニアム著作権法」というのが
出てきます。
どうやら、今回のTPP(環太平洋経済連携協定)でもこれとの関係が
影響してくるようなのです。
そこで、今後は国外の関連法規のおおまかな考えや仕組みくらいは
知っておく必要があります。
この本では、具体的なTPP(環太平洋経済連携協定)関連の話題は記載されていません。
しかし、今後の議論の展開の仕方や心構えなどが詳しく解説されています。
文化が阻害されるおそれも!?
福井健策弁護士(「18歳の著作権入門」、ちくまプリマー新書、2015年も
分かりやすくてお薦めです。)も次のようにツイッターで憂慮されています。
このように米国の経済戦略に押し切られたような感じです。
文化(創作意欲など)の停滞。
経済活動の停滞。など・・・
そもそも国際協定は「相互主義が原則」のはず。
今回のTPP(環太平洋経済連携協定)は最初から内容や交渉過程が「不透明・秘密主義」
のようで、政府も全容を把握するのに手間取っているようです。
「交渉してみないと分からない!!」
いずれにせよ、私たちの生活に直結してくるだけに今後とも目が離せません。
未来の著作権を我々の手にするには?
それでは、どうすればよいのか?
米国にとっても経済は死活問題なのは分かります。
しかし、私たち日本人にとっても死活問題なのは同じです。
著者や福井弁護士も主張されるように、
「いかにして創作意欲(特に二次創作)を失わないようにするのか?」
このあたりの知恵をみんなで出していかなければなりません。
確かに海外での「海賊版」の横行には「著作者」なら頭を痛める問題です。
しかし、現在は「著作者」のみ保護されていく「著作権強化」だけに偏った法制
では不公平だという認識も広まってきています。
「著作者」だけでなく、
「著作隣接権者」
「一般利用者(消費者)」
「メディアなどの中間媒体(介在)者」
すべてにとって、メリットのある「著作権」に育っていく必要がありますね。
そのためには、もちろん私たちも「ネチケット」を守っていかなくてはなりません。
この分野は、権利関係が近年ますます複雑になってきています。
そんな環境下でもみんなが安心して発信していけるような条件にしたいものです。
皆さんも「著作権」には気をつけておられると思います。
しかし、それでも不安になると思うのです。
身近なところでは、
たとえ「公式サイト」であったとしても許可なくJASRAC管理楽曲などの
「ユーチューブ」動画のアップは著作権違反など。
(そのブログが、グーグルアドセンスなどの広告収入で運営する場合
=ライセンス料を払う必要が出てくる可能性もある。)
「画像使用」にしても、著作権フリーやクリエイティブ・コモンズ・ライセンスの
あるものでも条件をきちんと守る必要がある。など・・・
を、ご存知ない方も多いかもしれません。
私も日々「著作権」の勉強中です。
そんな疑問や不安がふと湧き出てきた時には、この本や福井弁護士の本などを
ご利用下さい。
難しい法律でも、「分かりやすく」解説して下さっています。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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