菅付雅信さんの「物欲なき世界」経済の時代の終焉!?定常型社会に向けたライフスタイルを考えよう!!

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「物欲なき世界」

編集者の菅付雅信さんが、

「欲しいモノがない世界の時代精神」を探して、

国内外の取材調査や文献研究を交えて考察された

「未来経済論」です。

先進国資本主義経済社会が、

行き詰まりを見せ始めています。

このような状況の下、「定常型社会」へと

移行しつつあるとの見方もある中で、

20世紀的な経済「成長」思想へのこだわりも

根強いものがあります。

今回は、この本をご紹介します。

「物欲なき世界」(菅付雅信著、平凡社、2015年)

菅付雅信さんは、株式会社グーテンベルクオーケストラ代表取締役にして、

編集者として活躍されている方であります。

多摩美術大学非常勤講師として「コミュニケーションデザイン論」を

担当されるなど、若者との接触も積極的になされているようです。

著書には、本書の問題意識とも共通する

『中身化する社会』(星海社新書、2013年)などがあります。

さて、そんな若者との頻繁な交流もあるとされる著者が、

若者のライフスタイルを観察していて気付いた点が、

「物欲なき世界」でありました。

ここから、今後の経済社会における動向が、

「定常型経済社会」にあるのではないかと推測されたところから、

現代先進国資本主義経済における「消費減退」が、一時的な現象なのか、

それとも、長期的な現象なのかを探究する旅が始まりました。

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本書の内容は、以下のテーマで構成されています。

<まえがき>「欲しいものがない世界の時代精神を探して」

①『「生き方」が最後の商品となった』

②「ふたつの超大国の物欲の行方」

③「モノとの新しい関係」

④「共有を前提とした社会の到来」

⑤「幸福はお金で買えるか?」

⑥「資本主義の先にある幸福へ」

<あとがき>「経済の問題が終わった後に」

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ところで、本書でも取材調査の結果、考察されている「定常型経済社会論」ですが、

今現在の経済社会をリードする層からは、

きわめて否定的な扱いを受ける反面、

若者層からは、明るく望ましい方向性をもたらすのではないかとも

期待されています。

「経済成長=善=経済促進力」だとする一般的なイメージが、

現在まで根強くありますが、ひょっとしたら、

それは、20世紀後半の「一時的幻影」だったのかもしれません。

人類史を大きく俯瞰してみると、むしろ「成長期」よりも、

「定常型社会」の方が、主流だったのではないかとの見方も

提示されています。

そうした中で、ようやく先進国経済社会は、成長期や爛熟期(バブルなど)を

経て、「成熟期」で落ち着いているだけなのかもしれません。

確かに、現状は、デフレ期でもあり、モノあまり現象も続くなど、

経済循環も非常に緩やかで、長期的な経済成長の方向にはありません。

とはいえ、これまで、「失われた20年」など、マイナス側面ばかりが

語られてきましたが、情報テクノロジーの進展などから、

20世紀型「所有」経済から新世紀型「共有」経済へと洗練されるなど、

地道な「経済革命」も水面下では静かに浸透してきました。

若者を始めとする雇用環境も年々歳々厳しくなる中、

若者のライフスタイルにも激変が生じています。

「嫌」消費生活スタイルとも目されているようです。

昨日の「最小限生活(ミニマリズム)」のテーマでは、「個人生活論」に

スポットライトが当てられていましたが、本書では、より広い視点から

「経済社会論」について触れられています。

本書は、こうした「定常型経済社会」を明るい視点で、

国内外の取材や文献調査などを経て得た知見など紹介しながら、

今後の「未来経済」に向けた考察をされています。

「経済」を牽引する当事者としての「生産者」、「消費者」といった

安易な二分論に偏ることなく、明日の経済社会を

皆さんとともに積極的に考えていこうと、

この本を取り上げさせて頂きました。

「物欲なき世界」とはいうものの・・・

さて、本書では、先進国資本主義経済社会を中心に、

中国のような新興経済国の動向にも取材調査が及んでいます。

その結果、見えてきたものとは??

中国には、「爆買い現象」にも現れている

「所得格差」を推進させるような層がいる一方で、

「超」成長期を遙か向こうに見据えた「新たなライフスタイル」を

模索する人々もいるようです。

本書の独自性は、そんな中国の「新しい層」の考え方なども

積極的に紹介されているところにあります。

現在、マスメディアなどでは、こうした「爆買い現象」など

表層的動向に偏った取材傾向にある中で、その先にある経済社会を

見据えた取材内容(本書66~84頁)は必読であります。

(もっとも、一つのサンプルですが・・・)

ところで、先進国資本主義経済社会における動向は、

長期的な「停滞」傾向にあるようです。

そうした経済情勢の中、特に若者層の間では、「嫌」消費文化といった

ライフスタイルに注目が集まっています。

「ダウンシフター」なる新たな消費者層であります。

つまり、「降りてゆく人々」です。

とはいえ、その「ライフスタイル」を観察していると、

「物質的貧しさ」を感じさせない洗練された「精神的豊かさ」に

思われてくるので、不思議です。

1990~2010年代にわたり、不安定な長期的不況の過程で、

若者たちの間では「失われた20年」などと、雇用環境の激変などによる

生活環境の悪化から、先行き不透明な「悲観論」がたびたび言及されてきましたが、

それでも、昔に比べると、かなり恵まれた生活環境にあります。

この「失われた20年」は、同時並行的に進展してきた「情報革命」の時代でも

ありました。

こうした経済動向の過程で、物理的な「モノ」を主体とする生産的消費経済には、

陰りも見え始める中、「モノ」を「所有から共有」していこうとする

革新的ライフスタイルが実体化してきました。

「モノ(物体)からコト(情報)へ」

これは、物理学の分野では、すでに20世紀から考えられてきた「世界観」ですが、

ついに、現実社会において「実体化」されてきたのが、昨今であります。

「情報革命」は、「モノからコトへ」の流れとも親和性があり、

実体経済における様々な生産手段の「場」も大きく変えてきました。

「モノ」を生産しても、過剰に在庫が積み上がる中、デフレは促進していく。

結果として、賃下げ圧力ともなり、雇用も縮小するなど、

経済規模もますます痩せ細っていきます。

そんな悪循環の中で、「生産者」に有利とされる金融政策を主体とした

実体経済の「底上げ」が行われている最中にあるのが、現代日本経済です。

とはいうものの、若者を始めとする「消費者」層は、

すでに「失われた20年」の過程で、あらたなライフスタイルに喜びを

見出したようです。

「生産者」の現場が、このような悪環境の流れにある中、

「消費者=労働者」でもある若者層は、

無言の抵抗手段を「情報革命」の流れの中に発見したようです。

大半の大手「生産者」は、20世紀的な「大量売上至上主義」の下、

軒並み業績を悪化させていく一方で、小規模「生産者」は、

独自の視点で、こうした若者層にも支持されるようなライフスタイルを

提案してきました。

そのような地道な努力で、若者層に支持されてきた小規模「生産者」は、

今後とも成長していくことでしょう。

本書では、そうしたあらたな「生産者」の取り組みなどが、

詳細に紹介されています。

「すでに時代は、<スモール・ニッチな世界>を中心に回転し始めている!!」

その動向が、本書を読み進められる過程で、感じ取られることでしょう。

ところで、「情報革命」のおかげで、様々な小規模「生産者」に有利な

経済環境が整えられてきました。

多種多様な「プラットフォーム(生産発表の場など)」が用意されており、

資金力や人脈関係に弱点を抱えている方でも、安定的な「信用力」さえ

得られることが叶えば、自由自在に自分のライフスタイルに合った生活環境を

整えることも出来るようになりました。

「自前で立ち上げ、直接的なお客様の反応を見ながら、

皆とともに喜怒哀楽を分かち合う共有経済」の幕開けであります。

その他、3Dプリンタなど、日本では、まだ試験期間中にあるようで、

一般社会には、幅広く浸透していないテクノロジーもありますが、

そのうち静かに広まり、主流経済を良い意味で脅かす段階にまで

進展していくことも予想されています。

こうした「自前で創造するDIY=ドゥ・イット・ユアセルフ

(あるいは、本書によるCIY=クリエイト・イット・ユアセルフ)経済」は、

職住接近のライフスタイルを可能にします。

とともに、他人のセールスに圧倒されるような現代経済の根幹をも

抜本的に変革させていくことになります。

そうした近未来の経済動向を見据えて、「物欲なき世界」が若者層の間で

静かに浸透していっているのかもしれません。

今後どのような経済社会に進展していくのかは、わかりませんが、

少なくとも現代経済が主流に据えてきた「賃労働(貨幣主導)型経済」は、

早晩、終焉を迎えることになるのでしょう。

それに連動して、「貨幣」の世界にも、あらたな動きが見られるようです。

「貨幣論」については、前にもご紹介させて頂き、本書でも紹介されている

西部忠氏の『貨幣という謎』と併読されながら、皆さんにも「未来貨幣」の

あり方や付き合い方について考察して頂くと幸いです。

参考までに、本書での「貨幣論」は、170~192頁を中心に

展開されていることをご紹介しておきます。

このように、若者層を中心に、「物欲なき世界」を楽しみながら過ごす

あらたなライフスタイルが次第に定着しつつあるようです。

管理人も、今後このような「ライフスタイル論」を様々な角度から

ご紹介しながら、検証考察していく予定でいますので、

楽しみにお待ち頂ければ幸いであります。

「幸せの形」って何だろう??

さて、このように本書では、今後進展するであろうライフスタイル論や、

ライフハック(生活に役立つテクノロジーなどの動向)から、

未来経済における社会像などが紹介考察されています。

著者は、この動きを「超資本主義から超民主主義」の流れとして

紹介されています。

「大量生産消費分散(業)型経済から多品種少量自前調達型経済へ」

言い換えることも出来ましょう。

いよいよ、自らの人生を自らの手で完全制御出来る経済社会にまで

至りつつあるようです。

そこでは、「幸せの形」つまり、「文化」そのものも変化します。

「幸せの<形>」と書きましたが、「幸せ」はもちろん「物象化不可能」です。

多分に、「心理的要素」を含むのが、「幸せ」です。

「幸せとは、感じ方(受け取り方)」次第で、いかようにも変化するものです。

そこで、本書との絡みでも、国内外の文化動向をいつも考察させて頂く際に

お世話になっている番組をついでにご紹介させて頂きます。

管理人は、普段テレビを見る時間は、ほとんどありませんが、

その中でも録画研究させて頂いている番組に、

テレビ東京系の『Youは何しに日本へ?』があります。

この番組でもたびたび紹介されている外国人を民家に宿泊させるという

カウチサーフィンなるシステムがあるようですが、

本書では、「Airbnb(エアビーアンドビー)」が紹介されています。

また、ヒッチハイクなどで活用されている「Uber(ウーバー)」なる

アプリもあるそうです。

このように昨今は、「シェアビジネス」に注目が集まっています。

経済の「完全無料化」は、かなり難しく不可能な道のりでしょうが、

生活コストを極限にまで切り詰めたライフスタイルは、

すでに目前にまで迫っているようです。

上記番組に話題を戻させて頂きますが、

この番組を見ると、国によって文化が多種多様であることを

知ることが出来ます。

特に、バックパッカー旅行者の知恵などには、驚くべき知見があります。

そうした多種多様な外国人の方々を見ていると、勉強になります。

中でも、「幸せの形」については、考えさせられます。

日本社会では、当然視されているようなものの見方でさえ、

世界的視野をもって眺めれば、「偏見」に過ぎず、

「微小」に思われてくるから不思議です。

皆さんそれぞれ、「個性」をお持ちです。

「自分なりのポリシー」をしっかりともって生きておられるところに

大変な感銘を受けます。

こうして眺めてみますと、世界は「豊かさ」で満ち溢れています。

レンズを変えるだけで、ものの見方も大きく変わっていくのですから、

私たちも、狭い世界で人生を悲観的に捉える必要もありません。

「資本主義の終焉論」が、ある種のブームになり、「悲観論」が

世の中を暗くしているように見えますが、

このように日頃から「体験」学習を積み重ねていくだけで「楽観論」に

転じていくのですから、やはり本を読みましょう。

「読書」は、「マスメディア」や「ネットに散在する玉石混淆情報」とは違い、

著者が、全身全霊で書き上げた作品であります。

「いいかげんな質では、売れない(世に受け容れられない)」点も

一方的な視点で垂れ流すメディアとの大きな違いであります。

また、読者が「積極的な姿勢」で読むので、後にも残りますし、

何よりも「目利きの力=良質な疑う力」も身に付きます。

「モノからコトへ」・・・

それは、「一方的な押しつけ文化」から

「双方向型良質コミュニケーション文化」へと進化する流れでもあります。

その過程を皆さんとともに共有することで、

「幸せの形」も「目に見えるモノ」から「目に見えないコト(思い出)」へと

変容していくことになります。

一方で、創作活動により、「目に見えないコト」から「目に見えるモノ」へと

転換させることも出来ます。

「双方向性が、コト経済の本質」です。

現代資本主義経済社会の行き詰まりは、「物欲ある」人間にとっては、

不安になりましょうが、「物欲なき」人間にとっては、

自らの人生の「時々」を振り返る「時間」を与えてくれます。

昨日も触れましたが、「ライフスタイル」は、各人各様まったく「自由」です。

とはいえ、今までの経済社会のあり方では、余裕を持って人生を振り返る時間も

剥奪されてきました。

今後の課題は、そうした「未来経済」に移行するまでの

「移行期的混乱」(平川克美氏)をどのようにやり過ごすかにありますが、

このあたりは、本書でもあまり触れられていなかった論点でしたので、

物足りない感じもしたところです。

「脱貨幣論=脱物質化社会論」とも併せて、もう少し突っ込んで

この「移行期的混乱」の解決法など提案して頂くと有り難かったのですが・・・

それは、著者の次回作に期待することにいたしましょう。

このように「定常型経済社会」だからといって、

何も悲観的になり過ぎることもないのかもしれません。

経済の転換が「ライフスタイル」の変化を促すのですから、

それに連動して、私たちもゆっくりと適応していけばよいだけなのですから。

最後に、本書243頁の「日本の逆説的な優位性」という論考でも

触れられていましたが、「日本ガラパゴス論」を悲観的に捉える

必要などもないでしょう。

世界に先駆けて、この「失われた20年」を私たち日本人は、

何とかやり過ごすことも出来たのですから、今後は「内向き」から

「外向き」発信にチャンネルを切り換えるだけでよいのです。

「私たちには、必ず出来ます!!」

「どうか、皆さんも<希望>を持って下さい!!」

「<絶望>感覚も、時間が解決してくれます!!」

「今までも人類はそうやって少しずつ難関を乗り越えてきたのですから・・・」

皆さんも、本書を参考にされながら、今後の生活設計のヒントとして

ご活用下さることをお薦めさせて頂くとともに、

『「幸せの形」って何だろう??』と今一度問い直されることを

お薦めさせて頂きます。

なお、本書でも紹介されている平川克美氏の著書として、

『小商いのすすめ~「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ~』

(ミシマ社、2012年)

『「消費」をやめる~銭湯経済のすすめ~』

(同上、2014年)

をご紹介しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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