廣池千九郎先生の『「三方よし」の人間学』を読み、「道徳と経済の融合の道」を歩んでいきましょう!!

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「三方よし!!」

「売り手よし、買い手よし、世間よし!!」

とする近江商人の合い言葉です。

廣池千九郎先生の『「三方よし」の人間学』

現代社会は、「利潤の追求一点張り」で

人間の欲だけを極度に追求し、人間の尊厳が

軽視される「経済社会構造」になってしまったようです。

もっとも、現代でも「道徳と経済の一致」を目指す

良心的な経営者の方が大半だと思います。

「不景気の回復は、人間精神の回復から始めよう!!」

今回は、この本をご紹介しながら考えていきましょう。

『「三方よし」の人間学~廣池千九郎の教え105選~』   (廣池千九郎著、廣池幹堂編、PHP、2014年第1版第3刷)

廣池千九郎先生(以下、著者)は、麗澤大学を擁する学校法人廣池学園の創設者です。

青年期より、教育活動に従事されるとともに

故郷の大分県中津市の「郷土史」の編纂作業や苦学の末「法学博士」を

取得されます。

「道徳教育」の「科学化」にも積極的に取り組み、

「恣意的な道徳教育の改善運動」

にも精力的に励まれました。

現在は、公益財団法人モラロジー研究所にその精神が引き継がれています。

道徳・倫理・宗教といった人間教育は、現在の学校教育(社会教育)からは

年々排除されていっているようです。

政府や保守系政治家・団体などが推進してきた「道徳教育」も

一般国民にはイマイチ評判もよくないようです。

従来、「道徳・倫理・宗教教育」は主観的な側面もあり

「模範的な人物」を取り上げながらも、

その時々の社会にとって都合の良い「恣意的な教育」が

なされていったところにも原因があるようです。

今回、ご紹介する著者は「恣意的な道徳教育」に「科学的アプローチ」を

取り入れた先駆者として、生涯を「人間教育」に捧げられました。

現在、「経済と道徳の融合化」については

心ある人々の間で関心の持たれている分野でもあります。

バブル経済崩壊から「失われた20年」が経つ2015年末・・・

来年以降の経済情勢はどうなっていくのか?

皆さんも、正直戦々恐々の日々を過ごしておられるかもしれません。

思えば、わが国での最高金額のお札が「聖徳太子」から「福沢諭吉」に

交替した時点から、「経済モラルの崩壊」が始まっていたのではないか?

と指摘される方もおられます。

「お札の顔は、人の内面を写す鏡」だとも、昔の人は語っていたそうです。

現代経済は、「徹底した利潤追求」の結果、ついに「人間のいのち」まで

金銭化させようとしているかのようです。

このような不安な時代だからこそ、江戸時代の優れた経済人の教えを

学び直そうという動きも出てきているようです。

「西洋式合理化経営」

そのすべてが、間違っているとまでは申しません。

しかし、日本の風土や人間の尊厳を無視するような「経営手法」なら

皆が不幸になる一方ですよね。

今回は、このような時代だからこそ「本来の商売の極意とは何か?」

などを学ぼうと思い、この本を取り上げさせて頂きました。

「売り手よし、買い手よし、世間よし!!」

この言葉は、近江商人によって各地方へと伝わっていった

「経済思想」と言われています。

近江地方(現:滋賀県)は、古代から豊かな琵琶湖水系に守られながら

「水運業」も盛んだったようです。

京阪地方から北陸・東海地方へと抜けていく街道も発達していたことから

商売も盛んな土地柄でした。

近世に織田信長による「楽市楽座」など「積極的な自由市場」も開けました。

江戸時代には、宿場町も拡大され、この地から一人の近江聖人が生まれました。

中江藤樹先生その人です。

この方の道徳思想と近江商人の独特な「三方よし経済学」が絶妙な割合で

混合されて、やがて「商人の町京都や大阪」でも花開きます。

有名な石田梅岩の「石門心学」です。

彼自身「商人学者」でもあり、「経済と道徳の融合」

京都や大阪の町人教育で実践されていきました。

日本のマックス・ヴェーバーにも比肩される石田梅岩の「石門心学」。

ドイツのマックス・ヴェーバーによる

「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」に先駆けて

近世から近代にかけての京阪地方で花開いたことは驚異的なことです。

江戸時代に、日本人自らの「近代資本主義思想」が芽生えていたのですから・・・

ところで、近年この「三方よし(三方一両得)」は、

なぜか「緊縮経済政策」とあいまって

「三方一両損」にいつしか切り替わったようなのです。

世間一般的にも、「三方一両損」の方が耳なじみがあるでしょう。

このように「プラス(得)からマイナス(損)への切り換え」は、

国民の心理に重大な影響を与えてしまったようです。

一方で、近江商人の「三方一両思想」や「石門心学」の教えは

道徳を経済の基礎に据えています。

この教えから現代日本の政治経済状況を考察するならば、

ことに「計量(数理)経済学的思考」は、物質的な経済破壊だけでなく、

国民経済に与える精神作用にも甚大な被害を及ぼしていることから、

決して見過ごすことの出来ない「有害思考」だということが、

皆さんにもご理解して頂けるものと思われます

「お金もさることながら、心まで完全に冷え切ってしまえば経済回復も

あり得ません!!」し、

百歩譲っても「表面的な経済回復にしかつながらない」でしょう。

そういう意味で、この「失われた20年」から脱却するためには、

金銭的な小手先作業だけでは、どうにもならないと思います。

経済再生は、金銭的賠償だけで取り繕うことが仮に出来たとしても、

「働く意欲や喜び」が失われてしまうことの方が懸念されます。

「手っ取り早く儲ける手法」

「稼ぐ力」・・・

などと連呼されたら、現に「耐乏生活」を強いられている方から

すればやりきれない思いでいっぱいでしょう。

時間はかかるかもしれませんが、心の免疫力をつけ、

強靱な経済再生へとつながる考え方を

是非為政者だけでなく、

多くの方に知って頂きたいと切に願います。

2016年からの精神的回復へ向けて・・・

この本には、他にも優れた生き方のヒントがあります。

読みやすい書体なので、通勤時間や起床後・就寝前の手頃な書籍として

お薦めさせて頂きました。

現在、世の中では政治的イデオロギーを問わず、「弱肉強食論」が

復活しているような嫌な感じがします。

世の識者(オピニオンリーダー)と呼ばれる方々には、

まったく愛情の心が見受けられないようです。

「真の知性回復は、豊かな感性を磨くことから」と、

何度も語ってきました。

「法律よりも道徳、道徳よりも倫理が大切」

外面的な規範(規制)だけに頼るのは、依頼心を増長させて人を弱くします。

内面的な成長を伴う倫理(ある人は、<内在神>とたとえる方もいます)が、

今ほど重要になってきた時代もないと思われます。

もちろん、管理人も未熟者ですが

少しでも世を温かくし、微力ながら尽くさせて頂く所存です。

皆さんも来年に向けて各自抱負がおありだと思いますが、

是非もう一度年末年始の比較的ゆとりのある?時期に

この本を読みながら「心の大掃除」をしてみてはいかがでしょうか?

「道徳論」になると、どうしても「説教調」になってしまい申し訳ありません。

なお、「道徳と経済」について、

『「道徳」という土なくして「経済」の花は咲かず』

(日下公人著、祥伝社黄金文庫、2006年)

また、「石門心学」につき手軽な入門書として、

「魂の商人石田梅岩が語ったこと~ビジネスの極意と人生の知恵~」

(山岡正義著、サンマーク出版、2014年)

『商売はノウハウよりも「人情力」

~石田梅岩に学ぶ”ちょっとおせっかいな”働き方~』

(清水克衛著、さくらみゆき絵、現代書林、2010年)

をご紹介しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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One Response to “廣池千九郎先生の『「三方よし」の人間学』を読み、「道徳と経済の融合の道」を歩んでいきましょう!!”

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