ラリー・D・ローゼン氏の「毒になるテクノロジー」ハイテク化社会における異常心理から身を守る術を学ぼう!!

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「毒になるテクノロジー」

アメリカの「テクノロジー心理学」の

第一人者であるラリー・D・ローゼン氏らが、

ハイテク社会における人間心理を追跡調査して

得た知見を解説されています。

かつて、「テクノフォビア(IT恐怖症)」という

キーワードが話題になりましたが、それも今は昔・・・

とはいえ、形を変えた「テクノフォビア」は

復活しているようです。

適切な付き合い方とは?

今回は、この本をご紹介します。

「毒になるテクノロジー」(ラリー・D・ローゼン/ナンシー・A・チーバー/L・マーク・キャリアー共著、児島修訳、東洋経済新報社、2012年)

ラリー・D・ローゼン氏(以下、著者)は、

アメリカのカリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校の

心理学教授で、「テクノロジーの心理学」の第一人者として

活躍されています。

アメリカでは、『ニューヨーク・タイムズ』などの

各種メディアでも注目されている心理学者とのことです。

さて、本書は、『iDisorder: Understanding Our Obsession

with Technology and Overcoming Its Hold on Us』の全訳であります。

本書の最重要キーワードも、

『iDisorder(「i」と障害を意味する「disorder」をつなげた造語)』

(本書14頁)です。

本書では、著者と2人の共同研究者による協働作業にて、

テクノロジーが、人間心理に及ぼす影響力について、

様々な角度から「テクノロジーの心理学」を発表するとともに、

現代特有のテクノ文化から容易に陥りやすいとされる

「異常心理」を分析考察、その脱出対処策を解説されています。

さて、今から20数年前には、中高年の方々の間では、

「テクノフォビア(テクノロジー恐怖症)」という言葉が

大流行していたようです。

個人的な話で恐縮ですが、

その言葉を聞いたのは、管理人がちょうど高校生から大学生頃。

1994年以後の「IT革命黎明期」の時期で、

NHKラジオ講座『ビジネス英会話』か何かの教材の題材で

取り上げられていたキーワードでした。

管理人自身は、今も普段は、オンラインを始め「ゲーム」類は

一切しないのですが、機械には苦手意識もあったことから、

社会人の先輩方が、機械に対する恐怖症を抱いておられることに

他人事ではないものを感じていたのです。

そんな管理人が、今は日々IT機器と付き合っていることなど、

その時分には、予想だにしなかったことですが、

来るべきIT時代の中で、

「自分は社会に適応していけるのだろうか?」などと、

相当な恐怖心を抱いていたこともありました。

こうした気分は、

今の「デジタルネイティブ(物心ついた頃からIT機器とともに

過ごしてきた世代のこと)」な若者とは、

なかなか共有しにくい感覚かもしれません。

管理人の場合は、IT機器に関してテキパキとした動作に

追いついていけるかどうかの操作レベルでの心理不安でした。

(ちなみに、今も「(高速)ブラインドタッチ」は出来ません!!)

とはいえ、こうした気分とは別の意味で、

今の若者世代にも「テクノフォビア(テクノロジー恐怖症)」が

静かに押し寄せているようです。

SNSなどを介した、ある種の「承認欲求」から来る心理不安ですが、

その「友達申請圧力」などが、「いじめ」の原因にもなっていると

聞きます。

本書でも、現代特有の心理不安を回避することを目的とする

IT機器との適切な距離の取り方など有益なアドバイスが満載ですが、

結局は、「人付き合い(社会との関与作法)」と「自分の心次第」だと

強調されています。

21世紀現在、否応なくテクノロジーに囲まれて暮らさざるを得ない中で、

誰しも、何かしらテクノロジーとの接し方には悩まされているとも聞きます。

著者らによる、数多くのテクノロジー利用者から得たサンプル資料を基に、

その適切な付き合い方を学ぶことで、そうした心理不安を

少しでも解消して頂くお役に立てるのではないかと思い、

この本を取り上げさせて頂きました。

誰しも「自己アピール」が要求される現代社会と「テクノストレス問題」

まず最初に、著者の最終結論をまとめておきます。

著者自身は、「全面的なテクノロジー悪玉論者ではない!!」ということを

大前提に、「テクノロジーとのバランスの取れた接し方」と、

「テクノロジーが、人間心理に与える影響力」について、

様々な観点から分析考察されています。

その結論を端的に言いますと、先程も語りましたが、

結局は、「人付き合い(社会との関与作法)」と「自分の心次第」だと

いうことに尽きます。

ところで、原書のタイトルは、

『iDisorder(「i」と障害を意味する「disorder」を

つなげた造語)』(本書14頁)です。

この意味するところは、

現代情報化社会において、人間に何らかの「適応障害」が生じているとする

観察結果から得られた「精神病理仮説」であります。

(ちなみに、「適応障害」については、こちらの記事

ご一読下さると幸いです。)

厳密な意味での「精神障害診断基準」には当てはまらないものの、

こうしたテクノロジーやメディアの過剰利用から、様々な精神疾患の

「症状」や「兆候」が多々見受けられるのではないかとの認識から

問題提起されています。

そして、本書では各章にて、様々な「精神病理(類似)状態」から

抜け出すための「具体的な処方箋」が提示されています。

本書を読み進められる際のポイントは、

ご自分に当てはまりそうな「精神病理(類似)状況」を発見された場合には、

「即効的な対処策」のまとめ部分だけを読むのもお薦めです。

それだけでも、心理不安が相当解消され、「症状」や「兆候」が

改善されることでしょう。

そのうえでなお、「精神病理(類似)状況」が「重度」だと心配な方には、

必ず「専門医」へのご相談をお薦めします。

とはいえ、本書「第8章」でも強調されていますように、

「心気症=病気だと誤って思い込む精神疾患」の事例もありますので、

必ず本書を丁寧に読み進められたうえで、ご判断下さいませ。

大抵は、「思い込みによる混乱(心理不安)」ということも考えられます。

「思い込み」は、臨界点を越すと、本当に「病気」に発展してしまうという

危険性も高いですので、決して「(マイナスの)思い込みの力」を

侮ることは出来ません。

その点は、十分にご注意下さいませ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここで、本書の<目次>と<内容>をまとめておきます。

①「第1章 iDisorder:誰もがおかしな行動をとり始めている」

「導入部」として、現代情報化社会における「適応障害」(類似)状況に

対する注意喚起と本書の主題の提示。

②「第2章 SNSという名のナルシシズムなメディア=私、私、私」

SNSに代表されるソーシャル・コミュニケーションの進展とともに

強迫観念のように押し迫る「承認欲求」とその「病理現象」について。

ここでは、「自我心理学」の父ハインツ・コフート(本書40頁)

などの知見を手がかりに、「自己愛病理」について解説されています。

なお、ハインツ・コフートについては、

こちらの記事もご一読下さると幸いです。

③「第3章 24時間365日の強迫観念的なテクノロジー・チェック」

「強迫神経症」や「不安神経症」などの解説。

④「第4章 テクノロジー・ハイ:スマートフォン、SNS、携帯メール中毒」

「中毒(依存)症」の危険性についての解説。

⑤「第5章 浮き沈みのサイバーライフ:仮想世界の共感と躁うつ」

こちらは、「第7章」ともつながるテクノロジーにも利点があることや、

「感情伝染に警戒すること」、

「子どものうつ病の<兆候>を見逃すな」(本書129~131頁)など、

「躁うつ」関連の解説。

特に、「子どものうつ病」は、「子どもの貧困」とも同程度に、

今もっとも注目される深刻なテーマですので、

是非、子どものおられる親御様には、ご一読して頂きたい記事であります。

「早期発見は何よりも大切」ですし、ここから派生して「いじめ」を

発見するきっかけになるとも、しばしば言及されているからでもあります。

⑥「第6章 マルチタスクの甘い罠:テクノロジーが注意力を奪っていく」

現代社会では、「できる仕事人」として何かと「同時並行処理(マルチタスク)」の

できる人間に高い評価が与えられますが、これも「程度の問題」。

特に、「テクノロジー」が絡むと、スピード抑制が働かずに「注意力散漫」など、

自分だけでは処理仕切れない深刻な事態に発展してしまうこともしばしば。

いわゆる「キャパシティーオーバー(能力超過)」にもなりかねません。

この「過重労働(作業)」が、近年、交通事故などの社会問題にまで

発展していると言われているだけに、決して甘く見ることは出来ません。

⑦「第7章 対面と画面越しのあいだ:アイデンティティの実験と

コミュニケーション障害」

ここでは、現代人の多くが経験するとされる人間関係における

「適応障害」の問題が扱われています。

特に、「コミュニケーション障害」とまではいかなくとも、

「コミュニケーションに自信がない!!」と自覚される方にはお薦めです。

「社会不安症(神経症)」などで、極度の「人間(社会)恐怖症」に

なられている方の「助力」となってくれることでしょう。

本書全体の中では、珍しく「テクノロジーの利点」も解説されています。

段階的に、社会に馴染む対処策などが提案されています。

忙しく、他の章にあるような「異常心理」を抱えられていない方には、

この章だけをお読み頂くだけでも、多少「コミュニケーション技法」などに

役立つことでしょう。

⑧「第8章 死の恐怖に取りつかれる:痛みへの過剰反応とサイバー心気症」

こちらは、先程の「心気症」とネット上の「多重人格(虚言癖などの病理)」を

扱った章であります。

「ネチケット(ネット上のエチケット)」を学ぶ点でも、

有益な視点を提供してくれています。

⑨「第9章 1グラムでも痩せたい:変わる身体イメージと摂食障害」

ここでは、「身体醜形恐怖症」や、

主に女性の方に多いと言われる「摂食障害」を解説。

⑩「第10章 妄想、幻覚、対人回避:テクノロジーが”統合失調症(スキゾ)”

のようにふるまわせるのか?」

現代情報化社会に過剰適応し過ぎた「人格障害」とも指摘される

「スキゾ」的気質人間の解析と対処策が解説。

⑪「第11章 ”見たがる”私たち:覗き見趣味とセクスティング」

「人は誰もが見たがる!?」

「普通人」にとっては、にわかには信じ難いテーマですが、

本当は恐い「依存(中毒)症」を扱った解説。

ここでの「覗き見趣味」は、広義の意味で解説されています。

「評価社会」、「情動社会」とも言われる現代社会では、

「見たがる=知りたがる」心理傾向へと知らず知らずに誘導されます。

そうした危険な心理から、あなたを守る対処法が解説されています。

要は、「自尊感情を正常に満たす」ことが出来れば、

こうした「異常心理」から免れるとは言うのですが・・・

⑫「第12章 すべてはあなたの心のなかに」

脳科学による「神経可塑性理論」が、「脳の救世主か!?」

普段からの「意識次第」で、テクノロジーとも適切な付き合い方は

可能であり、出来るだけ「刺激」を避ける「テクノロジー休憩」が

効果的とのこと。

その他、大手IT企業にも導入されたという「マインドフルネス」と

「ポジティブ心理学」が紹介されています。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

このように、現代社会は、テクノ文化とともに「自己アピール」社会でも

あります。

そのために、特にコミュニケーションに苦手意識があるとされる

日本人にとっては、かなり憂鬱な社会になってきています

そのことが、「<匿名型>コミュニケーション」と

親和性のあるITツールを「ストレス発散など」間違った方向で

活用するといった社会問題の要因にもなっています。

それが、「テクノストレス問題」の核心であります。

『「匿名」文化だから、何でも表現すればいいんだ!!』とは

ならないのが、「社会のルール(マナー)」であります。

管理人も、十分に気を付けなければならない最重要課題ですが、

皆さんにおかれましても、適切な活用が出来れば、

「テクノロジーが、あなたの味方になってくれる!!」であります。

お互いに気を付けながら、IT文化と親しみたいものです。

「拒絶される(嫌われる)勇気」(アドラー)をテクノ免疫力にまで高めよう!!

さて、このように本書を読み進めてきて、

あらためて学び感じ取ったことがあります。

それは、「もう皆さん、<承認欲求>なんて捨てようよ!!」

いうことです。

言い換えますと、「拒絶される(嫌われる)勇気」であります。

同タイトルの本が、昨今「大ベストセラー街道まっしぐら!!」ですが、

最近急激な勢いで人気あるアドラーを始めとする心理学は、

ほとんどすべてが「個人(自己中心)心理学」。

それだけ、「他者に振り回されるのは、もう懲り懲り!!」という

心理的現れなのでしょう

皆さん、「本音」では、「<承認欲求>なんて、疲れるからイヤ!!」

なんだと思われます。

それはそうでしょう。

四六時中「相互監視(覗き見)」される社会なんて、

やはり、「どこか異常!!」なのですから・・・

是非とも、その「本音」を大切にして頂きたいと思います。

とはいえ、「人間」は、「社会的生物」。

「言葉」を中心に、意思疎通を図らなければ、

充足感をもって、生きることもままならない生物です。

そうした心理もありますので、「嫌われる勇気」には、

やはり苦しいものもあります。

件の「大ベストセラー本」は、「意図して」嫌われることを勧めることが

本旨ではないと思われます。

(ごめんなさい、未読なので中身の評価が出来ないのです。)

ですが、推測するに、これまでの日本社会が、

あまりにも「同調圧力によるストレス人間社会」だと目されてきただけに、

自身の「直観」や「体感」、「実感」によって、

手に取られる方が多かったのでしょう。

その「潜在力」が、こんなにも「大ベストセラー」にまで

押し上げたのではないかと、推測しています。

ところで、本当に「人間」は「評価(承認欲求)」が

満足に満たされなければ、生き抜けないものなのでしょうか?

そのあたりを、皆さんにも考察して頂きたいのです。

この問題は、「心理学」以上に「哲学」の難問になってしまいますので、

ここでは、これ以上、触れられませんが、

本書の主題とも絡むだけに、見逃せない論点であることだけは示しておきます。

「自己心理」は、なかなか「他者」にわかってもらえるものではありません。

しかし、そのことを予め「織り込み済み」のものとして、

日々「行動(生活)」していけば、必要以上に不安に悩まされることもないでしょう。

本書でも、コミュニケーションを介した人間関係に自信がない方でも、

地道なステップを踏み、積み重ねることで、

必ず、「他者」と関係しやすくなる手段の一つとして、

「コンピューター媒介型コミュニケーションモデル」が提唱されています。

本書「第7章」160~179頁は、特に「必読箇所」であります。)

これなどは、意外にも「内向型」の営業人間が活用して

成功してきたモデルであります。

むしろ、「営業=自己アピール」は、「内向型人間」の方が、

親しみを持てるものです。

実際の営業成績を見ても、過去の拙い管理人の経験から言っても、

「外向型」よりも、なぜか「内向型」に優れた営業向き人間が多いようです。

「人間社会とは、不思議なもの」ですね。

ですから、今現在コミュニケーション技法や人間関係に

自信を持てない方も諦めないで下さい。

本書でも考察されていましたが、

「コンピューター媒介型コミュニケーション」は、

大抵が「書き言葉」であります。

「チャット(スカイプ)形式」など、「直接対面型」もありますが、

自信がない方は、まず「書き言葉」で訓練してみて下さい。

とはいえ、本書でも強調されていますように、

「顔が見えない」だけに、相手の「顔」を一人ひとり

思い浮かべながら書く訓練を積み重ねることです。

それが、緻密な思考力や想像力を養う特訓にもなるのです。

その延長で、普段の「対面」場面でのコミュニケーションにも

積極活用してみるのです。

すると、かなり印象も変わることでしょう。

大切なポイントは、「ネット(仮想社会)」であろうが、

「リアル(現実社会)」であろうが、

「連続」的に捉える「世界(人間)観」をイメージしながら、

思慮深く、行動することです。

「人は、見た目が9割」だとか、「面接は演技がすべて」なる書籍が、

一時期話題になりましたが、

本当の意味で、人間関係を良好に保つならば、

「小手先のテクニック」など何の役にも立ちません。

むしろ、飄々と堂々と、淡々と黙々と生きていれば、

自ずから、独特の風格も芽生え、自信や勇気も湧き出てくることでしょう。

「人間関係も勉強と同じ」

「基礎体力がすべて」であります。

「基礎を疎かにする者は、基礎に泣く(泣かされる)」ともいいます。

そうした日々の積み重ねが、「生きる力=信用力=自信」に

直結していくのですから、まずは騙されたと思って挑戦してみましょう。

管理人とて、日々「再チャレンジ」という名の「旅の途上」にいます。

いつも語らせて頂いていますように、

「無理をせずに、少しずつ・・・」が「合い言葉」です。

それと、何よりも「恐怖心」からの脱出法は、「身体感覚の充実」ですので、

強張った身体をほぐすためにも、

「自然に親しみ、生身の人間と触れ合うこと」が、

最重要になってきます。

著者も、そのことを一番強調されておられます。

管理人が、本書にさらに付け加えることをお許し願えるならば、

「<顔>の見えない(見える)応援者を持つこと」ですね。

これは、想像以上に、勇気が湧き出てきますし、

なおかつ「責任感覚」を持たされますので効果的です。

ということで、皆さんにも「毒になる」ではなく、

「肥やしとなる」テクノロジーの活用が出来ますように、

本書をお薦めさせて頂きます。

なお、「社会不安症」については、

「不安症を治す~対人不安・パフォーマンス恐怖にもう苦しまない~」

(大野裕著、幻冬舎新書、2007年第2刷)

また、「拒絶される恐怖」に打ち勝つヒントとして、

「一瞬で恐怖を消す技術~拒絶される恐怖を力に変える7つのステップ~」

(マイケル・ボルダック著、堀江信宏訳、フォレスト出版、2010年)

をご紹介しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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