本田有明さんの「ソクラテス・メソッド~説得せずに“YES”がひきだせる!」対話技法の有意義な活用が周りを明るくする!?
「ソクラテス・メソッド~説得せずに“YES”がひきだせる!」
企業向けの人事教育や能力開発コンサルタントとして
ご活躍されている本田有明さんによる「対話技法」教本です。
ソクラテス・メソッドと言っても、
一般には馴染みがないかもしれません。
とはいえ、内容はどなたでも実践できるやさしい対話技法です。
皆さんは、日頃、コミュニケーションがきちんと取れていますか?
今回は、この本をご紹介します。
「ソクラテス・メソッド~説得せずに“YES”がひきだせる!」 (本田有明著、河出書房新社、2011年)
本田有明さん(以下、著者)は、主に企業向けの人事教育や
能力開発などの分野でご活躍されているコンサルタントです。
独立系コンサルタントとして、
「本田コンサルタント事務所」を開業されています。
また、前にもご紹介させて頂きましたように、
『宮沢賢治のことば』や『ヘタな人生論より葉隠』(河出文庫、2008年)、
『ヘタな人生論より夏目漱石』(河出書房新社、2012年)など
一般向けの面白くてわかりやすいエッセー集を通じた人生哲学には
定評があります。
近年は、児童文学にも挑戦されるなど多彩な活動をされていることでも
知られています。
さて、そんな著者ですが、大学時代は、哲学科のご出身だそうで、
「実利」志向のコンサルタントにしては大変珍しいご経歴を
お持ちであります。
「哲学」と言えば、いかにも「実学(即効性ある学問)」に対する
「虚学(役に立たない穀潰しの学問)」などと、
世間では、散々な評価しか得られていないようですが、
「さにあらず!!」。
実は、「哲学」こそが、「万学の基礎」であり、
すべての「実学の基礎」でもあるのです。
ただ、時代が下る(現代に近づく)につれ、
本来の素朴な世界に対する問いが、厳密に精緻化されていったため、
言葉が難しく煩瑣なものとなり、また、哲学者本人にしか
わかりづらい「造語」などが世に出されていったため、
本来の「問い」そのものから、一般人の興味関心が薄れていく原因に
なってしまったようであります。
そんな反省からか、哲学界でも、
近年では、原点回帰の気運が高まりつつあるようです。
すなわち、古代ギリシアの哲人ソクラテスなどに由来する
素朴な「対話(問答)」形式によるコミュニケーション技法であります。
皆さんも、何かの機会に耳に触れられたこともあるかもしれませんが、
介護や看護業界などでも、
積極活用されている「臨床哲学」という試みもその一つであります。
また、「コーチング」などの人材育成指導技術などの原型にも、
この「対話(問答)」技法が応用されています。
「どうすれば、難しい言葉や人間的摩擦を避けながら、
有意義なコミュニケーションが図れ、職場や家庭などを含めた
人間関係を円滑に推進していくことが叶うのか??」
その目的意識が、素朴な対話技法であるソクラテス・メソッドに
注目が集まる理由であるようです。
ということで、今回は、あまり肩肘張った難しい学問的考察の時間は
出来るだけ「お休み」にさせて頂こうと思いますが、
『実利的に「哲学」を活用すると、こんなメリットもありますよ・・・』と
いう視点を皆さんにもご提供する素材として最適な教科書がありましたので、
お届けさせて頂くことにしました。
「心の壁」を解きほぐすコミュニケーション技法の原点:ソクラテス・メソッドとは!?
さてまずは、本書の内容構成の要約から
ご紹介させて頂きましょう。
①『第1章 「ハーバード白熱教室」に学ぶ対話メソッド
~サンデル教授の方法が、なぜ有効なのか?~』
※本章では、本書の主題である「ソクラテス・メソッド」を
紹介するに当たってのイントロダクション(導入部)として、
人気を博したNHK教養娯楽番組『ハーバード白熱教室』で
日本でも一躍、一般人にも知られるようになった
現代の「公共哲学」の大御所的存在マイケル・サンデル博士の
「教授法」に焦点を当てながら、「対話」の「奥義」について、
徐々に触れられていきます。
今回は、マイケル・サンデル氏自身の思想解説は
省略させて頂きますが、
要は、ご専門が、「公共哲学」でもあり、
つまりは、
「民主主義の成熟度を高めるための議論作法とは、これいかに??」をテーマに、
自らの講義テーマ以前の問題として、
まずは、「旧来の大上段(上から目線)からの教育技法の改善法」を
自らの教育実践過程で試行錯誤しながら、
「対話技法」を創意工夫されていった模様について描かれています。
その信条こそが、
『最高の教育とは、自分自身でいかに考えるかを学ぶことである』
(本書29頁)であります。
②『第2章 ソクラテスを“巨人”にした知恵の助産術
~見えない“問題の本質”が浮かび上がる~』
※本章が、主題「ソクラテス・メソッド」の詳細な解説に
当たりますが、ソクラテス・メソッドの骨子を
管理人なりに一言で要約させて頂くとするなら、
「自分が、いかに日頃<誤謬>にまみれて、
<無知>であるかに気付かせること」が、
ソクラテスの有名な格言「<無知>の知」であります。
つまりは、「この世の諸現象について、精確には、何も知らないのだよ、
君(たち)は・・・」と悟らせるところに主眼があったということです。
このような論法ですから、当然、世人からは、
批難中傷に晒され、誤解をまともに受けることになりました。
特に、当時の政治支配層など、プライドの高い連中からの
風当たりは、それはそれは強いものがあったようですね。
この点は、現代も変わりません。
「王様は裸だ」と叫ぶ、いつまでも童心を持った
ドン・キホーテのような純心な人間からの、
あまりにも赤裸々な指摘は、誰しも、顔をしかめてしまうからですね。
そこで、本来の「ソクラテス・メソッド」の趣旨を
本書から引用しながらまとめておきましょう。
「ソクラテス・メソッド」は、別名「ソクラテスの助産術」とも
呼ばれていますが、まぁ、現在のお産状況では、
「助産師(産婆さん)」自体、「死語」になってしまった感が
ありますが、
そうした「お産(ここでは、<知恵>を生み出すという意味です。)」
を助ける役目を果たすのが、ソクラテスでありました。
「自分で考えて、答えを見つけ出す」手助けをする。
ここに、「ソクラテス・メソッド」の本質があります。
以下は、著者による要約です。
『①自分が話すことよりも相手の話をよく聴くことで
キーワードを見つける
②巧みな質問をすることによって相手のなかに眠っている
知恵を引きだす
③対話の作法を守りつつ論理思考を促し、ともに問題解決の
ヒントを探す』(本書4頁)
このように、「対話」ですから、
「独話」のような<独断>と<偏見>を出来うる限り回避する術として、
「ともに考え、ともに、<より良き>知恵を見出していこう!!」という
ところに「ソクラテス・メソッド」の狙いがあります。
この視点は、当ブログでも最も大切にしたいテーマですが、
なにせ、「一人」が「衆人」に語りかける「書き言葉」で綴らざるを
得ないのが、「ブログ(私的日記)」の宿命ですので、
管理人も「限界」をどうしても感じてしまいます。
その点では、直接「対面」型の「対話」に勝るものはないのですが・・・
さて、このような趣旨の「ソクラテス・メソッド」ですが、
この「(教育的)対話技法」は、
昨今のわが国のロースクール(法科大学院)などの講義でも
活用されているようですが、
ソクラテス・メソッドの本来の趣旨とは、
大きくかけ離れたものとなっているようです。
そのあたりも、いわゆる法学を始めとする教育現場で使用される
「事例研究(ケース・メソッドと言いますが・・・)」との対比で
簡潔に紹介もされていますので、
ご興味ある方は、そのイメージも同時に掴んで頂ければ、
さらなる教育事情の改善に役立つのではないかと思われます。
「先生方もご苦労だと思いますが、生徒さんも大変ですなぁ~
(わが国の教育現場における指導法が、コロコロと変わって・・・)」
③『第3章 交渉・説得で確実に成果を生む実践法
~この対話法でビジネスが変わる~』
※本章では、その「ソクラテス・メソッド」を
狭義の教育現場だけではなく、
ビジネス現場でも積極活用してみようと、
具体的な対話手法が紹介されています。
それは、巻末にも、
『WIN/WINの対話を実現する29のポイント』
(本書214~221頁)
にもまとめられていますが、
その詳細をここに転記すると、
長くもなり、本書の効力も削減されてしまい、
著者にご迷惑をお掛けすることにもなりますので、
今回は、本書の性格上の問題もあって、控えさせて頂きます。
(ここが、本書の秘密ですので・・・
なにとぞ、ご了承下さいませ。)
④『第4章 “知と才”を引きだすソクラテス・メソッド
~人が育ち、職場が活きる~』
※「不機嫌な職場」にならないための叡智も、
この「ソクラテス・メソッド」には宿っています。
具体的なビジネス現場での活用法については、
第3章と本章にて、解説されています。
特に、第3章で詳細に解説されている
「関係性と利益のバランスをどうとるか」は、
企業社会の論理では避けて通ることが出来ませんが、
「4つの<座標軸>」で考えてみる視点は、
このテーマに限らず、非常に有益かつ効力を発揮してくれます。
管理人も、最近、ことに、数学における
「集合論」と「関数」、「微積分」から
その思考のイメージ像を形作るのに役立たせて頂いていますが、
こうした観点からも、
やはり、「数学は実社会でも、確かに役立つ!!」ことが
実感されることでしょう。
⑤『第5章 人を気持ちよく動かす7つの習慣
~厄介な相手も、よき理解者になる~』
※本章では、いよいよ、「ソクラテス・メソッド」を
人間関係の微妙な綾(「心の壁」などのもつれた糸)を
解きほぐす心理的対話技法として実践活用する知恵が
提供されます。
この「ソクラテス・メソッド」は、
「自分を勘定に入れず(宮沢賢治)、相手の気持ちに寄り添った
姿勢で傾聴する」対話技法として、まさに打って付けです。
ここで重要なヒントは、「肯定的言語表現」の活用であります。
著者は、<身につけたい7つの習慣>と<致命的な7つの習慣>を
対比することで、人間関係を硬直した状態から柔軟な状態へと
変容させるコツを示されています。
また、現代に生きる<社会人>であれば、
大多数の人間にとって避けがたい「組織人」としての行動形態に
束縛されることで、個人的な人生における貴重な時間や費用が
剥奪されかねない生活環境に置かれることが多々ありますが、
そんな現代<社会人>の「組織社会」的付き合いに対する
「断りにくさ」を改善するヒントなども提示されています。
(具体例は、本書146~155頁ご参照のこと。)
ここでは、今ある生活環境を根本から変化させたいという方に
オススメな改善案として、
<抜本塞源>という考え方が紹介されています。
この<抜本塞源>については、
著者は、『災いの源を塞ぎ、本から抜くという意味です。』
(本書149頁)と非常に簡潔明快な定義付けで説明されていますが、
もともとは、中国は明朝の頃に活躍した王陽明という方が
創始された陽明学という「心学」理論から生み出されてきた言葉です。
詳細は、前にもご紹介させて頂いた林田明大先生がお書きになった
『真説「陽明学」入門 第二版』(三五館、2003年)も
ご併読願いたいのですが、この「心学」理論も
ある種の「ソクラテス・メソッド」と共通する心があるようです。
陽明学の場合には、「独学」的側面が強いのですが、
本書で紹介されている「ソクラテス・メソッド」は、
二人以上の「相互学習」的側面に力点が置かれています。
どちらの技法にも、もちろん、一長一短はありますが、
「常に学び問い続けながら、人間と世界にとって、
何が一番より良く大切なことなのか??」という
「真理」を<対話>によって掘り起こしていく点に
「ソクラテス・メソッド」の利点があります。
とはいえ、現実の場面では、「哲学」的真理考察とは異なり、
ある程度の人間関係的「文脈」に制約された「社会的」時間内での
「暫定的」真実を探求することで、相互一致点を見出す他ありませんが、
だからこそ、逆に、常に、人間的思考には、
誤謬も含まれ、誤解が絶えず生起してくる点に注意を向ける必要が
あります。
そのような注意点に視野を拡げさせてくれるのも、
「ソクラテス・メソッド」の利点であります。
著者の『問題を解決に導くGROWとは』も、
人生で難題にぶち合った際の局面打開法として役立つヒントを
教えてくれています。
⑥『身近な関係ゆえに難しい親と子の対話の秘訣
~みずから考え、正しく行動する子に育つ~』
※本章は、只今現在、「子育て奮闘中」の親御さんには、
是非ご活用して頂きたい親子間のコミュニケーション技法の
コツが解説されています。
特に、「思春期」は、子供にとって、微妙な時期であります。
この時期における親子間の「対話」の質量そのものが、
子供の将来性を大きく左右させるだけに、
「対話」には、子供の微妙な心理に寄り添った慎重な配慮が
要求されます。
そんな時こそ、大活躍するのも、「ソクラテス・メソッド」で
あります。
勉強嫌いを勉強好きに転換させるのも、
安易な「正解」を求めない「ソクラテス・メソッド」にはあるようです。
大抵の子供は、時間の制約された受験用学習環境によって、
本来誰もが持ち合わせていただろう純粋な知的好奇心が
この時期あたりから、剥奪されていくようです。
それが、「自分で考えず、常に、何者かに急き立てられ、
追い立てられるような心理で、他者依存をより一層促される」
方向へと知らず知らずに誘導される元凶となります。
このことは、<社会人>となった大人も同様であります。
このような心理的ジレンマから一歩踏み出す勇気を与えてくれるのも
「ソクラテス・メソッド」にはあります。
⑦『第7章 ブレずに答えがだせる思考の訓練法
~どんな状況でも、論理的に思考するために~』
※本章では、質の高いコミュニケーションをもたらすための
訓練法が、哲学的対話技法としての「弁証法」などとともに
紹介されています。
この「弁証法」には、20世紀の左右の価値観対立の歴史から、
現代では、あまり芳しくない評価が付きまとっていますが、
本来は、対立する矛盾点を<より良き>次元へと「対話」を通じて
発展的解消させていくところに目標がありました。
それが、特殊な思想的「文脈」の中で、
「革命的」に悪用されていったところから、
一般人にとっても、誤解される「対話技法」となってしまいました。
この「弁証法」を、簡単に要約すると、
2つの対立する矛盾点である「正」と「反」を
上位次元で「合」へと重ね合わせることによって、
<発展的解消>へと進展させながら、
より良き解決の着地点を探究する「対話技法」であります。
いわば、平行線のままで一向に進展しない<非生産的>議論における
膠着状況を上昇(垂直)移動させることで、解きほぐすところに
「弁証法」のメリットがあります。
いずれにせよ、「ソクラテス・メソッド」も「弁証法」も
安易な愚にも付かない「正解(真理)」を早急に追求しないところに
共通項があります。
さらに、本章では、
著者独自の『物事をきちんと理解するための「三点思考」』
(本書197~212頁)も紹介されていますが、
この点こそ、本書から最大限に学び取りたいテーマでもあり、
さらにもう少し検討しながら、ご紹介したいことがありますので、
項目をあらためさせて頂くことにします。
ということで、本書の要約自体は、一応終わりましたので、
次へ「GO!!」することに致しましょう。
「三点思考」(本田有明氏)と「三性の理」(森政弘氏)の「3」の数秘術に学ぼう!!
ところで、この「三点思考」ですが、
数字の「3」にこそ、「秘密の門」があるようです。
数秘術などの解説によると、
「3」は、<発展>という「創造」を司る数字といい、
その倍数である「6」は<完全的調和>、「9」も<完成的調和>を
司る数字だとされているようですね。
そこから、古来、神社仏閣でも、魔よけ用に「三つ巴紋」などの瓦が
使用されていたり、「ミツウロコ紋」を家紋にする家系(例えば、北条氏)も
あるようです。
今回は、<数秘術>がテーマではありませんので、
これ以上の深入りはしませんが、
要するに、「調和」志向の対話技法にも、
「3」という数字的視点を取り入れると、
スムーズなコミュニケーションを図れるだろうと
強調させて頂くために、上記エピソードを語らせて頂きました。
それでは、本書のご紹介に戻りましょう。
著者は、本書にて、
『物事をきちんと理解するための「三点思考」』(本書197~212頁)
をテーマに、
「なぜ、何事も3つの要素で考える癖をつけると効果的」なのかについて、
下記のように理由付けされています。
『①この世界のさまざまな事象や現象は「3つの要素」から成り立っている。
②2つでは単に並列的な関係でしかないが、3つになると構造を形成する。
③そのため「3」で説明されたものは理解しやすく、説得力をもつ。』
(本書206頁)のだとされています。
確かに、「2」という「平面」で事象や現象を捉えるよりも、
「3」という「立体面」で捉える方が、
より「見える化」しやすいようです。
「平目」を「鳥の目」に変化させることで、
高い次元から物事を把握しやすくなります。
ここに、著者は、「三点志向」のメリットがあるといいます。
これに併せて、もう一つの「3」的思考法も
ご紹介させて頂きましょう。
それが、「三性の理」(森政弘氏)であります。
この「三性の理」は、
管理人が、読書界の師匠でもあり、敬愛もさせて頂いている
当ブログでも、たびたびご紹介させて頂いています
「本のソムリエ」でいらっしゃる清水克衛さんの
近刊本『魂の読書~世の中に流されるな!~』(育鵬社、2016年)
でもご紹介されています。
その詳細は、上記書の43~50頁(とりわけ、47頁の図)を
ご一読されることをお薦めさせて頂きますが、
要するに、ここでも「二元的対立軸」を上昇次元にずらすことで、
「色」をつけて解釈判断しない思考法であります。
この「三性の理」を、清水さんは、
ロボット工学者であり、仏教哲理にも造詣の深い
森政弘博士の『退歩を学べ』(アーユスの森新書、2011年)から
ご紹介されておられるのですが、
もともとは、仏教的思考法であります。
「無記」、「無分別智」、「全機」とも称される上昇次元での「理」で
ありますが、ここに、「言葉」が持つ「限界(差別観)」を
突破する糸口があるようです。
とはいえ、現代人は、古代人とは異なり、
すでにイメージ思考全開の「以心伝心」でもって、
相互「交流」できる「間柄」から久しく遠ざかってしまいました。
それが、「言葉」を発明してしまった人間の悲しい性でもあります。
「言葉」は、便利な反面、「両刃の剣」でもあります。
世の中に生起する戦争や差別、経済的格差観も、
こうした「言葉」によって、人間を「区分」するところに
由来します。
この観点については、物書きである管理人の言論倫理としても、
常に注意深くあるべく努めさせて頂いているつもりですが、
やはり、困難を常に感じています。
「イメージをイメージそのままに」表現仕切る能力も
本来は、<生物>としての人間に備わっているのでしょうが、
現代教育環境では、
まず、イメージよりも先に言葉や記号表現を試みる指導法が
なされますので、豊かな「心」も、
こうした教育的配慮??によって、曇らされてしまいます。
管理人も、幼少時のある時点で、
このような現代教育環境から逃れ出たいとの強烈な欲求に
駆られましたが(今も常に駆られていますが・・・)、
それは、<社会人>を捨てでもしない限り、
不可能なことであります。
「言葉が先か、イメージが先か??」
これは、管理人も常に考えているテーマですが、
どうやら、管理人の思考クセは、イメージ先行型のようです。
イメージから、言葉が、あたかも「自動筆記」されていくような
感覚で、次々と、連想ゲームのように紡ぎ出されていくようです。
つまり、思考があちこち拡散し、一箇所に収斂させることの
難しいある種のマッピング(マンダラ)思考なのですが、
最初から、「終局点」を決めてかかっているわけではないのです。
ここが、「創作」的表現の面白いところですが・・・
(いや、それは、言い過ぎですが、
なぜなら、人に「わかりやすく」お伝えするには、
どこかで、自分なりの価値観と結論を暗黙裏に含みながら、
「まとめ」なければならないからです。
それが、時間と紙数という「有限」な資源を食って生きる
人間の宿命ですので、わかりきったことではありますが、
とこのように、延々と「真理」を探究する旅が続くわけです・・・)
そこで、そろそろ、「まとめ」に入らなければなりませんが、
要するに、普段における「ソクラテス・メソッド」の実践現場では、
もちろん、「時間」や「文脈」などのTPO「3原則」制約条件下で
活用することになりますので、
ソクラテスの想定したような形では、
そのまま使うことは出来ません。
本書でも、そのことを大前提に、
あくまで、「哲学」的思考とは別立てで、
「ソクラテス・メソッド」の実践的活用法が紹介されています。
この「ソクラテス・メソッド」自体を、「哲学」的に分析考察しながら、
批判することも出来ますが、今回は、そのことが主題ではありませんので、
そこには立ち入りません。
本書における「ソクラテス・メソッド」の紹介での重要な結論は、
「人間は、誰しも間違える生物」であり、
「言葉」によって、「独断」と「偏見」をいとも容易く
この世に生み出してしまうことを気付かせる点にあります。
そこから、様々な「人間的感情のもつれ」が生じ・・・
大なり小なり、多種多様な「心の壁」が形作られていくことにもなります。
その「心の壁」をいかに解きほぐせるかを探究すること自体が、
「対話(コミュニケーション)」の本質です。
現代社会は、コミュニケーションの本質からはほど遠い、
一方通行の「情報」社会になりがちですが、
「情報」と本来の「知識(知恵)」もまったく異なります。
そんな時代だからこそ、一度立ち止まって、
真摯にあらためて日々生起してくる問題点を
落ち着いて、皆さんとともに考えてみようとの趣旨で、
この本を取り上げさせて頂きました。
ということで、本書は、コミュニケーションで行き詰まりを
感じておられるすべての<現代社会人>のサポート役として、
ご活用されることをお薦めさせて頂きます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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[…] ということで、本書は前にもご紹介させて頂きました […]
≪…多種多様な「心の壁」…≫は、SNSの≪ 『≪…「大人に なる」…≫に触れた洒落たエッセイ』 ≫の≪… 大人になって失うもの は若さではなく幼児性だと思う。 …≫を掘り起こし≪…「心の襞」…≫(心情の襞)を[解剖]して観る。
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