ローレンス・クラウス氏の「宇宙が始まる前には何があったのか?」無(ゼロ)から創造された宇宙論!?

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「宇宙が始まる前には何があったのか?」

NHK宇宙白熱教室でも話題になった

ローレンス・クラウス氏が、「無から創造された宇宙論」

を解説されています。

西洋社会では、なかなか「無(ゼロ)」という考え方が

受容されにくいようです。

そのため、「宇宙論」の世界でも「ビッグバン仮説」における

「特異点」などの解釈が相当混乱しているようです。

そこに、大胆にも「無から創造された宇宙論」に挑戦された

宇宙物理学者がいます。

今回は、この本をご紹介します。

「宇宙が始まる前には何があったのか?」(ローレンス・クラウス著、青木薫訳、文藝春秋、2014年第4刷)

ローレンス・クラウス氏(以下、著者)は、宇宙物理学者として

アリゾナ州立大学で「起源プロジェクト」を創設し率いておられます。

1995年に、「真空のエネルギーは、非常に小さいがゼロではない」との

大胆な仮説をマイケル・ターナー氏とともに提唱のうえ、数年後には、

その大胆な仮説も実証されました。

日本では、NHK宇宙白熱教室などを通じた公開講座放送で

知られているようです。

そのテーマは、本書の原題「A UNIVERSE FROM NOTHING」です。

まさに、「無から創造されたひとつの宇宙」です。

本文でも触れていきますが、ここで「ひとつの宇宙」とは、

言うまでもなく、「私たちに日々経験認識されるこの宇宙」という

意味です。

著者は、「多元的宇宙論」についても触れられていますが、本書では

さしあたり「私たちのこの愛すべき宇宙」についての「起源」について

探究されていきます。

前にも当ブログでご紹介させて頂いた「超ひも理論」の研究者でもある

ブライアン・グリーン氏記事①記事②)や、本書でも展開される

「宇宙における物質-反物質の非対称性について」を考察した

フランク・ウィルチェック氏記事)も

本書にて紹介されていますが、著者の視点は彼らとも大きく異なる

「独自性」があるようです。

著者は、「超ひも理論」を必ずしも受容されていないようですし、

むしろスティーヴン・ホーキング氏の「ブラックホール研究」などを

手がかりとしながら、フランク・ウィルチェック氏の考察なども加味した

「物質と反物質の自発的対称性の破れ」から生じる「量子ゆらぎ」を「起爆剤」

として、この宇宙は「無から創造されていった!!」とする大胆な「仮説」を

提唱されていきます。

そのため、著者は、「超ひも理論」や数々の「マルチユニバース理論」に対して、

他の宇宙物理学者とは一定の距離を置いているようです。

著者は、本書の「あとがき」も書かれているリチャード・ドーキンス氏とともに、

「形而上学的(経験不可能な)世界(宇宙)観」へ挑戦されてきました。

「神を含めたプラトン的イデア観を考慮に入れずに、冷静な経験的記述に

よって宇宙を語りたい!!」との信念の下、著者自らは「反神論者」だそうです。

現代科学者の「科学的世界観」も、量子力学や数学が高度に抽象化、ある種の

物語化していく中で、著者は、再度「実験観察」で得られた「経験データ」を

最大限尊重しながら「理論修正」していく本来の「厳しい科学者の姿勢」を

保持するよう呼びかけられています。

「事実を理論に合わせて都合良く修正させてはいけない!!」との警鐘です。

その意味で、本書は「科学と宗教の大きな違い」を理解するにも最適な1冊です。

この本は、本書の原題「A UNIVERSE FROM NOTHING」のユーチューブ

公開放送などの反響に対する視聴者(読者)への「誠実な回答」もなされています。

そのことは、本書巻末の「著者との一問一答」という形でまとめられています。

ですので、本書を読み進めていくうちに、「著者の思想的立場」を確認されたい場合には、

この「回答例」をお読み頂くと理解も促進されるものと思われます。

それでは、「無からの宇宙創造論」についてご紹介していきます。

「宇宙創造論(生命起源論)」を学ぶことは、読者皆さんの「人生観」をも

柔軟にすること間違いないと思われますので、この本を取り上げさせて頂きました。

「なぜ何もないのではなく、何かがあるのだろうか??」

本書は、この古くて新しい「問い」に誠実に答えていくための

「科学者としての正しい筋道」を示しています。

科学の世界では、通常「なぜ??」という「問い」を立てるのは

好ましくないものとされています。

「何??(いかにして)」という結論としてしか記述出来ないからです。

著者によると、「なぜ??」と「問い」を設定してしまうと、「何らかの意図」が

無意識の暗黙として入り込み、「予定調和的な結論(未然に決定された結論)」にしか

導かれないからのようです。

「自然は、人間の想像力をはるかに超えた魅力あふれる世界である」

この「自然界」をかなりの程度うまく記述していくためには、

「科学的方法論」が役立ってきました。

その「科学的精神」は、3つの基本方針から成り立ちます。

①証拠至上主義。

②理論創造に対して、その「理論の正しさ」を証明する

のと同等か、それ以上の「熱意」をもって「間違い」であると証明する

努力を怠らないこと。

③真理の究極的な判定者は、「実験観察の結果」である。

つまり、「理論の美しさ」や「自分の信念に対する心地よさ」を

決して「拠り所」としてはならないということです。

本書で展開されていく「最先端宇宙論」は、数々の大胆な「量子力学」や

「数学」的記述に彩られてきました。

そのため、現代科学の進み具合を知るためには、「宇宙論(生命論)」を

学ぶのが一番よいと考えられています。

しかし、専門家の世界でも「百家争鳴」ですべての「理論検証」が理解不能

とされているように、私たち一般人にとっては、なおのこと、「消化不良」を

起こしてしまいます。

「科学的世界観」が、そのように「高度に抽象化、曖昧模糊」となるにつれ、

再び「宗教的世界観」も強く甦ってきます。

もとより、「思想・信仰の自由」は保証されており、科学者の立場であれ

人間である限りは、自らの信念の中に「意識的にせよ、無意識的にせよ」

「宗教的価値観」が意図せずに忍び込んでいくのが、人間の「認識の限界」

でもあるようです。

この本では、アインシュタイン一般相対性理論が完成する物語から始まります。

やがて、ハッブルの観察結果からもアインシュタインの「信念」と

「宇宙方程式(一般相対性理論)」とのズレもアインシュタイン自身が発見します。

アインシュタインも、この「現実(自然)世界の驚異」の前で

何度も心が揺れ動いたそうです。

それほど、「科学的方法論」から得られた結論に対する「正しい認識」を

受容することは難しいようです。

今日では、「インフレーション理論(宇宙膨張説)」とともに、「ビッグバン仮説」が

宇宙創造論としてなお有力な状態にあるようですが、皮肉にも

この「ビッグバン・モデル」の原型となる「モデル」を

最初に提示した科学者は「神学者」でもありました。

20世紀の動揺は、政治経済の世界だけでなく、この「科学的仮説」から導かれた

「科学的世界観」からも生じていったことが、詳細に理解出来る好著となっています。

それでも、この「神学者」が優秀だったのは、「科学と宗教の違い」を厳格に

認識されていたことです。

「無(ゼロ)」から宇宙は創造されたと考えてもよい!?

様々な実験観察結果から、「宇宙の様態」が日々高度に更新されていく現状とともに、

多様な「理論構築」も積み重ねられてきました。

そこで、著者は自らの「理論モデル」を構築するよりも、私たちが直接確認出来る

「実験観察データの重要性」に注目することを強調されてきました。

「経験認識可能なデータでしか、理論構築すべきではない!!」

本書では、そこまで強く言い切った表現をされている訳ではありませんが、

著者の立場は、「目的(何らかの意図をもった神)なき世界(宇宙)観」の

提唱者なので、やはり理論構築に当たっても「不純物」を取り込まない

研究姿勢を保持すべきだとの持論も強固に主張されています。

そこで、著者独自の「宇宙論」を構築していく際に、これら一連の

実験観察データから「宇宙は平坦であるらしい!!」との仮定に導かれました。

この「平坦宇宙論」もあくまで「モデル仮説」なので、実際には「数学的微調整」

でもって補強してやらなくてはなりません。

言葉は、よく吟味して定義してからでないと、うまく「理論構築」していくことは

出来ません。

アインシュタインの「一般相対性理論」でも、時空は伸縮自在の「でこぼこ」で

ゆがみがあることを記述出来るそうですが、実際の「宇宙空間」も加速度を増して

「膨張し続けているらしい!!」との観測結果が得られています。

ここから、現実に自然観測可能な「宇宙様態」を、理論面からも説明する作業が

始まるのですが、ここで「大きな難問」にぶつかるようです。

現代最先端の「量子物理学」をもってしても、「重力理論」に関しては

まだまだ「未解明ゾーン」だということです。

アインシュタインの「一般相対性理論」は、「重力理論」も考慮に入れた

記述が可能ですが、これは「巨大なマクロ世界」のことです。

「宇宙は、マクロにしてミクロな巨大空間」という「不可思議な世界」ですから、

その空間を精確に記述するためには、「マクロとミクロの結び目」をも

記述可能な「理論方程式」が必要になります。

それが、「静止体系」における「特殊相対性理論」と「ミクロ」の「量子力学」の

「統合方程式=ディラック方程式」の登場です。

複雑で詳細な解説は、この本をお読み頂くとして、著者はついに

「無からの宇宙創造論」に挑戦していきます。

「どうやらミクロな世界では、粒子が次々に生成消滅するらしい!!」

粒子(物質)には、反粒子(反物質)というように「ペア」になって行動する

特徴が、現代量子物理学では判明しています。

今なお、さらなる「ミクロな粒子世界」が世界中で探索されていることは、

皆さんもご存じのところです。

しかも、一方では、「膨張し続ける宇宙空間」では、

「エネルギー量よりも、物質量の方が少ないらしい!!」ことも解析されています。

具体的な数字は、論者によって様々な「数値」がありますが、

著者がわかりやすく一般人にイメージしやすいように、

「99%の宇宙は見えない!!」と表現されています。

現時点では、「未解読情報」ばかりですが、「暗黒物質」「暗黒エネルギー

で、宇宙の大海は満ち溢れている可能性が指摘されています。

ここで、「暗黒」とは、「目に見えない」ということです。

すると、宇宙の「最後の姿」はどうなるのか?

「おそらく、冷たくいずれかの時点で収縮する!!」

その様子は、もちろん私たち現人類の「未体験ゾーン」ですが、

少なくとも現状が続く限り、可能性としてはそのようになるだろうと・・・

そこで、本書の最大テーマ「宇宙の始まる前」に遡ることにします。

宇宙の進化は、「高温高密度から低温低密度へと変化していく過程」であるようですが、

逆の「宇宙開闢時点」に向けて辿っていくと、そこは「熱地獄」です。

多くの宇宙物理学者は、ここで「立ち止まる」ようですね。

「ビッグバン仮説」を大前提にし、「無(ゼロ)」を無視して「無から有は生じない!!」

立場の論者は、ここに「特異点」を設定します。

また、著者の立場ではないようですが、「超ひも理論」で解析を進める論者も

数多いようです。

むしろ、現時点では、この論者が多いようです。

著者は、ここで大胆にも「無」の定義をされていますが、大方の論者の

定義とは違い、「無とは、単なる空っぽではなく、時間も空間もないそれをも

包み込むような巨大な状態??」のようです。

「時空のない状態(宇宙開闢前)から時空のある状態(宇宙開闢後)への移行期

(無(ゼロ)からの跳躍点)」を考察されています。

著者は、冒頭のフランク・ウィルチェック氏の考察などもヒントに、

「自発的な対称性の破れ(ズレ)」から、わずかに「宇宙に息吹」が吹き込まれる

様子を描写していきます。

『宇宙は、「何もない」状態では不安定で耐えられないようだ!!』

『最初の最初??は、物質-反物質は完全な均衡を保持し、文字通り

「無(ゼロ)」だったようだ!!』

それが、わずかな誤差でズレが生じ、「無から有が生み出された!!」

との大胆な「仮説」を提唱されています。

宇宙開闢時点では、「わずかだが、エネルギーよりも物質の方が量が多い」

という「予想図」です。

もちろん、この「仮説」は今も多くの学者が研究中です。

結局、著者の視点では「無限永久循環論法」になってしまうようですが、

この視点に立つと、宇宙創造論の中に「神(意図)を持ち込む必然性がない」

「仮説」になりそうです。

かくして、「無(ゼロ)から宇宙は始まった!!」ということですが、

結論としては、論理的に科学的に考察を積み重ねていく「地の果て」は、

「何かある」と「何もない」世界の領域区別は消滅していった世界に

導かれていくようですね。

このような状態が、無限に「生成消滅」していくのが、「宇宙の実相」

だったのでしょうか??

それは、これからも「人間である限り」認識困難な「宇宙像」ですが、

限りなく「思考停止することなく」歩み続けるのが、「人間の実相」でも

あるようですね。

これが、著者の「神(意図・目的)なき物理的宇宙創造仮説」でした。

このテーマは、本当に奥深く面白いテーマで簡単には要約出来るような

「世界観」ではありませんが、皆さんも「著者の声」に耳を傾けながら

「独自の宇宙創造論」に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

「私たちも、いつかは夜空に輝く星々の世界に還っていく!!」ことを

考えると、「生きている間の不思議さ」にあらためて驚異を感じるでしょう。

著者によると、たまたまこの「宇宙の実相」を実際に観測出来る時代に

巡り会えているそうです。

その意味で、「非常な幸運に恵まれている」ようです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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