中野信子/澤田匡人先生の「正しい恨みの晴らし方~科学で読み解くネガティブ感情」人生の貴重な時間を奪われないために!!

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「正しい恨みの晴らし方~科学で読み解くネガティブ感情~」

『ホンマでっか!?TV』などの人気番組でお馴染みの

中野信子先生と感情心理学者である澤田匡人先生による

<ネガティブ感情>という名の

心のコリを解きほぐす秘伝書です。

現代は、強力なストレスで否が応でも、

ネガティブ感情が高まる社会。

とはいえ、ネガティブ感情には、

生存本能も絡むだけに取り扱い要注意!!

今回は、この本をご紹介します。

「正しい恨みの晴らし方~科学で読み解くネガティブ感情~」(中野信子/澤田匡人共著、ポプラ新書、2015年)

中野信子先生(以下、中野先生)は、

『ホンマでっか!?TV』などでお馴染みの

コメンテーターとして活躍されている脳科学者です。

近著には、

『脳・戦争・ナショナリズム~近代的人間観の超克~』

(中野剛志/適菜収氏との共著、文春新書、2016年)

また、今月発刊予定に

『サイコパス』(中野信子、文春新書)があります。

そして、澤田匡人(以下、澤田先生)は、

感情心理学をご専門とされている心理学者です。

臨床心理士・臨床発達心理士としても

活躍されています。

特に、「いじめ問題」について、

<いじめと感情>を研究テーマに、

各所で研修・講演活動もされているとのことです。

類書には、

『子どもの妬み感情とその対処~感情心理学からのアプローチ~』

(新曜社、2006年)があります。

本書は、<嫉妬心>を主題に据えたネガティブ感情との

うまい付き合い方を脳科学と心理学の接点から浮かび上がらせた

新書です。

現代社会は、強力なストレスが重くのしかかってくる生活環境です。

そんな生活環境の中で日々を過ごしていれば、

いかに打たれ強い性格の人間でも、

容易にネガティブ感情を抱くことになってしまいますよね。

とはいえ、後に、本文内でも触れさせて頂きますが、

こうしたネガティブ感情自体には、

生態環境ストレスから我が身を防御するシステムが

組み込まれているとも目されているだけに、

ただ単に、ネガティブ感情を否定すれば

事足りるというものでもないようです。

日常生活の中では、ネガティブ感情の奥底に潜む重要な役割を

あまり意識せずに過ごすことの方が多いために、

この点に注目しながら、

心の対話を図ることも少ないように思われます。

ネガティブ感情の源泉には、

過去の人間関係トラブルなどによる深刻な自尊心喪失感情が

心の奥深い潜在領域に記憶されることもあり、

そう容易く忘却することが出来ない難点があります。

深層領域の「無意識」層へ蓄積された記憶が、

何かの拍子に、突如飛び出してくるおそれがあるからこそ、

ネガティブ感情の取り扱いは要注意なのです。

でも、そんなネガティブ感情を軽視、放置しておくと・・・

いずれ、さらなる深刻な社会的トラブルを

誘発させることにもなりかねません。

ですが、ネガティブ感情の内実を科学的なアプローチで読み解いていくことで、

いつもとは違った賢い付き合い方が出来るようになるかもしれません。

ということで、ネガティブ感情との付き合い方を学ぶことは、

人生に対する個人的義務であるとともに社会的義務でもあると

いうことで、皆さんとともに学んでいこうと思い、

この本を取り上げさせて頂きました。

ネガティブ感情は、人類の生存戦略が原因で生み出されてきた心理的機能だった!?

さて、本書での最終目標は、

『恨みや妬みの正体に迫り、それらを有効に活用する術』

(本書<はじめに>6頁)を提案することにあります。

本書での主題は、ネガティブ感情でも、

特に厄介な「妬み」をテーマに、脳科学と心理学の縦横的知見による

解題に重点が置かれています。

まずは、本書の内容構成に関する要約からですが、

各章における解説内訳として、

「心理学の視点から」が澤田先生のご担当

そして、「脳科学の視点から」が中野先生のご担当とされています。

本書の基本構成は、

第1章から第8章までが、

それぞれの学際的アプローチによる解説の領域で、

最終章の第9章にて、澤田先生と中野先生のそれぞれの

人生体験を通じた「対談」形式での<まとめ>となっています。

そこで、まず最初に、本書における

心理学と脳科学の分析考察対象に関する注意点に触れておきます。

本書<まえがき>6頁に触れられていますが、

本書において取り扱われる各学問の領域対象定義では、

「心理学」では「行動」を、

「脳科学」では「神経」をもって、

それぞれの<心の指標>とする旨が宣言されています。

いずれにせよ、

『心それ自体を扱っているわけではありませんが、

心の働きに迫ろうという目指す射程は同じ』だとされています。

実際の各学問で取り扱われる対象範囲は、

もっと広く細分化されていますが、

本書でのテーマが、

「妬み」や「恨み」といったネガティブ感情分析ということで、

このように絞り込まれている点が、本書の特徴であります。

もう一点の捕捉説明ですが、

「学問」は、あくまで、「仮説」を提示しながら、

社会における諸問題をより近似的に説明していくためのモデルを

構築・修正しながら、より現実的実態(実感)に即していく手法を

採用しているところに特徴がありますので、

本書で解説されている内容説明に関しても、

あくまでも、お二方による特殊な見方である点は、

読み解かれる際に、十二分にご留意願います。

(その点は、これまでも当ブログの各書籍ご紹介記事にて

注意喚起させて頂いてきたところです。

一般的には、上記人気番組などで取り上げられている

各コメンテーターの視点にも、

特異なバイアス(偏見)が含まれていることが理解されないままに、

多大な社会的影響力をもって巷間に流布されている現状にあります。

もっとも、上記人気番組でも、この点には注意を呼びかけられていますが・・・

そこで、本書を通じて、メディアリテラシー(視聴覚情報の取捨選別や

分析考察などに関わる判断能力のこと)感覚も養って頂くと、

より冷静な批評眼も磨かれることが期待されるでしょう。

あくまで、当ブログの趣旨は、皆さんにも

ともに考察して頂くことをお勧めさせて頂く点にありますので、

管理人や各著者の見解を丸飲み込みされる必要などございません。

いつもながら、賢明な各読者様のご判断にお任せ致します。)

以上のご留意事項を踏まえつつ、

それでは、本書各章の内容要約に入っていくことにします。

①「第1章 恨まずにはいられない~心理学の視点から①~」

②「第2章 妬みと羨みの心理学~心理学の視点から②~」

※第1章と第2章では、「恨み」「妬み」「羨み」といった

ネガティブ感情に潜む共通感情が生み出されてくる理由について

検討されています。

従来の心理学研究では、「怒り」をテーマにした論考は多いようですが、

『持続した怒り』(本書15頁)である「恨み」に焦点を当てた

論考はあまり見受けられなかったとも指摘されています。

「怒り」は、ある意味で、<瞬間湯沸かし器>のような

ホットな心理感情であるために、

一時的に誘発された興奮感情が治まれば、

心機一転、気分がすっきりすることが普通です。

一方で、本書で考察される「恨み」になると、

長期間にわたって、自他ともの心を痛み狂わせ、

病ませる元凶ともなっていくクールな心理感情であるだけに、

厄介なネガティブ感情となります。

このネガティブ感情を読み解くキーワードとして、

「自尊感情」が取り上げられています。

とりわけ、「自尊感情」の喪失体験が、

後々までの心理感情に影響力を及ぼし続けるものだと

考えられています。

つまり、過去に「自尊感情」が傷つき・傷つけられた「記憶」が、

現在の「行動」をも強く拘束するところに問題の根源があるといいます。

この「記憶」が、「怒り」を生み出し、

根強い「自尊感情」の喪失感覚になると、

「恨み」にまで発展していくことになります。

澤田先生の解説では、こうしたネガティブ感情を伴う「行動」へと

進展させる思考のことを<侵入思考>と表現されています。

アメリカのある心理学者によれば、

「怒り」の目的には、<失われた自尊感情の回復>があると

されています。

問題は、こうした「自尊感情」の喪失体験が、

「個人」レベルから「集団」レベルにまで高まり、強まった場合です。

それが、「代理報復」という名の「集団的いじめ」であります。

この「集団的報復」現象は、国家レベルになると、

極端な異端者排除の論理を生み出し、

特定の民族・人種差別や戦争にも直結することになります。

前にも取り上げさせて頂きましたが、「ナショナリズム」が、

即座に一概な「悪」だと決めつけることは出来ません。

ですが、この「ナショナリズム」には、

「個人」を「集団」へと統合させる機能が含まれ、

集団心理といった「共同幻想」が伴うために、

孤立化した「個人」を大前提に再編されていった近現代社会の

人間観に、強い心理的誘惑を抱かせることにもなる点が、

厄介なところです。

本書では、「ナショナリズム」論と

ネガティブ感情との相関関係に関する

より突っ込んだ議論はされていませんが、

この問題に興味関心がある読者の方には、

冒頭でもすでにご紹介させて頂きました

『脳・戦争・ナショナリズム~近代的人間観の超克~』

(中野剛志/適菜収氏との共著、文春新書、2016年)などを素材に

より思索・検討を加えて頂くことをお勧めさせて頂くことにします。

ただ、管理人自身は、

この別著については、未読状態なのでコメント出来ませんが、

一点だけ、今後考えてみたい点があります。

それは、やはり、20世紀とは異なる形態での

優生(学)論」の復活が懸念されるということです。

このところの「脳科学」の進展には目を見張るものがありますが、

脳を始めとする身体の局所部分を誇張して、

普通「平均」人を基準として、安易な優劣「差別」を助長していくような

社会風潮にまでは、是が非でも進展して欲しくないと強く願う者です。

現代科学の弱点は、未だ、「心」の本体へと迫り切れていないところにあります。

わけても、「心」を機械的に処理する段階に止まっているのが現状です。

今後、「人工知能」と「人間」の協働社会へと進展していく

大きな文明転換の流れにあって、

ますます、注目が集まっていくのが、「心」であります。

管理人自身もですが、自分自身の「心」の揺れ動きにすら

時々刻々と戸惑う毎日であります。

人間は生きていると、何度も「つまずき」を覚えることがありますが、

そんな「つまずき」から何を掴むかで、心理感情も大きく揺れ動くことになります。

「失敗」は、現代の競争ストレスを招く他人との比較評価社会においては、

「敗北」感情を容易に生み出し、それが、「恨み」などのネガティブ感情へと

進展していくことになります。

そうしたネガティブ感情も、本書全編を通じて、強調されていますように、

「正しい」扱い方(付き合い方)をすることによって、

マイナス感情をプラス感情へと「陽転」させる思考へと

導くことが叶います。

それでは、こうしたネガティブ感情をよりマイナス感情へと振り向けて、

自傷・他傷を問わずに、現実的「投影」行為へと

心理を傾けないようにするには、どのような処方箋があるのでしょうか??

この処方箋こそ、本書の「秘伝」でありますので、

ここで、詳細に語ることは控えますが、

一つの「代償」行為として、エンターテイメント(趣味娯楽)の活用が

提案されています。

「なぜ、日本人(だけではなく)人間は、『忠臣蔵』のような

仇討ちモノを好むのか??」

こうした問いにも一つの示唆を与えてくれるのが、

この両章であります。

③「第3章 妬みを感じるとき、脳では何が起こっているのか

~脳科学の視点から①~」

※本章では、「妬み」感情が芽生える背後に控える

脳内現象の諸々について、分析検討が加えられています。

具体的には、「妬み」感情が絡む脳内の各部位に関する知見の

紹介がされています。

また、一般的には、ネガティブ感情とイメージされている

「妬み」感情が、人類の進化の過程で必然的??に

生み出されていったのではないかとの「起原」論にまで言及した

「仮説」から、現代の「脳科学」が、

社会操作手法にも転用されていった事例に至るまで考察が及んでいます。

そこでは、消費者行動や景気操作などの

経済心理を促す多種多様な社会的活用例が挙げられています。

経済心理の絡みでは、

前にもご紹介させて頂いた「情動」がキーワードとなるようです。

このような「情動」に焦点が当てられたマーケット(市場)戦略が、

現代経済を形成しているのが、実状でありますので、

この観点でも、「嫉妬」感情に絡め取られない知恵と工夫が

要請されるところです。

このように、他人との比較優位に立つ「評価」型経済

(昨今、<評価>経済論を語る識者も多々おられるようですが、

<評価>の定義をどう解釈するにせよ、

そこには、何らかの「承認欲求」が絡んできますので、

管理人自身は、これまでの記事でも触れさせて頂きましたように、

相当な疑問点を抱いているのが正直なところです。

そうした<評価>という言葉に付きまとうニュアンスを最大限ごまかさずに、

より一層の建設的な議論を提起して頂ければと、切に願うところでもあります。)が、

現代人の危ういネガティブ感情のスキを突いてきますので、

そのような日常の生活術の点でも、

「嫉妬」感情とうまく付き合う術を学ぶことは

有意義なことであります。

本章では、こうした比較優位をもたらす感情を読み解く

知見として、「シャーデンフロイデ」なる

他人の不幸を喜ぶ、いわば、「ざまあみろ」感情も紹介されています。

そして、「嫉妬」感情が、現代経済に転用されている事例として、

経済論を語らせて頂いたついでに、

第2章でも紹介されていた「累進課税」制度について、

若干程度の私見も提示しておくことにしましょう。

現代、経済「格差」論が、あらゆる媒体で喧しく議論されているところです。

その議論の詳細については、管理人もこれまで、

ご紹介させて頂いてきたところですし、

今後とも、追跡紹介させて頂く予定であります。

ただ、第2章では、人々の「嫉妬」感情をうまく<飼い慣らす>手段として、

経済「格差」を是正させる方法論の一つとして、

「累進課税」制度が紹介されていた(本書58~64頁ご参照のこと)

わけですが、私見では、本書の知見での分析考察とも絡めて

「否定的」な見解を持っています。

なぜならば、この制度自体に、人々の間に、

過剰なまでの「嫉妬」感情を煽り立てる要素が含まれているからです。

その行き着く果ては、階層間の分裂と対立混迷状態の長期化であります。

経済「格差」の是正については、もっと穏やかな方法で、

現在の「累進課税」制度よりも、より公平な制度があるでしょう。

それが、また、近日中に別著のご紹介とともに、

別途、検討させて頂く予定でありますが、

ベーシックインカム」論であります。

今回は、この程度に止めておきますが、

今後のより穏やかな経済改善案を考案していくうえでも、

「嫉妬」感情を駆り立てる現行の諸制度に変わる

経済政策論を練っていきたいものです。

その政策論の素材についても、

今後とも多種多様な書物のご紹介を通じて、

皆さんとともに、より積極的な社会参画のあり方を

探究していこうと思っています。

いずれにせよ、本章での要点は、

「妬み」感情が湧き上がる心理要因などを

冷静に分析する視点を獲得することで、

うまくコントロールしていく姿勢を養っていくところにあります。

④「第4章 正しさにこだわる人たち~心理学の視点から③~」

⑤「第5章 正義という名の麻薬~脳科学の視点から②~」

第4章と第5章では、「心理学」と「脳科学」の

それぞれの観点から分析考察された<正義論>であります。

『「正義(正しさ)」とは、一体、何なのでしょうか??』

その問いに対する解答だけでも、星の数ほどあるでしょう。

「正義(正しさ)」の方が、一見してそれと判別し得る「悪」よりも

不透明であるために、混乱の原因が潜んでいるようです。

特に、本書との絡みでは、

「嫉妬」感情が、「正義」と結びついた時に、

どのような現象が、社会に生起してくるかが問題であります。

先程の「シャーデンフロイデ」現象とも関連する

「ルサンチマン(恨み=復讐感情)」もその一つですね。

「正義(正しさ)」をお互いに、一歩も譲らなくなった時に、

社会に「不協和」が生み出されることになります。

第5章では、「道徳」とも絡めて、この問題が分析考察されていきますが、

通俗的な「道徳」・「倫理」感情が、「正義」に絡むのも、

問題を複雑にするようです。

そのあたりが、最近の芸能スキャンダル問題などを引き合いに

考察されています。

この問題も心理的に複雑かつ微妙な問題であり、

紹介されていた故人による生前のご意思・ご意向が、

真実のところ、

いかなるものだったのかにも関わってくることですので、

第三者である管理人には、

正直なところ何とも批評し得ないところです。

管理人としては、生前に、

この三者間でなされていただろう「合意」事項が、

すべての鍵を握っていたとまでしか推察出来ませんので、

第三者が、推測だけでコメントを出すのは差し控えるのが、

もっとも理にかなった「人の道」だと確信しています。

管理人は、関西人なので、紹介されていた故人の言動に

触れることも多く、時に、個人的には、その言動に、

賛否両論も抱いてきましたが、

基本的には、個人的な親しみを感じていましたので、

冷静にこの事例を考察する限りでは、

中野先生の分析にも賛同するところが多々あります。

いずれにせよ、「ゴシップネタ」には

あまりいい感じがしないものです

それでも、ゴシップ記事に興味関心を惹かれる方が多いのは、

人間の奥底に潜む「嫉妬」感情が刺激されるからでしょうか??

⑥「第6章 愛が憎しみに変わるとき~心理学の視点から④~」

本章では、ストーカー行為など、

現代社会を賑わせる「歪んだ」愛着障害事例が、

心理学をもって、分析考察されています。

「愛」など、いつか「冷める」ものとまでは、

管理人も、「人の子」なので断言など出来ませんが、

人生には、「出会いと別れ」が付きまとうもの。

大切なことは、やはり、執着しない知恵と工夫を

磨き続けることしかありません。

そうは言っても、難しいことですが・・・

本章の結びでもありますが、「嫉妬」感情という

シグナルから何を読み解き、学び取るかが、

今後の人生を左右させることは間違いありません。

その意味では、人間関係での良好な状態を保つためには、

「一期一会」

「親しき者(間柄)にも礼儀あり」を

意識することが大切になります。

特に、親子関係であれば、なおさらのことですね。

「親」という漢字の成り立ちは、

「木の上に立って、見る」というイメージから出来上がったそうですが、

それ位の程好い距離感が、親子関係を良好に保つうえでは、

適切だと、考えられてきたようですね。

それは、友人・知人関係から

先生(師匠)・生徒(弟子)関係、

上司・部下関係に至るまで、

幅広い人間関係に当てはまるようです。

「つかず、離れず」程度に止めておくのが、

その秘訣であるようです。

⑦「第7章 嫉妬の脳科学~脳科学の視点から③~」

⑧「第8章 ネガティブ感情の意味~脳科学の視点から④~」

第7章と第8章では、数々の<芸術作品に見る嫉妬>

(本書169~176頁)などの批評も面白いところ。

究極のところ、

『ヒトはなぜ嫉妬するのか』(本書176~184頁)での

仮説分析(マキャベリ的知性仮説=

ヒトは、複雑な生態系に合わせながら、生存適応していくために、

知性を進化させていったとの見立て)も、なお検討の余地は

ありますが、

ヒトの「心」は、「楽観」的根拠だけでは、

この厳しい自然生態環境の下、

生き残ることが難しかったことだけは、

確かなようです。

そんな仮説(かなり説得力がありますが・・・)から、

ネガティブ感情をなくすことなど、およそ不可能なのでしょう。

というわけで、最終結論は、

なくすことが不可能(とまでは断言できなくとも、かなり難易度の高すぎる)

「妬み」を含めたネガティブ感情と、どう折り合いを付けながら、

有意義に人生を過ごしていくかは、

各自の考え方(心の持ち方)次第だということにあります。

とはいえ、その「脳科学」者ならではの結論として語られていた

『恨みも妬みも嫉妬も、ネガティブ感情を思う存分に燃やして

暴れるのも自由、上手にコントロールして、自己の成長を

図ろうとするのも自由。満足のいくように、最高に優雅な生き方を

自分でデザインして、そのように生きることが、不条理な世界に生まれた

私たちの、その恨みを晴らすためにできる、最大の復讐ではない

でしょうか。』(本書212~215頁)という

<自由な自己世界観のルール設定>を表明するだけでは、

個人的には、「・・・(果たして、それでいいのだろうか??)」という

疑問点も感じられたところです。

もっとも、次章の<対談>最終箇所において、

『その結果は自分で引き受ける』ことを大前提に、

そのようなルール内にて、

『より楽しく生きる方法を見出すのが人間の知恵だと

思います。』(本書240頁参照)と留保付けの見解として

提示されているわけですが・・・

管理人が、そのように疑問に感じられた理由には、

自己内世界観(ルール設定)が自由だと言われても、

現実社会では、他者内世界観との衝突が絶えず生じてくる経験則から

この結論表明には、俄には賛同し難いものがあったからです。

『そんな簡単な結論でいいんだろうか・・・』と。

そうした衝突回避の知恵として、

<最大公約数>的な一般「道徳(倫理)」の役割があるわけですが、

ただ、このような通俗「道徳(倫理)」に対して、

本書で示された理由からの「否定」的見解

(本書232~234頁など)には、

十二分に配慮する余地があるにせよ、

一般社会的に、

ニーチェのような冷笑姿勢でもって、

一概に捨て去りさえすれば済むものなのかどうか、

ここに、

20世紀以来の社会精神病理の発生源が、

相当程度、潜在しているのではないかと

日々実感してきただけに、

強く疑問を感じたのです。

今後の著書では、このあたりの問題点にも、

より突っ込んだ議論を展開して下さればと期待しています。

⑨「第9章 私たちのネガティブ感情とのつき合い方

~対談 中野信子×澤田匡人~」

最終章は、「脳科学」者:中野先生と

「心理学」者:澤田先生による人生体験から導かれた

<私たちのネガティブ感情とのつき合い方>鼎談であります。

詳細は、お楽しみということで、

ここで、管理人も実感させられた人生体験記の一幕から、

特に、「脳科学」者:中野先生のご体験に

より親近感を抱く場面描写もありましたので、

そのあたりを項目を変えて、

最後に、これまでの「心の整理」も含めて

まとめてみようと思います。

特に、自分は、どちらかと言えば、

『<優等生タイプ>型かな??』と思われる読者の方にとっては、

共感して頂けることもあるのではと思います。

一方で、『<優等生タイプ>型ではない』と思われる読者の方には、

不快感を与えてしまうかもしれません。

その点は、決して、一般化したり、

押しつけるような意図などございませんので、

こんな変な!?心理タイプの人間もいるんだと

笑い飛ばしながら、参考程度に読み流して頂くことで、

ご寛恕下されば幸いであります。

いずれにせよ、特に、日本社会には、

「同調圧力」文化が根強く蔓延る風土だと体感してきましたので、

「いじめ問題」などで、ただ今現在、悩み苦しんでおられる方にも、

何が何でも「生き抜く」希望や心の糧となるヒントを

案出していきたいと考えていますので、

どうか今しばらくのお付き合いをご辛抱願います。

ネガティブ感情とうまく付き合うコツとは??

最終的結論としては、「嫉妬」などのネガティブ感情と

うまく付き合っていくためには、

「自尊心」を高める自己世界観設定が、

やはり鍵を握ると強調されています。

その「自尊心」を高めるためには、

自分の得意分野をさらに開拓し、磨き上げ、

少しずつ自信の源を創り上げていく他ありません。

たまたま、本書の共著者である澤田先生や中野先生は、

学者として大成され、世間での大いなるご活動を通じて、

「自尊心」を養うことに成功されたようですが、

特に、中野先生の<対談>などを読んでいると、

<優等生>型であれば、

「あるある」体験をされた方もおられるかもしれません。

ですが、<劣等生>感を強められた方にとっては、

そもそも、「自信」の源が少なく、

「体験値」も恐ろしく低められてしまっていますので、

そんな『生やさしいことなどあるかい!!』

深い憤りの念を持たれる方も多いものと忖度します。

管理人などは、<優等生>型だと強く思い込むことで、

思春期の複雑な「暗闇」の心境を必死で駆け抜け出ようと、

右往左往してきましたが、

比較的「打たれ強い」性格だと思い込みつつも、

心も折れやすい方で、

絶えず、不安定な心理状態に悩まされてきました。

そんな体験を経てきただけに、

現実社会(狭い<学校世間>ではなく)では、

『<優等生>も<劣等生>もあまり関係ないよなぁ~』と

恥ずかしくて身が縮む思いですが、

「大人」になってから、やっと実感することが出来たようです。

そんなことを、同窓会時に語り合ったこともあります。

『みんな、案外、昔の心理状態って、あやふやなんだなぁ~』と

再確認できた有意義な体験でした。

本書では、特に、<優等生>型の場合には、

「見返し」効果などを期待して、一時しのぎの便法とする

擬態行動によって、「思春期」を乗り越えようとする心理事例も

紹介(本書20~22頁)されていますが、

「心理学者」の澤田先生も強調されるように、

そうした「見返り」効果は、長続きするものではありません。

社会に出れば、なおさら、であります。

なぜなら、「上には上がいる!!」ことを、

社会では、否応なく、実感させられるからです。

いわゆる『井の中の蛙、大海を知らず』状態のことです。

そういうこともあり、

意外にも、人生の早期である少年・青年期に、

「挫折体験」をたっぷり味わっている<劣等生>型人間を

自認される方のほうが、

社会に出てからの「伸びしろ」が大きいようです。

『大器は晩成する』とも言いますしね。

こんな風に、誤解を恐れずに、

<優等生>型だとか、<劣等生>型などと区分けして語ってきましたが、

こうした区分も、日本の特殊な教育事情によって、

色分けされてきたものであります。

その意味では、どちらのタイプであろうと、

苦しい心の内であることには変わりありません。

そこが、現代日本教育の最も「罪深い」闇部ではないかと

思われてなりません。

全体的に、「世間体の良い」金太郎飴のような人間形成を

志向する傾向が好まれてきたせいか、

先程来から語ってきました<優等生>・<劣等生>と

区分する差別感情も

人工的に生み出されたものでしかないようです。

『そんなネガティブな心理状態を生み出す教育土壌など

もう、ここいらで打ち止めにしましょうよ・・・』

そんなことを、

<対談>内でのテーマ『異質な人に対して寛容な社会』(本書234~

238頁)を読み進めながら、考えていました。

話は逸れていくようですが、

ネガティブ感情が生み出される源泉には、

このような根深い<心的外傷>が関わっているだけに、

その付き合い方には、慎重でなくてはなりません。

本書での各章におけるネガティブ感情との付き合い方の秘訣の

共通項は、冷静に心理状況を分析考察しながら、

「常識」感覚を再解釈し直す処方箋の提示あります。

ある種の「論理(行動)療法」のようなものです。

誰しも、「無意識」下にあるイヤな心理感情を

故意に思い出す方法論など試したくなるものではないですよね。

管理人も、その点は、十二分に理解しているつもりです。

ですが、たとえ、イヤな心理感情が湧き出てきたとしても、

一度は、冷静に、「心の整理整頓」をしておかないと、

いざという時に、自傷行為や他傷行為に及んでしまうなど、

社会的にも、深刻な事態を招きかねません。

ですから、語り合いやすい人間関係を日頃から構築されてこられた方には、

「対話」型の心理哲学問答方式で、

相互の「心内」交流をより深められながら、

「自尊感情」をより良き方向へと高める機会を増やしてみるのも

一興でしょう。

「冷めない程度にね・・・」

あるいは、

周りに、あまり気軽に相談出来るような人間環境にない方の場合であれば、

これまでも、お薦めさせて頂きましたように、

日々の「心象風景スケッチ」としての

「内観日記」を始めてみませんか?

「書くこと」は、相当なストレス「浄化」作用があります。

是非、試してみて下さい。

特に、「万人」につながるインターネットブログ方式だと、

より慎重な形で、自らの心の内面を見つめつつ、

自分自身の「心の整理整頓」につながるだけではなく、

同じような悩みを抱えている誰かの役に立てるかも知れません。

もっとも、「自意識」過剰は禁物ですがね。

(管理人も、日々、難しく感じるところです。

<表現>って、なんて難しいんだろう・・・)

それでも、管理人も友人知人の薦めもあって、

始めてみました。

ちょうど1年ほどになりますが、

やはり、未知の方とのご縁が出来るなど、

日常生活での人間関係にも張りが出てきて、

「自尊心」回復効果が、少しずつ出始めてきたようです。

プロ作家として大成された方は、

ほとんどすべての方が、自らの「恥部」を

恥ずかしがらず、世に提示して、

他者(読者)の共感をも勝ち得ることが叶った人間です。

そのような先人に、管理人も勇気と知恵を借りながら、

日々、精進させて頂いています。

ですから、読者の皆さんも、

独自の世界観を恐れずに、披露されてみると、

意外な展開が待ち受けているかもしれませんよ。

本当に、世の中には、多種多様な人間がいることに

気付かされることにもなりますから・・・

もちろん、こうした日々の成長には、

スポンサーや読者の皆さんなど、

すべての方のおかげです。

本当に、心より、篤く御礼申し上げます。

ということで、これ以上語ると、「饒舌癖」に、

より一層拍車が

かかってしまうことになりますので、

今回は、このあたりで止めておきましょう。

追々、少しずつ、語り合っていきましょう。

本書のタイトルこそ、おどろおどろしいですが、

内容は、しっかりとまとめられていて、

また、複数の学際的視点を取り入れつつ、

ネガティブ感情とのうまい付き合い方が、

多角的に紹介されていますので、

是非、皆さんにもご一読されるとともに、

皆さん独自のネガティブ感情対処法を

編み出して頂くことをお薦めさせて頂きます。

なお、「自尊感情」回復のヒントとして、

『英雄の書』(黒川伊保子著、ポプラ社、2015年)

※黒川伊保子氏も、「脳科学」の立場から、

自尊感情を回復させる「秘伝の書」をお書きになっています。

「自尊感情」を回復させる、

何よりの第一歩は、<被害者意識>を捨て去るように

努めることです。

本書では、「失敗」を「敗北感」へとネガティブに捉えない

姿勢や考え方について、エッセー形式で語られています。

また、「自尊心」研究で知られる

アメリカのベストセラー作家の著書3部作として、

『うまくいっている人の考え方 完全版』

(ジェリー・ミンチントン著、弓場隆訳、ディスカヴァー携書、

2015年第36刷)

『心の持ち方 完全版』

(同上、2015年第8刷)

『自分の価値に気づくヒント』

(同上、2016年第2刷)

をご紹介しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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4 Responses to “中野信子/澤田匡人先生の「正しい恨みの晴らし方~科学で読み解くネガティブ感情」人生の貴重な時間を奪われないために!!”

  1. ahn motoko より:

    はじめまして。

    多元宇宙をキーワードに、ネット検索していたら、ここを見つけました。

    安心して読み進められて、とても有り難い内容でしたので、お礼と感動をお伝えしたく、メッセージしました。

    ありがとうございます❗
    ahn motoko

    • がっきー より:

      ahn motoko 様

      こちらこそ、
      無数に煌めくインターネット情報サイトの中から、
      当ブログへとご来店頂きありがとうございます。

      「多元宇宙論」については、
      今、モーガン・フリーマン氏による
      NHKの人気番組がありますね。

      特に、上記人気番組との連動を
      狙っているわけではありませんが、
      現実の表世界では、相変わらず、
      「一元化」志向にある流れの中で、
      人類が、少しでもそうした隘路から抜け出すヒントを
      提供してくれるのが、
      「多元宇宙論」の長所です。

      今後とも、このテーマを、
      多角的な視点から追跡していきますので、
      ご愛顧のほど、宜しくお願い申し上げます。

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