「ミドルワールド~動き続ける物質と生命の起原~」を読み、「マクロとミクロの結び目」に注目しよう!!

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「ミドルワールド~動き続ける物質と生命の起原~」

1827年6月のある日、ロバート・ブラウンという

植物学者がある運動を発見します。

後に「ブラウン運動」と呼ばれる科学的発見です。

現代、科学界の最先端では驚異的なスピードで

技術革新が進められています。

しかし、今もって「生命の起原」にまでは、たどりついていません。

「マクロ」と「ミクロ」の分野については、21世紀までに

相次ぐ発見がされていますが、「ミドルワールド」については

未知のままです。

実は、ここにこそ「生命の起原があるのではないか?」と

着目されているようです。

今回は、この本をご紹介します。

「ミドルワールド~動き続ける物質と生命の起原~」     (マーク・ホウ著、三井恵津子訳、紀伊國屋書店、2009年)

マーク・ホウさん(以下、著者)は、英国ノッティンガム大学の物理学者です。

ここ最近は、物理学者にあまり注目されてこなかった

「ブラウン運動」について研究されているようです。

世界的に定評のあるサイエンス雑誌である

「ネイチャー」誌や「フィジックス・ワールド」誌に物理学や科学に関する記事、

小説まで精力的に発表されてきたという異色の物理学者でもあります。

当ブログでは、これまでも数々の理系分野の書籍もご紹介させて頂きましたが、

現代物理学の大半が「マクロのニュートン・アインシュタイン型物理学」

もしくは、「ミクロの量子力学」といったように偏って研究が続けられているようです。

「生命は物質から生まれるのか?」

最近は、物理学・化学・生物学などの境界域で同じような「仮説検証」が

なされているようです。

地球上において、「いかに生命は誕生してきたのか?」を

探ることは「宇宙の誕生」を解明していくためにも避けては通れないようです。

著者は、忘れられた偉大なスコットランドの植物学者ロバート・ブラウン

発見したという「ブラウン運動」に着目して「いのちの生成過程」を

研究されておられます。

面白いことに、「ブラウン運動」は有機物(生命体)だけに固有の現象ではない

ところから、上記の問い「生命は物質から生まれるのか?」が出現してきたことです。

今まで、数々の物理学者や生物学者が、「生命の誕生のシーン」について

追究してきましたが、どうも今ひとつ焦点が合っていないそうです。

ほとんどの学者が、いきなりマクロかミクロから迫ろうとして

その「中間場」については軽視している嫌いがあります。

「いいところまで迫りつつあるのに、惜しい!!」

そんな感じがするとも、著者の語り口からは読み取れるようです。

そこで、あらためて「ミドルワールド=中間場」に研究場所を

再設定し直して解明していこうとするのが、著者の立場です。

「ブラウン運動」

当初、花粉の動きだけがランダムに動くことから「不思議な動きをするなぁ~」と

思われるくらいで、多くの研究者からまったく無視されていたといいます。

ところが、1827年の発見から約80年後。

1905年にアインシュタインの三大発見がされます。

①特殊相対性理論

②光量子理論

ブラウン運動に関する再発見

です。

このうち、①②は「世紀の発見」とされましたが、

③については地味なのか忘れ去られていたようです。

20世紀中頃になり、相次ぐ「分子生物学」などの新発見から

ようやく「生命の起原」が本格的に語られ出しました。

そこで、ほとんどの学者がミクロから攻めていくのですが、

マクロとの整合性がつかず、攻めあぐねる状況が続いているようです。

そんな状況下で、あらためて「再認識」されたのが「ブラウン運動」でした。

マクロのニュートン力学や応用されていったアインシュタインの熱力学、

ミクロの量子力学だけでは、どうしても説明がつかない現象・・・

それが、「ブラウン運動」でした。

マクロ・ミクロどちらにもつかない「謎の動き」

実は、ここにこそ「生命の誕生のシーン」があるのではないかと、

仮説を立てて検証しているのが、著者です。

主流の科学研究(教育)から長い間放置されてきた「ブラウン運動」に

ついては、あまりわかりやすく解説された良書もなさそうです。

この本は、「ブラウン運動」だけでなく、19世紀から現代に至るまでの

「科学研究の成果」とそれにまつわる「人物の物語」としても読めます。

「知られざるミドルワールド」を探求していくことで、皆さんにもお役に立つかと

思い、今回はこの本を取り上げさせて頂きました。

落ち着きのない生命??

まず、最初に「生命は物質から生まれるのか?」ということが

大きなテーマとなります。

前にもご紹介させて頂いた「こころや意識の生成過程」については

今回は省略させて頂きます。

現在の最先端の宇宙物理学者ロジャー・ペンローズは、「微小管仮説」で

語っていたことを覚えていらっしゃるでしょうか?

その時にも、少し触れましたが「意識の流れ」については、水を触媒にして

脳細胞内でのやりとりを生物学の知見などを借りながら説明していましたね。

細胞内の各種物質のうち「タンパク質」や「分子モーター」が

ここでの「ミドルワールド」で活躍してくれる物質です。

「直接物質から意識(こころ)が生まれるか?」については、哲学的な論争も

ありますが、今回は保留しておきます。

あくまで、ここでは「物理(化学)的生物学の視点」に徹して

「動き」に迫りたいと思います。

それによると、細胞膜内では様々な動きが発見されてきたようですが、

生命の動力源ともされる「タンパク質エンジン」が、この本でも

「ブラウン運動」との関連で話題になっています。

これによると、「落ち着きがない生命の様子」が散見されるようです。

ここで、「ブラウン運動」が重要な視点になるようですが、

マクロ物理学の熱力学体系では、「熱力学の第二法則」にも抵触し、

ミクロ物理学の「統計的な観測」とも一致しないために、

不思議な「動き」だとされています。

しかも、この「落ち着きのない生命の動き」は、規則性とランダム性を

絶妙に調整をしながら「設計」されているという驚くべき知見が

得られました。

盲目的な意志で動く生命VS調整された世界の中で動かされる生命??

このミドルワールドは、実に楽しく様々なことを考えさせる

素材を提供してくれます。

哲学でも、19世紀末から20世紀にかけて「生命哲学」が

さかんでしたが、前者の「盲目的意志説」が有力で

「優生学的な」進化論とも相まって、ダーウィンの想定外のところで

悪用されていった悲しい過去がありました。

一方、今回この本で学ばせて頂いたことは、

「生物の動きの原初形態」は、絶妙に精密化された均衡状態の中で

動かされているようだ・・・との知見でした。

一見すると、個々においては「落ち着きがない」とされていても、

大きな視点で見ると、「正確な動き」をしている・・・

なんと、調和されているのでしょうか?

思わず、感嘆の笑みがこぼれました。

いずれにしろ、「ミドルワールド」の解明はまだ始まったばかりのようです。

が、ここまでの研究で解明されてきたことをまとめると

「世界は秩序化された混沌の中に存在する!!」ようです。

なかなか面白いテーマでした。

この辺りの知見を活用しながら、あらたなSF小説が描かれれば面白いなぁ~と

思います。

どなたか、挑戦して頂きたいものです。

生命倫理の問題も含め、「禁断の果実に手を触れた」と言われる「現代科学」・・・

科学の平和利用には、未だ険しい道のりもあるようですが、

前回ご紹介させて頂いたライプニッツも

「宇宙は、最高善へと向かう可能的世界」と信じて、「科学探究」されていました。

人類の知性が導く先は、「善か悪か?」

いずれに向かうかは、私たちの「集合叡智」にかかっています。

皆さんも、この「ミドルワールド」を読みながら考察してみませんか?

きっと、これまでにない興奮を味わわれることになるかと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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4 Responses to “「ミドルワールド~動き続ける物質と生命の起原~」を読み、「マクロとミクロの結び目」に注目しよう!!”

  1. […] (なお、「ミドルワールド」については、こちらの記事もご一読して頂けると幸いです。) […]

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