塩川徹也先生の「発見術としての学問~モンテーニュ、デカルト、パスカル」人間は「誤謬と偏見の塊」!?

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「発見術としての学問~モンテーニュ、デカルト、パスカル~」

フランス文学・思想がご専門の塩川徹也先生が、

16世紀から18世紀にかけて活躍した

フランスのモラリストの思想を紐解きながら、

「学びて常に問い続けること」の意義について、

解説されています。

「人間は、なぜ学問する必要があるのか??」

それは、「人間とは、常に誤謬と偏見の塊」だと

意識して「よく生きる知恵」を学ばなければならないから・・・

今回は、この本をご紹介します。

「発見術としての学問~モンテーニュ、デカルト、パスカル~」(塩川徹也著、岩波書店、2010年)

塩川徹也先生(以下、著者)は、フランス文学・思想がご専門の

学者です。

特に、モラリストとされるパスカルの哲学思想を中心に

研究されてこられたようです。

「人間は考える葦である!!」(パスカル)

という言葉は、あまりにも有名ですが、その「真意」は

意外にも知られていないようです。

この本では、3人のフランス人思想家から

「学問の意義とよりよく生きる術」についての考察が

軽いエッセーの形式で展開されていきます。

モンテーニュの「エセー(随想録)」

デカルトの「方法序説」と「第4省察」

③パスカルの「パンセ」(未完の断章のみ残る)

を教材として、

横断的に「人間の思考とその限界」について考察していきます。

いずれも、「人間はなぜ学び問い続ける必要があるのか?」に

対する「省察」でもあります。

これらの考察に触れながら、読み進めていくと、

否応なしに「人間は、常に誤謬と偏見まみれの生き物」だということに

あらためて気付かされます。

「私たちは、見栄や欲望のためにのみ学ぶわけではない!!」

という、現代社会教育事情では

見事なまでに無視されてきた「本来の学問の意義」についてです。

この本で学んだことの、一番の意外性がデカルトでした。

デカルトは、近代科学を開拓していくうえで「判断の明晰性」について

考察していくのですが、その「最重要テーマ」が「人間の誤謬性」でした。

これから触れていきますように

「モラリスト」とは、英語では「道徳家」の

イメージがありますが、必ずしもそのような「狭い枠」には

当てはまらない人々のようですね。

古代ギリシア以来の良知(叡智)に触れながら、

「よりよく生きる術」を学び問い続けながら探究していったのが、

「モラリスト」の人々だったようです。

いわゆる「良識的懐疑主義」の立場から、熟慮と研鑽を重ねながら

「よりよく生き抜く術」を磨いていきました。

管理人は、前にも触れましたが「現代フランス哲学思想」には、

あまり興味を惹かれることはありませんが、

フランス啓蒙思想以前の「黎明期」における

これらの「モラリスト文学」からは、多くのことを学んできました。

まだ、「哲学と宗教が渾然一体」となっていた「近代の夜明け前の息吹」には、

胸躍らせるものがあったようです。

フランスの作家サン=テグジュペリにも、そんな伝統的な「良心」が

深く根付いていたようですね。

なお、サン=テグジュペリの「星の王子さま」については

こちらの記事もご一読下されば幸いです。

21世紀現在、世界は再び未明混沌の状況に入りつつあります。

そうした混沌とした時代には、「明確な正解」は

あまり役立ちそうにもありません。

だからこそ、

「学問の原点に立ち返って、問い直す必要があるのです・・・」

そのことを通じて、「学ぶ歓びと倫理」を体認・体得していく習慣を

養って頂きたいと思い、この本を取り上げさせて頂きました。

もちろん、管理人もご一緒に学ばせて頂きます。

人間の独断と偏見(誤謬)は、ホント厄介な存在ですね・・・

管理人も「言葉を扱う文筆家」なので、心しなくてはいけない

重要なテーマですが、どうしても

「世界を完全に記述することは出来ない・・・」ようです。

不十分な理解や、独断や偏見といった「誤謬」から免れることは

難しいのが正直なところです。

そんな時に、「判断の明晰性」について問い続けたデカルトの

「方法序説」などに触れると、いかにデカルトを誤読してきたことかと

暗澹たる思いに駆り立てられることもしばしばです。

「正確に手順を踏み進めながら問い続ける方法論」は、

何もプロの学者でなくとも学びたいものであります。

「それでも難しい!!」のが、「痛いところ」ですが・・・

言葉もそうですが、言葉になる以前の「イメージ像」にも

「盲点」があります。

いわゆる生まれながらにして持つとされる

「先験的な記憶(イメージ)」が、

どこまで存在しているのかは、分かりませんが、

生まれてからこのかたの「後天的」な経験学習にも

難点が含まれているようです。

「言葉もイメージも、あまりにも人々の手あかでまみれている

ためか、正確な記述は不可能!!」のようです。

こうなってくれば、自分の「認識像」にどこまでの責任があるのかも

心許なくなってきます。

とはいえ、「責任倫理」を回避するクセを付けてはいけないのですが、

「自らの無知」に気付くことは、大変意味のあることです。

そうした「重要な気づき」を常に指し示してくれる思想家が、

モンテーニュでありパスカルでもあります。

モンテーニュの「エセー(随想録)」は長編ですが、週末の晩などに

深く味わいながら読むのも「乙なモノ」です。

パスカルの「パンセ」は、未完のまま作業中断となった

文字通りの「断章」のようですが、こちらもいろいろ考えさせてくれる

エッセーのようですね。

何はともあれ、人間は誰しも「独断と偏見(誤謬)」を抱え込みながら

生きていくしかない「悲しい存在」のようなので、少しでも「己の無知」

を自覚しながら倫理的に「よりよく生きる」ためにも、

学び問い続けなくてはなりません。

知らざるを知らずと為せ!!

この点は、前にも当ブログでご紹介させて頂いた

前田英樹先生の「パスカル論」でも学ばせて頂きましたが、

「人間は考える葦」(パスカル)という格言は、

その人の現況によって実に「伸縮自在な世界観」をこの短い言葉で

表現しているようですね。

ソクラテスが示唆したとされる「無知の知」の自覚こそが、

本来の「哲学(学問)の叡智であり秘密」でした。

パスカルもその「重大な叡智」をあらためて示唆しているようです。

「人間は、一生かけても世界のすべてを記述し尽くせない!!」

この自覚こそが、人間の尊厳を支えています。

一人の人間だけで、世界のすべての諸問題を解決出来ないからこそ、

協力しながらお互いの「盲点」を補完するような構造になっているのでしょう。

そして、無限の世界の中において、

人間は「有限な存在」でしかないことを自覚させるのも「学問の意義」です。

「学問」・・・

それは、「常に試行錯誤しながら学び問い続ける方法論」です。

パスカルの格言は、「独立の精神」でもあります。

「独立」と言っても、「人間は一人だけで自足し続ける」ことは、

もとより不可能ですが、

「自律(自分を律しながらよりよく生き抜こうとする工夫)」は、

「我が身一つでも可能」です。

「可能というよりも、やらざるを得ません!!」

有限な身である人間にとって、世界をすべて記述し理解し尽くすことは、

魅力ある願望ですが、それは「分不相応な願い」でもあります。

「世界の様々な断片を、あらゆる角度から絶えず記述し直す」ことでしか

人間は生きることは出来ないようです。

「ある現象を各人が別々の立場から描写している」

また、「ある現象を何度も別の表現や他人の力を借りながら描写している」

とでも考えることで、人間は常に「誤謬から免れることは不可能!!」と

自覚しながら生きることが、「世界の破局」を回避する道でもあります。

管理人は、「地味でも根暗でも誤解されながらでもまっすぐに一生懸命」

生き抜こうとする人間が好きです。

「短い人生、お互い些細なことで論争したり争っても意味のないこと」だと

心底から思わずにはいられません。

「学問に王道はなし」と、古今東西の賢者も語ってきましたが、

管理人もこの言葉を噛みしめながら歩んでいきたいと思います。

「役に立つとか役に立たないとかは、即席に判断出来るものではありません」

現代社会では、人々の不安やおそれを煽り煽られながら、欲望を刺激する

モノ・コトであふれている中で、まっとうな叡智を皆さんにお届けしたい・・・

「発見術としての学問」

管理人は、フランス文学・思想の専門家ではありませんので、あまり深い「学識」は

ありませんが、皆さんも「その時、その場」の「等身大」で自由に思索なされては

いかがしょうか?

「さすれば、この3人のフランスの賢者が、何かしら知恵を授けてくれるじゃろう・・・」

いずれにしろ、この世に「即効性のある叡智などない!!」ということを

真面目に受け取ることから、始めましょう。

ということで、今日はこの辺りでお開きにします。

なお、モンテーニュ、デカルト、パスカルの個別の作品を

読んで学びたい方は、管理人もお世話になっている

「世界の名著」(中央公論社)が、比較的コンパクトで

宜しいのではないかとお薦めさせて頂きます。

もちろん、各人の好みもあるかと思いますので、

読者の皆さんにとって読みやすい本を手に取って頂くのが

「ベスト!!」だと思います。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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