下條信輔先生の「サブリミナル・インパクト」情動と潜在認知の現代社会における新たな人間観とは??

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「サブリミナル・インパクト~情動と潜在認知の現代~」

知覚心理学・認知神経科学の第一人者である

下條信輔先生が、現代社会における「あらたな人間観」を

問うている意欲作です。

過剰なまでの情報経済社会が、21世紀の特徴です。

「私たちは、知らず知らず操作洗脳されている!?」

意識しても防ぎきれないのが、無意識反応の恐いところ・・・

現代社会で賢く生きていくための知恵とは??

今回は、この本をご紹介します。

「サブリミナル・インパクト~情動と潜在認知の現代~」   (下條信輔著、ちくま新書、2008年)

下條信輔先生(以下、著者)は、知覚心理学・認知神経科学が

ご専門の「潜在認知」の第一人者として著名な研究者です。

独立行政法人・科学技術振興機構「下條潜在脳機能プロジェクト」

研究統括などを務め、脳による情報処理の大半を占めるとされている

潜在意識下の知覚研究を継続的にされておられます。

一般向け著書には、

『サブリミナル・マインド~潜在的人間観のゆくえ』

(中公新書、1996年)

『<意識>とは何だろうか~脳の来歴 知覚の錯誤』

(講談社現代新書、1999年)

などがあります。

さて、現代社会では、私たちの自由行動を意図せぬ

方向へと誘導する仕掛けが、あらゆるところに

張り巡らされています。

自由意志に基づく合理的意思決定者としての

人間観も、古くなってきているようです。

一方では、法制度や、政治経済制度など、

今でも「旧人間観」に基づく思想で、「表向き」は

形成構築されています。

ところが、現実には、そうした「表向き」の社会理念とは

異なり、各界で「裏向き」の心理的情報操作もなされています。

そのことは、多くの方々の啓蒙活動を通じて、

内幕が暴露されてきています。

しかし、ここからが、残念なことですが、

どうやら知識として知ってはいても、身体反応は

また別のようです。

「知っていても防ぎきれない!!」ということです。

意識と無意識の境界には、さらなるグレーゾーンもあることが

著者などの最新研究で知られるようになってきました。

そのことで、現代教育における「暗黙知」活用法や、

従来型の「才能観」にも変化が生じてきています。

意外にも、天才と凡才は、紙一重かもしれない・・・

そんな「希望」もある反面、大きな違いも

依然として残されているようです。

21世紀に入ってからは、人工知能研究も日進月歩の動きを

見せてきましたが、人間の脳については、未知数として

謎に包まれた存在であります。

例えば、どのようにして「ひらめき」が創造されてくるのかなども

その経路は、明確にされていません。

本書は、そんな脳内反応の謎に迫りながら、現代社会における

潜在脳に働きかける仕組みに警戒を持つことや、

意表をつく脳の使い方のヒントが示唆されています。

とはいえ、一般的な「サブリミナル効果」の悪い側面だけに

偏重した、現代文明批評の「啓蒙書」の役割だけに限定されません。

著者の一連の研究からは、

「感情(心)よりも情動(身体)反応が先」との知見も得られたようです。

ということで、皆さんにとっても、

そんな「情動反応」のあれこれを学ばれることは有意義だと思われますので、

この本を取り上げさせて頂きました。

感情(心)以前に、情動(身体)が知覚反応するとの仮説

この点は、前にもご紹介させて頂きました

本書の巻末参考文献でも示されている

『感じる脳-情動と感情の脳科学 よみがえるスピノザ』

(アントニオ・R・ダマシオ著、田中三彦訳、ダイヤモンド社、

2005年)でも、本書と似た「仮説設定」がされていました。

従来型の人間観では、「心身一体型」の人間像のうち、

「心身二元論」でとらえるようなデカルト的分析でも、

「心=理性(意識)が、身体=情動(無意識)を制御している」とする

見方が優勢だったようですが、

現代脳科学の知見では、異論も続出中であります。

確かに、こうしたデカルト的分析論で考察するまでもなく、

直感的には、おそらく現代脳科学のような「情動(知覚)反応」が

優位になって、情動反応が働いているとは、人類も薄々感づいていたようです。

ただ、そのような「具体的証拠」を明確に示すことが難しかったために、

混乱していただけなのかもしれません。

そのことは、前にもご紹介させて頂きました「ヒトの心の進化理論」などから

考察していても、実感されます。

人類史は、「狩猟採集時代→農耕牧畜時代→工業産業時代→情報産業時代」

というように進化発展してきたことを観察してみても、明白です。

情動(身体)重視生活から理性(頭脳)重視生活へと大きく進化発展してきたからです。

とはいえ、脳内神経回路は、意外にも「本能的原始脳が優位!?」なのでは

ないかとの知見も提出されています。

知性(心)による感情反応よりも、より身体に親しい情動反応が出てくるのも

そのことを補強しています。

「病(身体反応)は、気(心)から」とも言われるように、

相互作用(順不同)も考えられますので、こうした「情動(身体)優位仮説」も

「真説」とまでは言えないようにも思われます。

上記の人類史から判断すると、間違いなく「言葉(理性脳=左脳)」よりも、

「知覚反応(情動脳=右脳)」の方が、先発達してきたであろうことも

推測出来ます。

本書では、こうした人類史からの考察は解説されていませんが、

現在では、「意識」よりも「無意識」の領域が広いのではないかとの

研究結果も提出されています。

しかも、その「意識」と「無意識」双方の境界領域もグレーゾーンであり、

ある種の「スペクトル反応(虹の光彩のように、段々と深層意識から

表層意識へと伝達されるイメージです。)」が生起してくるようで、

脳内神経回路の謎は、未開拓分野でもあります。

いずれにせよ、確率統計的なデータとともに、「無意識領域(潜在脳)」へ

働きかける操作手法が、現代社会では、様々な分野で活用されてきたのは

間違いありません。

そのため、私たちは、「意図せずして操作されている!?」との疑念も

しばしば湧き起こってきます。

政治では、選挙対策に・・・

経済・文化では、マーケティング対策に・・・

「善用」どころか「悪用」されているのではないかとの見方も強まるばかりです。

意外に、私たちの「自由意思」判断能力を活用できる領域は

狭いのかもしれないとも、日々実感されているところです。

本書の知見では、「理性は、情動に負ける」との観点から、

「無意識には、意識で対抗」する戦術よりも、

「無意識には、意図して??無意識で対抗」する戦術など、

「マクドの賢い客」などの事例を取り上げながら、面白い「処世術」も

解説されています。

まとめますと、本書の内容は、狭義の「サブリミナル効果」だけではなく、

広義の「サブリミナル・インパクト」にまで視野を広げつつ、

それぞれの「長所」「短所」をバランスよく考察されています。

その知見を、幅広く学び取ることで、「賢く生きるためのヒント」も

得られるようになっています。

「暗黙知」の活用法と創造力養成法

著者は、「暗黙知」についてもマイケル・ポランニーなどの

知見を紹介しながら解説されています。

「暗黙知」は、「言葉でうまく伝えられない知識を、

いかに表現しながら、他者に伝達していくべきか・・・」など

主に、教育研修技術として取り上げられることが多い「難問」であります。

「暗黙知」も「潜在認知」と関連するだけに、

未だ研究成果としては「氷山の一角」しか現れ出ていないようです。

このことに関係してくるのが、「創造力養成法」です。

著者の研究者体験から、「才能が引き出されてくる過程」についての

観察から得られた知見も紹介されています。

それによると、従来の「才能観」とは、

まったく違う様相も見えてきたようです。

昨日の記事でご紹介させて頂いたチャンドラセカールの

「ブラックホール発見」ではないですが、

まったく、日頃からの粘り強い「試行錯誤」なくしては

「ひらめき」が創出されてこないことも判明してきているようです。

「才能」に関しても、「個人特殊能力神話」に根強いものがありますが、

どうやら、こうした認識も改める必要がありそうです。

「個人的才能」だけではなく、「社会環境」も重要だということも

理解されてきましたし、そうした「ひらめき(創造的新発見)」も

「社会的承認手続き」に左右させられるからです。

ある一定の「社会的承認」が得られなければ、それが、

たとえ「独創的発見」だとしても、永遠に無視されてしまう恐れも

つきまとうからです。

そのあたりの、「創造性」と「暗黙知の海」については、

本書でも最大ポイントですので、ご一読下さいませ。

「創造的新発見のヒント」としては、日頃から「雑学的知的好奇心」を

持ち続けることや、「ひらめき」を「見える(視覚)化」して

記録保存しておき、常に「連想ゲーム」を楽しむクセ付けなどが

大切になってくるようです。

このように、本書を読み進めながら、「情動反応」や「潜在認知過程」などを

学ぶことで、日々の仕事上のアイディア発見にもつながるヒントとなることでしょう。

本書は、あくまで、こうした「学問上の知見」から得られた

「一般向け知的啓蒙書」であり、直接的な「実用書」ではありませんが、

政治経済を始め、「情動と潜在認知の現代」を知る上では、役立ちます。

まとめますと、

現代社会の問題点は、「無(潜在)意識が、(顕在)意識を制御している」と

いう知見を積極活用させた様々な「情動操作装置」が働いているということです。

普段の私たちは、「意識」して「自由な選択的意思決定」をしているものだと

「確信」しながら生きていますが、この考えも改めなくてはなりません。

知らず知らずのうちに、周りから「潜在脳への情動操作」が試みられています。

確かに、そのような操作手法も、「悪用」とばかりは言えないでしょう。

「善用」についても、本書では語られています。

ですが、こうした「善用」か「悪用」かの判断も、「潜在脳への働きかけ」で

あるだけに、判別が出来ない点に、一抹の不安も感じさせられるところです。

そういうこともあって、私たちは、現代社会に特有の過剰情報からは、

なかなか脱出するのが困難であります。

「ビッグデータ」や「マイナンバー」も思わぬ使い方がされるかもしれません。

決して、皆さんに不安を与える意図はありませんが、

このような「潜在脳」に積極的に働きかけられる現代社会だからこそ、

思慮深くありたいものです。

本書は、そんな皆さんにとっても、一助となってくれる好著ですので、

是非ご活用して頂きますよう、お薦めさせて頂きます。

なお、「潜在脳」については、

「錯覚の科学~あなたの脳が大ウソをつく~」

(クリストファー・チャプリス、ダニエル・シモンズ共著、

木村博江訳、文藝春秋、2011年)

また、「ビッグデータ」については、

「ビッグデータの罠」

(岡嶋裕史著、新潮選書、2014年)

さらに、「マインドコントロール抑止法」については、

「マインド・コントロール」

(岡田尊司著、文藝春秋、2012年)

「思考停止という病」

(苫米地英人著、KADOKAWA、2016年)

をご紹介しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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