都甲潔氏他の「自己組織化とは何か~第2版」自分で自分を作り上げる驚異の現象とその応用から学ぶ「有機的世界観」

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「自己組織化とは何か~第2版」

自分で自分を作り上げる驚異の現象とその応用。

「自己組織化」のことですが、

ここに、人間が機械(人工知能・生命など)との

共存関係を見出していくヒントがあるようです。

その要点こそ、「機動力」であります。

また、本書から、人間の「自己組織化作用」が

最先端技術に応用されている現状について

詳しく知ることができます。

今回は、この本をご紹介します。

「自己組織化とは何か~第2版 自分で自分を作り上げる驚異の現象とその応用」(都甲潔他共著、講談社ブルーバックス、2009年)

本書は、「自己組織化」について解説された理系啓蒙書であります。

本書より9年前に上梓されていた前身に当たる「初版」を、

この間におけるナノテクノロジー(極小レベルの技術)や

コンピュータ情報技術の飛躍的な発展などを取り入れるなど、

全面的な見直しのうえ、書き下ろされたものです。

今回は、いつもとは異なり「一般向け学術的啓蒙書」のご紹介ですが、

取り上げさせて頂いた趣旨は、他でもありません。

これまでご紹介させて頂きました

現在進行中の「人工知能開発研究」や「脳科学研究」、

「情報ネットワーク(サイバネティックス)研究」などに

共通する一つの共通項「自己組織化」について、

ここで一度、頭を整理整頓しておきましょうということです。

「自己組織化とは何か?」

それは、言葉どおり、

「自分で自分を作り上げる現象」でありますが、

生物にとっては、絶対に欠かせない性質であります。

本書でも詳細に解説されている生物細胞や粘菌の「自己増殖」を

イメージすると理解しやすくなるかと思われますが、

この「自己増殖機能」が自身に予め備えられているからこそ、

「生きる」ことが実現出来ている訳です。

そんなの「当たり前だ!!」と思われるかもしれませんが、

この「自己増殖機能=生命維持装置」が、正確に働いてくれているから

こそ、私たち人間も有り難く生かさせて頂いているのです。

まさしく、「有り難い現象」ですね。

一方で、熱力学第2法則「エントロピー増大の法則」も

最近よく一般にも知られるようになってきたようですが、

こちらも最新の研究では、あまりにも「超常識すぎる!!」ためか、

逆に理解も困難なようです。

この「自己組織化」と「エントロピー増大の法則」は、真逆の働きを

していますが、生物だけに限らず、この自然界にはなくてはならない

「物理的動態作用」であります。

これらは、21世紀の「科学革命」とされる「複雑系科学」の分野に

積極的に組み込まれながら研究されているテーマでもあります。

現在は、この「複雑系科学」から、さらなる未知の「世界観」まで

構築しようと試行錯誤している段階にあります。

とはいえ、本書でも詳細に解説されていますように、この「複雑系科学」では、

「通常的学校数学」で使用するような「線形(直線)的単純比例型指数関数」ではなく、

「非線形(曲線)的ランダム型指数関数」による、「相転移」物理を取り扱うため、

ほとんど一般的には見受けられない「特殊数学」だとのことです。(本書30~35頁)

つまり、「複雑系科学とは、マクロ世界とミクロ世界の結び目(ミドルワールド)を

主な対象として扱う学問!?」のようです。

(なお、「複雑系科学」については、こちらの記事もご一読下さると幸いです。)

その果てに見えてくる世界とは・・・

現時点では、私たちの理解度を超えているようですが、

それも、いつの日か、私たちの現前へと姿を見せてくれることでしょう。

本書第1~2章が、「自己組織化」についての基礎解説であり、

第3~9章までが、現代最先端技術についての応用解説に当たります。

特に、第3~5章は、昨今何かと話題になる

「人間脳と人工知能(生命)の相違点」に関するテーマであります。

ですので、この分野の基礎知識だけを拾い読みされたい方には、

この2章をお読み頂くだけでも、頭の整理体操になるかと思われます。

また、高校生諸君で「生物」を選択したものの、生物学専門用語で

行き詰まってしまった方(高校時代の管理人のことですが・・・)には、

第1章「自己組織化とは何か」、第3章「粘菌細胞」、

第6章「生体パーツ」の3章の「教科書的」該当知識と照らし合わせながら

自己理解のためのイメージ像を形作って頂くことをお薦めします。

(当記事末文でも、追加文献を挙げておきます。)

理系学生にとっては、講談社ブルーバックスは、

貴重で手軽な「虎の巻」なんですよ。

高校生時代、理系志望の友人知人がよく読んでいたようですよ。

予備校の先生もお薦めシリーズだとおっしゃっていました。

ということで、皆さんにも「自己組織化の神秘な世界」に触れて頂こうと、

この本を取り上げさせて頂ました。

「自己組織化」と「エントロピー増大則」の対称性から世界の謎に迫ろう!!

ところで、私たちの住む地球は、「閉じた系」だとしばしば言及されています。

これは、外部とエネルギーや物質のやりとりがないことを意味します。

その結果、地球内部上での物理的現象は、「秩序から無秩序(ランダム)」

へと移行していく「エントロピー増大の法則」が働き、元の状態には容易に

戻れなくなってしまうものと考えられています。(「再帰不可能・不可逆性」)

この「エントロピー増大の法則」は、このような「閉じた系=静止体系」においてのみ

適用されるとされています。

もっとも、下記の『エントロピーがわかる』によると、

「秩序から無秩序への移行」という通俗的なイメージ像での

理解だけでも不十分なようです。

単なる「変換」「変化」「展開」の過程でもないようです。

一方で、生命(いのち)の働きは、これとは真逆の法則が成り立っています。

それが、自己組織化=自己再生(増殖)機能」であります。

こちらは、「無秩序(ランダム)から秩序」へと移行していく

「動態的非平衡状態」にあるといいます。

「動態的非平衡状態」

つまり、「絶えざるゆらぎ」が生じているために、外部とエネルギーや物質の

やりとりが可能となり、全体的には「安定」することになります。

なお、「自己組織化」にも2種類あるといいます

上記のような

①「動態的非平衡系(複雑系カオスやリズムなどの波動)」と、

②「静的平衡系(脂質二分子膜や、雪の結晶など)」です。

特に、②の「静的平衡系」を脂質二分子膜のような

「絶妙に微調整された閉じた系」では、膜内部に凝縮された「内部エネルギー」と

外部へと拡散していこうとする「エントロピー」の兼ね合いや適正な熱温度状態との

絡みで「平衡状態」が決定されるといいます。

ちなみに、生命は「開かれた非平衡系」なので、「エントロピー増大の法則」が

適用されることはありません。

やはり、「生命はすごすぎる!!」の一言に尽きます。(本書24~30頁)

ところで、地球そのものは、「閉じた系=静止体系」

人間を含めた有機的生命体は、「開いた動態的非平衡体系」・・・

どうやら、この相互に矛盾した「関係性」を知ることで、

今日の生態環境悪化の諸問題を解決していくためのヒントがあるようです。

現時点では、地球と宇宙との間でのエネルギーと物質の直接的なやりとりも

難しいようです。

地球内部空間と宇宙外部空間の境界には、非常に分厚く、巧妙な「安全層」があると

されているからです。

この「安全層」の一部破壊問題が、「オゾン層破壊問題」です。

ここからの「直射日光が、生態系に甚大な被害を及ぼす」ということは

よく知られているところです。

もっとも、最近は、「太陽光エネルギー」などの研究もなされていますが、

少なくとも、「直接的」なやりとりは、このように地球の絶妙な生態系をも

深く傷つけるおそれがあるともされ、その「直接的エネルギー抽出法」は

実用の段階にはほど遠いようです。

「太陽光発電」も、地球内での「閉じた循環構造」に最適化させた

「間接的なエネルギー抽出法」のようです。

ですから、「無尽蔵かつ安定的」な供給体制を

地球内で、自己完結的に作り上げることは、

現段階ではまだまだ難しいようです。

何と言っても、「太陽光エネルギー」は、地球上にある物質原子から抽出される

「核分裂(核融合)」以上の莫大なエネルギーが獲得されるともされるだけに、

その抽出法の管理体制次第で、どれほどの甚大な被害が出るとも分かったものでは

ないからです。

その「太陽光エネルギー力」の強弱を微調整出来るほどの精密な技術革新が

起これば、地球上のエネルギー事情も大激変するのでしょうが・・・

このことから、地球内部でのエネルギー事情にも、一定の限界があるものと

考えられています。

熱力学第1法則「エネルギー(質量)保存の法則」も、地球内部全体では

比較的「恒常的・安定的」というのですが、

これは、「エネルギー=物質相互の変化量が全体として一定」ということです。

しかし、熱力学第2法則「エントロピー増大の法則」は、エネルギー消耗の過程で

一部喪失されていくようで、無限の「フリーエネルギー」は得られないように

なっているそうです。

つまり、すべてのエネルギーを余すところなく、仕事力に活用することは

出来ないということです。

もっとも、この熱力学第2法則も「ミクロの世界」の話で、「マクロの世界」の

話では、全体的に整合的だとの見方もあるようですが・・・

いずれにせよ、なかなか熱力学第2法則で定義される「エントロピーとは何か」は、

本書のテーマ「自己組織化とは何か?」以上に、理解に苦しむところがあるようです。

「マクロの世界(静止体系)で観察すると、あまりにも当たり前すぎて<強い物理法則>

ミクロの世界(動態的ランダム系)で見ると、<弱い物理法則>に見えるだけ!?」

そのため、「エントロピー」の定義問題とも相まって、超常識(物理)的で

一見すると「神秘的」に見えるだけのようです。

「だから、<エントロピー>はわかりにくい!?」

「エントロピーそのものの正体」もよく分からないようです。

何らかの「物理的作用(過程)」だとは言えても・・・

そのため、「エントロピー=正体不明(未知)の情報=負の情報=不確実性」と

その性質そのものに着目して考察していこうと提案する論者もいます。

『エントロピーがわかる~神秘のベールをはぐ7つのゲーム~』

アリーベン-ナイム著、中嶋一雄訳、講談社ブルーバックス、2010年より)

管理人の表現で語ると、「宇宙に隠された<生きている>暗号!?」

そんな不思議な性質があるといいます。

さて、本書の主テーマである「自己組織化」ですが、こちらは、

「エントロピー」の性質よりは、理解しやすいようです。

とはいえ、生物に備わった「自己組織化」も、私たち「生きている」人間から見ると、

超常識的なために、この「驚異さ」に普段はあまり気付くこともありません。

それだけに、「有り難い」性質なのです。

「エントロピー増大の法則」の側面から、生物の一生を見ると、

こうした「自己組織化機能」が喪失された時が、「死」だといいます。

つまり、「自己再生」の反対の「自己腐敗現象」の始まりです。

これを私たち人間の一人ひとりの「個体」から、この「世界=地球」を観察すると、

人間外部(地球)から人間内部(自己組織機能を有した細胞内)への

良質なエネルギーや物質の取り入れが難しくなれば、生き残ることもままならなくなる

ということです。

だからこそ、「閉じた系」の地球生態系を意識的に保持していく努力が必要なのです。

人間内部も驚異的な生体システムになっています。

「自己完結型」の「代謝機能」でもって「恒常性(ホメオスタシス)」に

よって、微調節されているからです。

「閉じた系=地球」自体も、「ガイア仮説」によると、「恒常的機能」が

働いているようですが、人間を含めた有機的生命体に比較すると、

「サイズの問題」もあるのでしょうか?

「エントロピー増大の法則」が大きく作用するにつれて、「自己組織化能力」も

より一層低下していくようです。

このように「自己組織化」と「エントロピー増大の法則」の2つの観点から、

人間を取り巻く地球生態環境を相互に考慮した「世界観」や「生き方」を

真剣に模索していくことが、今後さらに重要になってきます。

生物特有の「自己組織化機能」を活用したテクノロジー

さて、「自己組織化」の過程を分析考察するところから、

現代では様々な分野で「自己組織化テクノロジー」への

応用化研究が進められてきました。

「人工知能(人工生命)」、「バイオナノテクノロジー」、

「バイオ電池」などなど・・・

21世紀現在の「経済生活」には欠かせない身近な存在と

なってきています。

ところで、生物にとって一番大切な要素とは何でしょうか?

「遺伝子」という答えがすぐに思い浮かんでくるかと思われますが、

実は、それ以上に大切な要素が、「自己組織化」です。

ところで、この「自己組織化機能」が自由自在に働くからこそ、

人間を含め生物は、「生き生きと」活動することが出来ます。

それは、「故障(病気など)に強い」ということでもあります。

別の表現で言い換えますと、「伸縮自在」ということです。

本書では、その事例として主に「粘菌」や「脳内神経細胞」を

解説しながら、「ネットワーク構造」に着目しています。

細部を観察すると、一見ムダに見える部分も、

全体的には重要な役割を果たしていることも解明されてきています。

一カ所が「故障」しても、他所が有機的な再結合を果たし、

あらたな「ネットワーク構造」を組み替えることによって、

「故障に強い」体質に生まれ変わることが出来ます。

こうした有機的生命体固有の「動態的ネットワーク構造」の巧みさは、

まだまだ「機械」では再現しにくいようです。

「人工生命」にせよ、最初に生み出されたのが、「コンピュータ・ウイルス」

という厄介な代物でした。

「人工知能」にせよ、人間による事前の組み込み学習(ニューラルネットワーク学習)

を経なければならない段階にあるといいます。(本書109頁=本書執筆時点)

とはいえ、2016年現在では、「ディープラーニング(深層学習)」の手法を

取り入れた技術革新も進められています。

技術的進歩は、驚異的なスピードで促進されているため、油断も出来ません。

ただ、本書でも強調されている「人工生命」とも共通する難題ですが、

人間を含む有機的生命体における「自己組織化」の全貌は、斯界ですら

まだまだ解明されていないようです。

「生命の謎」の前では、やっと一端がかいま見えた程度のようです。

「意識」や「心」といった難問も山積みであります。

ひょっとしたら、人間には、自力での全貌解明が何らかの形で阻まれているのかも

しれません。

「人類の自滅を防ぐために・・・」

いずれにせよ、今後、こうした「生命の謎」から「人工知能(人工生命)」への

応用研究開発を突き進めていくためには、より一層の倫理的謙虚さが

厳しく問われてくることだけは間違いありません。

また、「進化論」の見地からは、「進化とは複雑適応系」だとされ、

「定常状態に決して止まることはない!!」とも解説されています。

なぜなら、生物にとっての「定常状態」とは、「死」を意味するからです。

有機的・動態的な臨機応変な環境適応が働くからこそ、「生きている」のです。

昨日の「定常社会論」は、各「個体」を取り巻く「集団」社会がテーマでしたが、

あちらの場面でも、「複雑適応」を持続的に学び続けていかないと、

厳しくなるばかりだそうです。

ダーウィンの「進化論」も、相当な誤解があるようで、「個体」の系統的発生が

研究対象だったようで、「集団」研究については、不明な点も多いようです。

(なお、ダーウィンの「進化論」については、こちらの記事もご一読下さると幸いです。)

この「集団」に関しては、現代進化論も「分子生物学(遺伝子学)」の立場から

解析が進められていますが「自己組織化機能と複雑適応」の観点からも、

今後詰めていかないといけないようです。

この教訓から、「変化しなければ危ない橋を渡ることになるが、変化し続ける努力を

続ける限りは、新しい道が開かれていくだろう・・・」ということでもあります。

このように、今回は「自己組織化」を主題に考察してきましたが、

「生物の世界は、有り難く驚異的」な世界に満ち溢れています。

ということで、皆さんにも、今後の人類と世界の発展的調和を

再創造していくためのヒントが得られる本として、

ご一読されることをお薦めさせて頂きます。

なお、「エントロピー」については、

「熱とはなんだろう~温度・エントロピー・ブラックホール・・・~」

(竹内薫著、講談社ブルーバックス、2002年)

また、「高校生のための生物」について、

「新しい高校生物の教科書」

(栃内新編著・左巻健男編著、同上、2006年)

「高校生物とっておき勉強法~「まとめノート」のつくり方から

「遺伝」攻略法まで~」

(岸本博和著、同上、2008年)

また、「生物細胞」について、

「新・細胞を読む~「超」顕微鏡で見る生命の姿~」

(山科正平著、同上、2006年)

をご紹介しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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