正高信男先生の「コミュ障~動物性を失った人類」社会進化とともにコミュ障が増えるって本当??
皆さん、人との会話に疲れていませんか?
「コミュ障(会話に苦手意識があること)
=コミュニケーション障害」で悩まれたご経験は
ありませんか?
そんな方に朗報!?です。
社会が進化することで、かえって会話能力が低下する!?
という衝撃事実が出てきました。
「コミュ障」に対するイメージは、「社会通念」とかなり
異なるようです。
今回は、「コミュニケーション」で悩むすべての方へ
この本をお届けします。
「コミュ障 動物性を失った人類~正しく理解し能力を引き出す~」(正高信男著、講談社ブルーバックス、2015年)
著者は、京都大学霊長類研究所の教授で専攻は「心理学」です。
京都大学霊長類研究所といえば、「棲み分け理論」で有名な
今西錦司博士を創始者として、ユング派臨床心理学者の河合隼雄先生の
兄である河合雅雄先生など錚々たる研究者によって構成されている
研究機関であります。
管理人は、ひそかにこの研究所を応援しています。
なぜって、「社会ダーウィニズム」を打破してくれるような
「素晴らしい研究」がなされてきたからです。
この研究所が頑張ってくれないと、世界は再び危機が訪れるといっても
過言ではないと思っています。
さて、そんな研究所に属する著者が「コミュ障」についての
一定の研究成果を私たちに還元してくれています。
人とのコミュニケーションで悩む方は、年々増加の一途を辿っているそうです。
著者は、「ニート」や「引きこもり」に好意的です。
とはいえ、今の日本の現状では
これらの方だけでなく、大方の「口べた」な日本人にとって「生きづらい」
だろうということで、様々なヒントや提言をこの本でされています。
今回は、その知見を皆さんと共有していこうということで
この本を取り上げさせて頂きました。
社会進化とともに、「コミュ障」は増える??
まず、論じていく前に
ここで「コミュニケーション障害(以下、コミュ障)」の定義をしておきます。
ここでは、狭義の言語障害などの「発達障害」も含めて
「コミュニケーション全般に、比較的苦手な意識を持つ症状」と
広義に捉えておくことにします。
著者は、この本の中のある実験により「コミュ障」の人は、一般的に
「人間的ではなく動物的(より生存本能に近い)な情報回路が働かない」傾向に
あると指摘されています。
つまり、「一般通念」とは「真逆」だというわけです。
だから、ほとんどの「コミュ障」は病院に行くまでもないとも語っています。
現代日本では、年々歳々「コミュニケーション重視=情報過多」社会に
比重が置かれてきているようです。
残念ながら、この傾向は今後ますます続き「コミュ障」を自覚する方にとっては
「しんどい」時代になりそうです。
とはいえ、管理人も含めて大方の日本人は「元々口べた」でも生きてこれた社会
だったので、今まで気付かなかっただけなのかもしれませんね。
著者によると、「よりよい(便利すぎる)環境」がコミュ障を生み出す土壌に
なっているといいます。
しかし、「コミュ障」は進化の過程の中で「適応」していっているとも考えられる
そうです。
先程も語りましたように、「脱生物化=超人間化」の方向に進化しているのだと・・・
だから、「ニート」や「引きこもり」も一つの「適応戦略?」なのかもしれません。
そうはいっても、当人にとっては「苦しいことには変わりありません」よね。
そこで、著者は「コミュ障」が生きやすい社会にしていくにはどうすべきか?を
提言されています。
予断と先入観を捨てて人間を見る重要性~多様かつ寛容な社会実現序説~
本来、日本人って「引きこもり願望」が強かったように見受けられます。
そうした方が、たくさんいたからこそ世界でも稀な「マニアック文化」が
花開いたのでしょう。
現に、外国人のほうが日本人よりもその「魅力」に気付いている方が
多いようです。
著者は、「コミュ障」の一般的傾向として
「木を見て森を見ず(細部にこだわる驚異的な能力)」があると
語っています。
ところが、こうした「優れた能力」を発揮する場が
日本社会から徐々に失われていっているようです。
昔なら、「職人」や「博士」といえば周りからも尊敬される環境に
あったものが、現代では単に「オタク」として蔑まれる所にも
そのことが窺えるようです。
しかも、前述してきたように
「コミュニケーション重視のチームワーク思考」の職場が増えつつあるため、
どうしても「特異な能力」を持った方にとって活躍できる場が
減少してきている所に問題もあるようです。
日本社会から、ずば抜けて優秀(天才肌・職人肌)な人間が出にくくなったのも
こうした環境の変化に原因があるようです。
「職人」や「博士」のようなタイプは、
「世俗の栄華を巷(ちまた=下)に見て」生きることが出来たからこそ、
世の中のトレンド(流行)に振り回されることも少なかったのです。
著者も語っていますが、例の「理研の悲喜劇」もそこにあるのでしょう。
では、これから「コミュ障」は
いかに「居場所」を確保していけばよいのか?
「安心スペース=なわばり」を一カ所だけにせず「分散化」する工夫を
していくことだといいます。
著者の言葉を借りると、「孤立した一人ニート・引きこもりから
コミュ障への昇格を目指そう!!」ということです。
最近流行?の言葉で例えると「稼げるニート・引きこもり?」ということです。
少しでも、自分と似た価値観を持った人間同士が集まれる場があれば
「棲み分け」もスムーズになります。
そして、著者は「コミュ障」が自信を回復するためには
まず「書くことの経験」を積み重ねていくのがよいとも提案されています。
なぜなら、「コミュ障」は基本的に知的能力は高く「話すことよりも書く」
ことの方が得意な方が多いからです。
ところが、比較的「話すこと」の苦手な日本人が多いにもかかわらず
従来の教育では、適切な表現能力(書き方・話し方)を軽視してきたことに
大問題がありました。
結局、コミュニケーションが得意であろうがなかろうが
「人は多かれ少なかれコミュニケーション障害を抱えている!!」
ということを自覚することが重要となるようですね。
なぜなら、「言葉そのものに限界が内包されている」からです。
というわけで、今回は「コミュ障の方もそうでない方も含めて
すべてのコミュニケーションに悩む方への応援メッセージ」となりました。
なお、著者の別著として、
「他人を許せないサル~IT世間につながれた現代人~」
(講談社ブルーバックス、2006年)
『ウェブ人間退化論~「社会のIT化」は「サル化」への道!?~』
(PHP研究所、2008年)
をご紹介しておきます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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