岸田一隆さんの「3つの循環と文明論の科学」人類の未来を大切に思うあなたのためのリベラルアーツ!!
「3つの循環と文明論の科学」
科学コミュニケーターの岸田一隆さんが、
この本で、私たちが今後どのような方向性で
社会と取り組んでいくのがよいのかについて、
語っています。
「持続可能な社会発展」と「(今までのような)成長路線」は、
果たして両立可能??
現実的には、確かに厳しいようですね。
それでは、人類には残された時間はもうないのでしょうか?
そんなこともありません!!
正しい考え方と知識・知恵を学ぶことによって、
まだまだ軌道修正の余地はありそうです。
今回は、この本をご紹介します。
「3つの循環と文明論の科学~人類の未来を大切に思うあなたのためのリベラルアーツ~」(岸田一隆著、エネルギーフォーラム、2014年)
岸田一隆さん(以下、著者)は、理化学研究所仁科加速器研究センター
先任研究員など、科学エネルギーの調査研究活動をされています。
ご専門は、素粒子物理学・原子核物理学・科学コミュニケーション
とされています。
2011年3月11日の東日本大震災から、間もなく6年になります。
この震災を原因とする福島第一原子力発電所の被災から、わが国の
「科学エネルギー事情」が変化しつつあります。
現在までに、各層において意見の相違が激しく対立し、
政治経済をも激しく揺さぶってきました。
一般国民の間には、いわゆる「科学者共同体」への不信感が募り、
原発停止もしくは再稼働を巡っての「価値判断」も揺れ動いています。
専門家を始め、国民が選出した価値判断の「代理人」たる政治家に
対しても不信感が拡がっています。
こうした中、専門家と一般国民をつなぐジャーナリズムの責任も
厳しく問われています。
では、一体全体何を根拠にして信用していけばよいのか?
当然、一般国民の間でも疑問の声が上がってきます。
とはいえ、各界各位で相互に不信感が芽生えるのみでは
にっちもさっちもいきません。
民主主義社会だからこそ、国民自身にも責任の一端があるのです。
ただ、一般国民には判断を下すための資料・情報が限られています。
こうした現状で、いかにして「良質な価値判断」をしていくのかが
あらためてクローズアップされます。
著者は、この本で
国民にもメディアリテラシーや科学知識などに関する
幅広い一般教養(リベラルアーツ)を身につける素材を提供されています。
「リベラルアーツ」に関しては、前にもご紹介させて頂いた
こちらのブログもご一読下されば幸いです。
日々時間に追われ、なかなか良質な読書も出来ない中で
「これだけは、最低限知っておいて欲しい!!」と思われる知識を
選りすぐって解説されています。
私たちは、今後とも「持続可能な社会発展」の恩恵を受けながら、
いかに次世代に「良質な社会環境」を伝えていくべきか?
その「ロードマップ(道筋)となるヒント」が、あります。
2016年以降も、「価値判断の機会」たる選挙はやってきます。
その度ごとに、判断に迷いが生じたり「激しいイデオロギー対立」に
巻き込まれることなく、冷静な判断をする必要があります。
そこで、今回は皆さんに是非知っておいて頂きたい知識が満載ということで、
この本を取り上げさせて頂きました。
静かな革命へ向けて、良質かつ冷静な判断材料として・・・
著者は、まず冒頭で
福山雅治さん主演のテレビドラマ「ガリレオ」を素材に
私たちにこれから考えていくうえでイメージしやすい
二大テーマを喚起されています。
福山雅治さん演じる「科学者共同体的価値観」と、
大沢たかおさん演じる「宗教共同体的価値観」です。
これは、そのまま「成長戦略路線」と「スローライフ路線」との
価値観の相違に置き換えてもらえば理解しやすいかと思われます。
著者の結論は、もちろん「両者の調和」です。
大切なポイントは、「原理主義思考」のような極端な方向に
走らないことにあります。
著者は、人類史はこれまで大きく「三段階」に分けて発展してきたと
されています。
また、現在「地球温暖化現象」が激しい争点となっていますが、
人類史を通じて氷(河)期と間氷期が繰り返されてきたという点に
注意を呼びかけられています。
地球史全体から見れば、平均気温も下がり続け、
二酸化炭素濃度もほぼ最低レベルだそうですが、
近年の「急激な高密度化」には警鐘を鳴らしてもおられます。
以下ご説明する「三段階」は、前にも当ブログでご紹介させて頂きましたが、
①10万年前の「言葉と道具の発明」(狩猟採集時代、氷期)
②1万年前からの「農耕牧畜革命」(安定的な「奇跡の1万年」、間氷期)
③18世紀後半からの「近代科学および産業革命」です。
このように、時代が下る(現代に近づくにつれて)急激なエネルギーの上昇が
続いてきたことが分かります。
「指数関数的(右肩上がり)」で、驚異的なスピードで発展してきたのです。
ところが、人類はすでに十二分に時代に追いついていないようです。
その原因が、この本では「3つの循環」というチャートで分かりやすく
説明されています。
著者は、この本で主張したいことを次のように要約されています。
①人類は、「物質・エネルギー」「産業」「金融」という
3つの循環に支えられている。
②持続可能性とは、この3つの循環がバランスを取りながら持続できること
である。
③成長は、決して持続可能ではなく、定常な社会を目指さなくてはならない。
そして、これから目指すべき社会は「持続可能な定常型社会」なので、
「私たちが維持できる社会の規模は、
科学技術によって人工的な循環をどれだけ大きくできるか、
価値観の変革によって経済規模をどれだけスリムにできるか、
この2つのバランスにかかっている」と、説明されています。
特に、「物質・エネルギー循環」は、
「熱力学第二法則(エントロピーの法則)」に依存するため、
有限資源に対する過度の期待は禁物だとも警告されています。
文明論の科学を学び、ゼネラリストを目指そう!!
上記のように、私たちの生存環境は「3つの循環」で成立しています。
ピラミッド構造で例えると、
基礎土台部分(一番下)から、順番に
①「物質・エネルギー循環」
②「産業循環」
③「金融循環」
に組み立てられています。
このことが示しているのは、
地球の資源は「有限」だということです。
①には、限りがあります。
(フリーエネルギーなど語る方もいますが、少なくとも上記の
「エントロピーの法則」上、現時点では過度に期待しない方が
賢明だと思われます。)
これに、②③がそれぞれ依存することになり、
「不即不離の相関関係」にあることが一目瞭然です。
にもかかわらず、私たちはこの「自然の法則」に無理に逆らって
きたことが判明しています。
図でお伝えできないことが、残念ですが、
①よりも、②③が著しく肥大化してきたことは
皆さんの日々の生活をご想像して頂けるだけでも
明白な事実ですよね。
ここで、著者も語っていますが
今までの生活水準をさらに発展させるなら早晩パンクしてしまいます。
①につき、「人工的な科学技術で手当」する時間と
②③における「社会発展のスピード」とのいたちごっこです。
イメージしやすい表現をするなら、まさに「ラットレース!!」でしょうか?
著者は、科学に過度な期待を持つことも、過小評価して「急激な縮小」を
招くおそれのある「部分的には最適なスローライフにも罠がある!!」ことを
冷静に考察されています。
「部分的には最適な選択でも、全体的には不均衡が生じる!!
(経済学では、合成の誤謬といいます。)」ということです。
このあたりの解決策は、この本をご一読下さいませ。
いずれにせよ、科学技術による「人工救命措置」を待つことよりも、
私たちの「意識改革が先決」だということです。
そのために、専門家の意見も参考にしながらも、賢明で良識ある
「価値判断」を下せる能力を磨く必要があるようです。
それが、著者の語る「リベラルアーツ」です。
忙しくて、難しいことは分からないという方のために、
著者は、「これだけは是非知っておいてね!!」という
良質かつ冷静な判断材料をこの本で提示して下さっています。
「おおまかな準備が出来れば、後の細かい部分は微調整」です。
その意味で、この本は好著です。
「煽ることも煽られることもなく冷静に!!」
そのためにも、「刹那的に生きるのではなく、未来を信じよう!!」
「着眼大局・着手小局(視野を大きく広げて、小さくとも
出来るところから一歩を踏み出そう)!!」
こうした視点が、今後ますます大切な「合い言葉」になってくることでしょう。
そういう訳で、皆さんにもお薦めさせて頂きました。
最後までお読み頂きありがとうございました。
sponsored link