アイザック・アシモフ博士のシミュレーション「西暦3000年の人類」を20数年ぶりに読んで・・・

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「西暦3000年の人類」

SFや一般向け科学啓蒙書などで

日本でも親しまれてきたアイザック・アシモフ博士

が、今から20数年前のお亡くなりになる直前に

私たちに残して下さった「遺作」です。

管理人も子どもの頃に多大な影響を受けた博士の

「シミュレーション」は、今読んでも驚異的な

問題意識を抱かせてくれます。

博士の警告は、年々歳々厳しさを増してきているようです。

今回は、この本をご紹介します。

「シミュレーション 西暦3000年の人類~輝かしき宇宙コンピュータ文明への最終選択~」(アイザック・アシモフ&フランク・ホワイト著、林陽訳、徳間書店)

アイザック・アシモフ博士(以下、著者)は、日本でも多くの人びとに

親しまれてきたSF作家です。

著者は、1920年ソ連で生まれました。

20世紀の激動の前期にアメリカへ移住し、帰化されました。

大学では、生物化学を専攻されました。

その後は、ボストン大学医学部で生化学の教授職のかたわら、

本格的な作家活動をされていきます。

特に、著者のSF作品には「宇宙から見た人類史」という視点が

取り入れられ、独特な作風として知られています。

そうした一連の作品の中で、今回ご紹介させて頂くこの本は

文字通り「博士の遺作」となりました。

著者は、1992年4月に72歳にてお亡くなりになりましたが、

この本は、その死の直前に成された「未来の人類へのメッセージ」でも

あります。

1992年より、数年遡りますが、

この頃は、管理人もまだ小学生でした。

そんな少年期に初めて著者と出会ったのが、

子ども向けの「アシモフ博士の宇宙探検シリーズ」

(福武書店(現:ベネッセコーポレーション))でした。

今から考えると、「20世紀少年」のような「空想的世界観」でしたが、

博士ご自身は、いわゆる「オカルトやニセ科学」には厳しいお立場だったようです。

この少年期に感じていたのは、おそらく同世代の方々なら同意して頂けるかも

しれませんが、「楽観的な21世紀像」でした。

「大人になったら、もっと明るく楽しい未来が待っているのかなぁ~」という

今から考えれば、「冷や汗もの」ですが・・・

それでも、1980年から1990年前期には、

世の大人の皆さんもそのように信じておられたようなので、

あながち「的はずれ」な感想ではないでしょう。

やがて、「世紀末」を迎えるにつれ、世の動向とともに

世相は「終末観」に満ち溢れていったようです。

それでも、1995年あたりから始まる本格的な「インターネット革命」は、

沈み込んでいた景況感を吹き飛ばしてくれるだろうとの期待感も持たれていました。

こうした時代環境の中で、「博士の遺作」も次第に忘れられていったようですが、

20数年後の今だからこそ、むしろ「リアリティ」を持って読むことが出来ました。

なんとこんなにも速く、著者のメッセージが実現されていくとは??

しかも、まだ世に「インターネット」なる存在も知られていなかった時期にですよ・・・

というわけで、どうすれば「人類の明るい未来像」を取り戻すことが出来るのかを

皆さんとともに考えてみようと、この本を取り上げさせて頂きました。

明るい未来を創造していくためのヒント

この本では、「西暦3000年の人類」をテーマにした「シミュレーション」

なされています。

その大前提として、これまでの「人類前史」を振り返りながら「問題点」を

洗い出していこうとする記述に力が込められています。

特に、「世界史のおさらい」にもなって面白く読み進めることが出来ます。

ただ、著者は「西洋人」であることもあり、

日本に関する記述が「ほんの少し」である点が若干物足りなく感じますが・・・

もっとも、最終的には「激動の20世紀後半」を理想的なモデルで

駆け抜けていった「日本とドイツ」に期待もしていたようですね。

今度は、私たち日本人がお返ししなければならない番です。

西洋と東洋の架け橋になろうとする日本と日本人は、

20世紀の轍を踏むような道を再び繰り返すわけにはいきません。

どうすれば、地球上での争いに「終止符を打つ!!」ことが出来るのでしょうか?

そのためにも、「世界史」の視点を持ちながら、

私たち自身も足下を見つめ直していかなくてはならないでしょう。

この本では、「西暦」表記の「キリスト暦」を採用しながら

「地球創世記から、現代に至るまでの人類史」を考察されていますが、

「暦」にも様々な考え方が反映されているようですね。

「天文学(宇宙学)」にも造詣の深かった著者ならではの

ユニークな発想が現れています。

この本を読むと、これからの

「宇宙からの視点を持った人類後史」を創造していくヒントも

学ぶことが出来ます。

人類は、未だ「道具」を使いこなせていない!?

こうして、西暦2000年までの「人類前史」を俯瞰して考察していくと、

まだまだ人類は、言葉や火を始めとする「道具」を使いこなせていない

現状に否でも応でも、気付かされます。

これまでに人類は、「道具の進化発展」とともに「人口問題とエネルギー問題」を

爆発的に抱え込んできたことも、あらためて理解されることでしょう。

「西暦3000年」へ向けての「未来史の大予測」の最終章では、

「有限な」地球上で、人類は「無限に」増殖し続けることが許されるのだろうか?

という問題提起とともに「人類の未来選択」の方向性が指し示されています。

「人類が、かつての恐竜のようになる??」

そんなシミュレーションもされているようです。

著者は、「人類の宇宙移住計画」や「コンピュータと人類との共存問題」

にも触れられています。

概して、「楽観的」であるようですが、これまでの「人類前史」における

反省を真摯に受け止めないまま、「今のままの意識」で進み続ければ

予断も許されない状況を招きかねない「悲観的シミュレーション」も

同時に提示されています。

「少しは、この地球上に住む人類以外の生態システムにも気を遣いなさい!!」

著者は、このような警告を発しておられるようです。

「安易な人類の宇宙移住計画」にも警鐘を鳴らしてこられたようです。

現在でも、すでに宇宙に人類の汚点を投影してしまっているのに、

この地球上での現状を解決せずに「宇宙へ進出」していくことは、

人類の「思い上がりではないか!!」とのメッセージも読み取れます。

私たちは、まずこの地球上における宿題を片づけなくてはなりません。

「特定一部の集団だけで、地球資源を独占することは出来ません!!」

科学技術の恩恵を享受するにも、明晰な哲学や倫理が大切になります。

「教育・医療・食料問題などなど・・・」

世界には、未だ十二分に享受出来ないでいる人びとがいることを

忘れてはならないでしょう。

とりわけ、恵まれた立場にいる私たち先進国に住む人間には、

それだけの重い責任があります。

「コンピュータの未来」についても、著者は「楽観的」なようですが、

そのことは、同時に「莫大なエネルギーが必要!!」な事実をも意味します。

また、「食料問題」でも、現在農漁業などの「一次産業復活」に向けての

様々な積極的な取り組みもなされていますが、エネルギー不足や土地争いを

招いてきたこれまでの「人類前史」も忘れてはならないようです。

著者は、最後に「コンピュータと人類の共存関係」を巡って、

「あらたな労働観」も提示されています。

こうして、この本を再読してきましたが、

20数年前の著者の「シミュレーション」には、驚くべき新鮮さを感じました。

この本は、20世紀末に一瞬の光芒を放った作品として、

「片隅に埋もれさせておくには惜しい!!」1冊です。

これから、私たちは「人類後史」へ向けてどのような「意識」を持って

歩み進めていけばよいのでしょうか?

そのヒントが、この本にはあります。

「楽観的な未来像」か、

「悲観的な未来像」を選択するのかは、日々の私たちの「意識次第」です。

この本には、「これまでの人類史と未来シミュレーション」が非常にコンパクトに

まとめられていますので、皆さんにも是非ご一読されることをお薦めします。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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3 Responses to “アイザック・アシモフ博士のシミュレーション「西暦3000年の人類」を20数年ぶりに読んで・・・”

  1. […] その一つに、前にも当ブログにてご紹介させて頂きましたアイザック・アシモフ氏の […]

ミチオ・カク博士の『2100年の科学ライフ』<ドラえもん>もびっくり仰天!!現代科学の最先端はここまで来ている!? | 双龍天翔 へ返信する

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