茂木誠先生の「世界史で学べ!地政学」「地政学」を「悪の論理」から「愛の論理」に転換させる「平和学」にしよう!!

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「世界史で学べ!地政学」

駿台予備学校「世界史科」人気講師の

茂木誠先生が、世界史から読み解く

「地政学の教科書」を出版されました。

地政学とは、現実的な未来予想地図を

描くための「学問」です。

20世紀までは、「悪の論理」として

悪用されていたために、敬遠されていた学問でした。

21世紀以後は、地政学も現実的な「愛の論理」へと

進化発展させなければなりません。

今回は、この本をご紹介します。

「世界史で学べ!地政学」                 (茂木誠著、祥伝社、2015年初版第5刷)

茂木誠先生(以下、著者)は、駿台予備学校「世界史科」の

人気講師としてご活躍されています。

一般社会人向けの「わかりやすくて面白い」世界史啓蒙書を数多く

出版されたり、インターネット上の『もぎせかブログ館』などを

運営されるなど、人気ブロガーとしての顔もお持ちです。

(追記:2022年12月現在は『もぎせか資料館』に移行されているようです。

その他YouTube動画などは世界史選択の受験生にも息抜きになると思いますよ。)

著書には、『経済は世界史から学べ!』(ダイヤモンド社)もありますので、

本書と併読されると、現代ニュースも世界史的な視点をもって

よりわかりやすく理解するための助けになるかと思われます。

管理人もすでに一読させて頂きましたが、

個人的には、多少物足りなさも感じさせましたが、

全般的には、とても読みやすい好著でした。

さて、今回ご紹介させて頂く書物は、「地政学」。

「地政学」とは、一般人にとっては

あまり聞き慣れない言葉でありますが、

「歴史地理学的な観点から国際政治経済上の戦術・戦略を

練るための実践学問」であります。

そのため、主な活用者は、国家や民間企業などのトップエリートに

限定されていた、いわば「秘伝の学問」でした。

このように、きな臭い性格を持っている学問でもあるために、

かつては(2016年現在もですが・・・)、「悪用」されてきた経緯も

ありました。

そのため、「取り扱い要注意の危険な学問」だとも・・・

しかし、18・19世紀末期~20世紀初頭の近代黎明期の

帝国主義時代ならともかく、20世紀後期から現在に至っては、

もはや一部の特権者による「悪用」は許容されません。

20世紀初頭の第一次世界大戦中には、アメリカのウィルソン大統領による

『平和のための14箇条』(1918年1月発表)の筆頭には、

「秘密外交の禁止」という項目もありましたが、今に至るも

一般には知られていないだけで(もっとも、<秘密>外交だから当たり前ですが・・・)、

未だに、全地球人類に共有されるような「(情報)公開外交の原則」は、

確立されているとは言い難いものがあります。

この「理想主義者」ウィルソン大統領自体にも、「影の側面」もあったように、

当時の世界的指導者で「理想主義者」をもって任じる人物でさえ、

「世界の理想」とは、ほど遠かったようです。

1919年6月の第一次世界大戦の戦後処理に該当する

ベルサイユ条約の内容においても、

不平等な条項が残されていたために、

後に、そのドイツなど敗戦国への過酷な制裁措置が、

第二次世界大戦の遠因になったことは周知のとおりです。

翻って、第二次世界大戦後における敗戦国側への過酷な制裁措置が、

2016年現在においても、これら敗戦国民に過酷な心理的圧力が

無意識に加えられていることも忘れてはならないでしょう。

また、その時の不平等処理が、現在の国際連合にも「限界」があることを

招来しています。

世界大戦でなくとも、各地の地域紛争(中東紛争、ウクライナ紛争、

朝鮮半島事情など)の戦後処理にも、数多くの難問を残しています。

「戦争を始めるのは簡単でも、終わらせるのは決して簡単ではない!!」という

人類が長年の歴史的過程で学んできた厳しい教訓でさえ、

真の意味で理解されているとは言い難い状況にあります。

こうした厳しい現状を踏まえると、

管理人個人にとっては、あまり好きではない言葉でありますが、

確かに、著者が語っておられるように「脳内お花畑歴史観」(本書9頁)だけでは、

「平和の時代」を実現させることは難しいようです。

現状では、むしろ、平和を叫べば叫ぶほど、戦争などの危機が訪れるような

矛盾に充ち満ちているようです。

こうした「(現実離れした過度の)理想主義」が、

皮肉にも「危機を招き寄せる」といった事態を回避する良き知恵はないものか?

そこに、本書で「地政学」を学ぶ意義があります。

誠に悲しいことではありますが、

現状の人類の意識次元では、「平和を望むならば闘いに備えよ!!」という

歴史的教訓に学ぶ必要があるようです

日本史においても、聖徳太子や天武天皇、楠木正成や

直江兼続、真田幸村(信繁)など「義や徳を重んじた」軍事的天才でさえ、

人間の持つ「暗い欲望(闘争)心」をいかに未然に打ち砕くかで

悩み苦しんでこられたのですから・・・

その意味で、「地政学を学ぶとは、単純な<騙しのテクニック=権謀術数理論>の

次元から、人類が離脱・超克していくうえでも、不可欠な学問」なのです。

「<悪の論理>ではなく<愛の論理>にまで高めた地政学を追究しなければなりません!!」

ですから、真の意味における「平和学」の探究は、

「荷重くして道遠し!!」(徳川家康)であることを、日々忘れる訳にはいきません。

このように、「地政学」は、今や、トップエリート層だけに必須の「学問」ではないのです。

なぜなら、「明るく希望に満ちた未来を創造していく事業は、万人の仕事」だからです。

ということで、このような大きな時代の「分岐点」に差し掛かっている現在だからこそ、

皆さんにも、「地政学の論理」を幅広く知って頂きたく、

この本を取り上げさせて頂きました。

「地政学の論理」は、本来「紛争予防のための学問」だった!?

このタイトルには、「多義性」を込めてつけさせて頂きました。

つまり、「地政学」という学問には、常に「光(表の顔)と影(裏の顔)」が

共存しているからです。

その意味は、人間の喜怒哀楽といった「悲観論」から「楽観論」まで、

人間精神のすべてが、この「学問」には含まれているということです。

前にも当ブログでご紹介させて頂きました、フランスの国際政治学者である

ドミニク・モイジ氏は、大胆にも現在の各国事情を「3つの感情」で

分析考察されています。

「恐れの文化」にあるヨーロッパとアメリカ。

「屈辱の文化」の下に忍従を強いられるアラブ・イスラム圏。

「希望の文化」を謳歌しつつある中国・インドなどのアジア諸国。

その他「例外(この3つの感情を混合)の文化」にある

ロシア・イラン・イスラエル・アフリカ諸国、ラテンアメリカ諸国。

というように・・・

ちなみに、現在の日本は、「アジアの例外=恐れの文化圏」だと。

その分析に対する評価も、各人各様でありましょうが、

「地政学」は、個人的な感情だけでなく、国家などの「集団感情」でも

常に揺れ動いてきたことは否めません。

そのように、「地政学の論理」と言っても、各国(地域)事情により

様々な「論理」が構築されてきました。

そうした「地政学の論理」を構築していった代表的思想家や、

各国の地政学的政治戦略の詳細については、本書をご一読下さいませ。

とはいえ、これから本文で触れていく内容とも大きく関連してきますので、

ここで、簡単な素描をしておきます。

19世紀の帝国主義列強時代に、英米を中心に完成していった

「マッキンダー系地政学」と、

新興国ドイツを中心に展開されていった

「ハウスホーファー系地政学」です。

前者は、「シーパワー(海洋覇権論)」、後者は「ランドパワー(陸上覇権論)」と

ここでは、おおざっぱに定義付けしておきましょう。

どちらの「地政学」も、日本にとっては、歴史的な「曲がり角」で左右させられ、

一喜一憂させられてきただけに、無視できない「地政学の論理」です。

ことに、現代の「海洋国家」日本にとっては、前者の「シーパワー」に比重が

置かれているようですが、この立場は、

「世界のハートランド(ウクライナ周辺??)を抑えよ!!」とする

「英米中心の政治経済権力論」でもあるため、日本としては、この立場だけに

固執していく姿勢は危険でありましょう。

そのことは、本書において著者も強調されています。

私たちは、昔から「ロシア事情」や「西欧事情」には、

あまり深く関与してこなかった歴史事情もありますので、

なおさら慎重な姿勢が要求されます。

それは、第一次世界大戦時の英仏といった「西欧諸国」が、

混乱の種を蒔いた「中東問題・アジアアフリカ問題」にも言えます。

また、「近くて遠い隣国」中国・朝鮮半島事情にも精通しているようには

見えません。

むしろ、近いからこそ「物事の真相(深層)が見えなくなっている!!」ように

管理人には感じられます。

その意味で、「希望的観測は大変危険!!」だとも言えましょう。

言うまでもなく、無用な対立混乱は回避すべきです。

当たり前ですが、念のため。

ところで、本書での著者の立ち位置は、どちらの立場も一応バランスよく

解説されていますが、戦後の日米関係重視の視点から、

どうしても「英米系地政学」に力点が置かれているようです。

とりわけ、「保守的な立場」でもあるようです。

とはいえ、戦後の「冷戦思考」が、もはやまったく通用しなくなってきた今日では、

「英米系地政学」の観点だけから、見ていてはバランスを失してしまいます。

著者も、そのような視点から、従来型の「親米保守的なものの見方」を超克する

「地政学の論理」における「未来志向のアイディア」を提供されています。

そのような思想的立ち位置や「地政学そのもの」が持つ現実的な勢力均衡論といった

性格も「地政学」には、もともと備わっていますので、

「リベラル左派系」の読者の方にとっては、もどかしく苛立たしい思いを

感じられる方もおられるかもしれません。

そこで、著者だけでなく、管理人の立ち位置も確認しておきますと、

「現実的保守」の立場に比重を置きながらも、「未来志向」を「現実的な」角度から

実現追求していこうとする「積極的平和主義」の立場であります。

もっとも、この「積極的平和主義」は、必ずしも現政権の政治哲学とは一致しませんが、

重なる部分もあります。

以下の論理展開は、以上の立場を踏まえて考察させて頂きますことを、

あらかじめご了承下さいませ。

つまり、「平和の探求は、決して急いだり焦らないことが肝要」との立場です。

とともに、歴史的教訓を尊重する立場から「宥和策には反対」でもあります。

「寛容と忍耐にも、一定の限界がある」とする姿勢です。

ですから、自国内で生起してきた現象は、「自国内で自己解決を図ろう」との立場で、

国際協調主義も、「無理のない範囲で、最大限協力していこう」とする考えです。

これは、現在、世界中で解決困難な「移民・難民問題」などの政治経済問題を

より良い方向で解決していくためにも、重要な視点であります。

後にも触れますが、現代ヨーロッパ、とりわけドイツ・トルコにおける

「移民・難民問題」は大変深刻な状況にあります。

管理人は、主に経済界が積極的に推進していこうとする「安価な労働力」としての

「移民政策」には、「断固反対」の立場ですが、

移民に大して差別感情を抱いている訳ではありません。

むしろ、「移民」の方々に対する、そのような敬愛の念に欠けた

歪んだ受け容れ姿勢にこそ、将来の懸念を抱くからです。

これも、本書と絡んできますが、ベトナムなどからの「農業実習生問題」も

現実に「由々しき事態」が生起していることは、身近なところでも感じられます。

「補助金目当て」に「ブラック企業化」している「悪徳農業法人の実態」も

あちこちで見受けられるようです。

そうした「闇の部分」も、決して大手マスメディアなどでは

「積極的に」報じられないために、重大な懸念が残るところです。

「難民問題」についても、もとより安易な解決法などありませんが、

わが国の歴史的進化発展に「帰化(渡来??)人」が数多く関与されてきた事実や、

第二次世界大戦中にもドイツと同盟関係がありながらも、杉原千畝外交官などの

個別的機転を利かせた柔軟な受け容れ対応策で、「歴史的危機」を乗り超えてきた

事実には、大いに誇りと感謝の念を持ってもいいでしょう。

そうした「世界史の中における日本史」の様々な事例を見ていくだけでも、

「日本国憲法の精神」以前に、もとからわが国に組み込まれてきた「大和精神」で

あったことは、もっと強調されても良いのではないでしょうか?

戦後も70年が過ぎ、東西冷戦思考法すら忘れ去られていこうとする近未来においては、

そろそろ「現実的理想主義の調和精神」に目覚めなくてはならない時期であります。

21世紀は、インターネット情報通信時代とともに、開拓されていっていますが、

本書における「地政学」を学ぶ視点でも、こうした「リスク分散型思考法」は

大変重要な視点を提供してくれます。

そこで、話が錯綜してきましたので、タイトルのテーマに戻します。

19世紀から20世紀末までは、極端な「覇権主義的地政学」が

世界を大きく切断してきたために、「紛争予防のための学問」も、

各国の「利己主義」に過度に依存していた側面もありますが、

21世紀現在においては、「未来型勢力均衡的地政学」に

進化発展させていく必要があります。

グローバリズムもナショナリズムへの欲求も、人間の不安定な精神的欲望から

生み出されてきただけに、その調和を取るのは、非常に困難を窮めています。

どうすれば、人間の持つそうした「光と影」を精神的次元でも超克していくことが

叶うのか、そうした積極的志向も「地政学」を学ぶと見えてきます。

なぜなら、「地政学を本格的に適切なバランス感覚を持って、学んでいくと

<鳥瞰型未来思考>を身につけることも出来るから!!」です。

現代世界事情を「地政学」で各自読み解こう!!

このような角度も踏まえながら、政治的立場を一旦「度外視」しながら

本書の「各国政治経済事情」を読み解いていくと、また著者とも違った視点が

各人各様の精神的次元で見えてくることでしょう。

「一国一党派」といった「個人的事情」だけではなく、「地球人としての日本人」、

「宇宙人としての地球人」というように、少しずつ段階的にステップアップしていく

見方を学んでいきましょう。

ポイントは、「急ぐべからず」(徳川家康)です。

日々、堅実に地に足のついた「現実的理想主義」の道のりを歩んで参りましょう。

何も、「デモ」などに勇んで参加する必要はないのです。

なぜなら、「地政学」を学べば、一見「もっともらしい」ような「デモ運動」の

背景には、必ず何らかの「大きな政治的意思」が働いているからです。

よかれと思ってした安直な行動が、本来(未来)の同志を

相互に傷つける最悪の結末を迎えることになるかもしれません。

政治(経済)的行動の限界は、「内(味方)か外(敵)か」に

「わかりやすく」切断してしまうことにあります。

私たちは、こうした安易な判断から、静かに遠ざかる知恵を

身につけなくてはならないようです。

さて、ここからは、本書における「地政学的視点」では

見落とされている「各国政治経済史」と「地政学の論理」を

さらに独自の視点も加味しながら、探究していきましょう。

本書では、日本と関連づけられた「世界史から学ぶ地政学」が

各地域可能な限りバランスよく分析考察されているようですが、

今回は、「大国中心主義」ではなく、「大国(覇権国家群)」の

日陰で凄惨な状況に置かれてきた国々をご紹介します。

ここでは、

①「ミャンマー(旧ビルマ)」②「インド」

③「トルコ」④「南アフリカ共和国」に焦点を当てていきましょう。

他にもお伝えしたい国々(地域)もあるのですが、

紙数の関係もありますので、残余の詳細分析は、

機会をあらためてご紹介させて頂くことにします。

まずは、①「ミャンマー(旧ビルマ)」からです。

現代のミャンマー事情は、皆さんもご存じのように、

戦後長らく続いた「軍政」から「民政」へと移管されていく

過渡期に当たるようです。

戦後始めての「民主的投票システム」による大統領選挙が

なされているところです。

アウンサンスーチー氏は、人権活動家として

長年月にわたりミャンマーの「民主化」に携わってこられました。

アウンサンスーチー氏は、幼い頃から、

「旧ビルマ(イギリス式英語名)」の旧宗主国であったイギリスで

生まれ育ってこられました。

その背後には、「ミャンマー独立史」の悲しい歴史が隠れていたのです。

アウンサンスーチー氏の父親であるアウンサン将軍は、

後に長期の「軍政」を敷くことになるネ・ウィン将軍の「同志」であり、

ともに「民族派」としてミャンマーの独立心血を注がれました。

この二人の同志は、旧日本軍による教練を受け、

後年に「インド独立」の引き金を引くことになるインパール作戦に

参加されたのですが、日本軍の戦況不利な状況から、

宗主国イギリスへと鞍替えすることになりました。

その功績もあって、イギリスとの「ミャンマー独立承認」交渉も

進みつつあったのですが、その最期は「謎」に包まれているようですが、

一説によると、「暗殺」されたとも伝えられています。

ミャンマーは、②「インド」とも深いつながりのある国です。

それは、上記のインパール作戦が、後年の「インド独立」に

与えた影響もあります。

ちなみに、インドも旧宗主国がイギリスであり、

前回ご紹介させて頂いた「大東亜共同宣言」とも関連する

「自由インド仮政府代表兼インド国民軍最高司令官」チャンドラ・ボース

インパール作戦に参加していたのですが、彼も大戦末期のインド「独立直前」に

台湾沖で、これも一説ですが「暗殺」されたというような不確かな未確認情報も

あるようですが、真相は闇に包まれているようです。

このように、「旧宗主国」がイギリスだった独立建国史の「裏事情」には、

決して、公式には出てこない「教科書が教えない歴史」があるのです。

ところで、話をミャンマーに戻しますが、こうした建国事情もあるだけに

ミャンマーの「軍政」が長期間続いてきた訳です。

ミャンマーは、「社会主義路線」を歩みながら、堅実な独立国家の道を

模索していたようで、少なくとも1980年代までは、多少の軋轢はあったにせよ、

歩みを進めてきました。

ですが、冷戦末期、数多くの「東側諸国」における「社会主義路線」も破綻の危機に

瀕しつつあり、「民主化要求」も強くなってきたのです。

ミャンマーは、多民族国家でもあり、カレン族など少数民族による独立分離運動なども

よく知られているように、なかなか「一枚岩」にまとまった

「安定的政治勢力」で運営されてきた訳でもないようです。

そういうこともあり、特殊冷戦事情などもあって、ある程度の強権的軍政も

認めざるを得ない状況にあったようです。

そうした「民主化運動」の過程で、表舞台に復帰してこられたのが、

アウンサンスーチー氏だったのです

こういう背景事情もあるだけに、もともとミャンマー独立時から

政権運営してきた「民族派軍人」や、一般のミャンマー国民にとっても、

ほど遠い存在感だったようです。

要するに、「イギリスの傀儡的<影の指導者>」との

根強い民族感情もあったようですね。

戦後日本に伝えられてきたミャンマー事情は、こうした「民主化運動」とともに、

イギリス寄りの「西側情報」といった視点にも偏りがあったようで、

今でも、ミャンマー事情が正確に伝えられていないようです。

詳細は、巻末参考文献を是非ご一読下さいませ。

そこで、①「ミャンマー」と②「インド」に共通するインパール作戦ですが、

この歴史も戦後日本では「影」の部分だけが誇張され(もちろん、事実もありますが、

歪められている部分もあります)、「光」の部分は、今なお無視されています。

どうしても、(現に作戦としては大失敗であり、軍事史の観点でも評判は良くないの

ですが・・・)「白骨街道」の場面が、『ビルマの竪琴』(竹山道雄著)とも相まって

最悪な印象だけが、「表の真実」として語り伝えられてきました。

ですが、こうしたミャンマーとインドといったイギリスからの「独立」にも

つながっていった歴史的事実には、そろそろ冷静に評価すべき時期も到来したようです。

さて、イギリス絡みでは、④「南アフリカ共和国」の建国の最原点にまで

遡って考察しておく必要があります。

なぜなら、人類史における「差別から脱却するためのヒント」が満載だからです。

ここは、本書でも触れられていませんので、

是非とも強調しておく必要があります。

それが、「南ア戦争(アングロ=ボーア戦争)」です。

後に、「アパルトヘイト政策(現在表面的には撤廃されていますが、

現地では今なお色濃く残っていると聞きます。)」にもつながる

「近代初」の強制収容所を創設したのが、イギリスでした。

このあたりも、詳細に語りたいのですが、

紙数の関係上、今回は省略させて頂きますが、とにかく

「旧宗主国イギリス」の「帝国主義的地政学」には、

各国が相当に苦しめられてきました。

言うまでもなく、この「日本」もですが・・・

『アーロン収容所』会田雄次著などご参照のこと。)

もっとも、公平を期して、イギリスにも長所はたくさんありますが、

「地政学」とも絡めて論評すれば、「情報戦・心理戦・思想戦」に

英米は「勝った!!」のでした。

少なくとも、20世紀末までの英米の国際的影響力が強かった頃までは・・・

こうした、残酷な勝敗の陰にも「地政学の悪の論理」もあるだけに、

今でも大多数の人間から嫌悪感を持たれている「学問」でもあるのです。

最後に、日本とも強い関係のある③「トルコ」ですが、

この国も、対岸が「世界の火薬庫」バルカン半島でもあるため、

たびたび英米諸国と「利権が対立!!」して、現代に至るまでの

「中東政策の尻ぬぐい役」を英米から引き受けさせられているようです。

「移民問題」でも「トルコ系移民」に対する「移民問題」がクローズアップ

されているようですが、こうした歴史的事情も複雑に関係しているだけに、

一筋縄での解決には、なかなか至らないようです。

また、あらたな視点として、産経新聞(平成28年3月12日(土)付)の

(大阪版だけ??)朝刊オピニオン欄(第13面)の『一筆多論』という

村上大介論説副委員長のコラム記事『「アラブ独裁」をまねするのか』という

論考によると、現エルドアン政権も、それまでの「イスラム世俗化路線」から

徐々に離脱していくなど、時代の「転換期」を迎えているようです。

こうした見方も一つの貴重な異見でもありますが、

今後ともトルコからは目を離せないようですね。

なお、「トルコ」については、こちらの記事もご一読下されば幸いです。

まったく、第一次世界大戦で、英米(ことにイギリス)が蒔いた種なのに・・・

このことは、日本にとっても、中国問題などで共通する問題です。

確かに、先の大戦における日本の統治法にも多々問題はあったにせよ、

現代中国の黎明期には、英米を含めた西欧諸国の各種利害が

複雑に錯綜していたのです。

日露戦争の勝敗結果にも、「ぬか喜びは禁物で大変危険です!!」

そういうこともあり、「司馬遼太郎史観」的な単眼思考も

そろそろ脱却すべき時期だと思われます。

以下の考察は、管理人個人的な視点でもあり、

相当な重要論点だと自負しているのですが、

なぜか、「保守派」の人ですら、指摘してこなかった大問題です。

今後の日露関係にも関係してくるだけに、考察しておきましょう。

「日露戦争は、本当に戦う必要があったのでしょうか?」という

「重大問題」です。

歴史に「イフ」は、禁物と言われますが、

「紛争の未然防止」の「思考実験」としては、

今なお有効な視点を提供してくれます。

明石元二郎大佐を天まで高く持ち上げるだけでは、

どうしても納得できない問題意識が、昔からあったのです。

それは、戦争に勝利して、独立を維持するためとはいえ、

戦後の「悪影響」にまでは踏み込まれていなかった「秘密工作」だと

思われて仕方ないからです。

よく「保守派」の先生方が言われるように、戦後のポーツマス条約の

延長線上にあるアメリカの「鉄道利権」とも絡む「ハリマン計画」などが

取り沙汰されますが、そのことよりも、

「日露開戦」及び「明石工作より派生していったロシア共産化」の方が、

もっと日露両国の未来にとって、「絶望的な問題」だったでしょう。

何よりも、日本国民の大多数や、天皇皇后両陛下、

当時の為政者の大多数も「日露非戦論」が優勢だったといいます。

管理人は、「大地を愛する」ロシアの方々や、

本来は「平和を愛好する」日本人の未来にとって、これほど相互の国民だけでなく、

世界中の人びとを傷つけた「大問題」もないと思うのです。

それは、今なお傷が癒えていない「重傷」であります。

このことが、どれほど日本国内の「思想的分裂」を招いてきたことかと

考えると、涙が出てきます。

日露ともに、「帝政」を抱きながら、本来は静寂で穏和な気質を

持っているとされる国風であるだけに、将来に禍根を残さないためにも、

ここで「正しい」歴史認識を双方で共通確認していくことも大切だと思われます。

今後は、日本政府としては、「旧ソ連と現ロシアの違い」を明確に追究していくことや、

「力による現状変更は認めない!!」との視点から、欧米(主に英米)的視点にも

偏りすぎない「公平な仲介者」としての役割を果たすべきでしょう。

このブログでも、むろん微力ではありますが、

「世界平和」のために、そのように強く願って止みません。

以上、長くなりましたが、「地政学」は学べば学ぶほど、

「世界史(人類史)とは、何と冷酷な歴史過程だったのか」と悔やみ悲しまれる反面、

正しく活用させることが出来るなら、「紛争を未然に防止」することも

実現させることが叶う「愛の論理(希望学)」でもあります。

そういう祈りも込めて、

「地政学は、決して世界を動かすトップエリート層だけの玩具ではない!!」という

視点をここに強調させて頂きます。

皆さんも、「世界史の中における日本」を考察して頂く1冊として、

本書を強くお薦めさせて頂きます。

また、本書における「地政学の論理」は、「シーパワー(海)」と「ランドパワー(陸)」

の視点のみに限定されているようですが、21世紀には忘れてはならない視点があります。

それが、「スカイパワー(空、さらには<宇宙>)」であります。

かつて、外交官をも目指そうとしていたこともあり、「宇宙時代の国際法」も

専門の実務家で最優秀な「愛の論理」をも兼ね備えた感性豊かな外交官の方には、

是非「国際場裏」で「理」と「情」を尽くして創造的提案をして頂けるように、

切にお祈り申し上げておきます。

なお、ミャンマー事情については、

「アウン・サン・スー・チーはミャンマーを救えるか?」

(山口洋一・寺井融共著、マガジンハウス、2012年)

※山口洋一氏は、元駐ミャンマー大使でもある方です。

巨大マスメディアでは、伝えられない「ミャンマー裏事情」が

学べる好著です。

日印関係の明日を考えるためには、

「インドと組めば日本は再建できる」

(鈴木壮治、アッシュ・ロイ共著、幻冬舎、2011年)

※本書も、現在の「日印外交」に影響を与えている本と

思われるだけに、お薦めしておきます。

日中韓朝関係については、

「これだけは知っておきたい日本・中国・韓国の

歴史と問題点80」

(竹内睦泰著、ブックマン社、2010年)

※竹内睦泰先生も、予備校の「日本史」講師だけでなく、

「裏の顔」もたくさんお持ちであるとか・・・

若手の大変ユニークな面白い先生ですし、「愛国者」でも

ありますので、お薦めしておきます。

さらに、「地政学」を学びたい方には、本書巻末文献の他に、

「新・悪の論理-日本のゲオポリティックはこれだ」

(倉前盛通著、日本工業新聞社、1980年)

※倉前盛通先生のご存在は、よく存じ上げていませんが、

敬愛する故小室直樹博士やチベット亡命政府の外交官も

かつて務めておられたというペマ・ギャルポ先生のご推薦もあったことを

学生時代にちらっと耳に挟んだ記憶もありますので、

お薦めしておきます。

1980年代、「冷戦末期」の古いデータのようですが、

現在でも通用する日本では数少ない「地政学」の好著です。

をご紹介しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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One Response to “茂木誠先生の「世界史で学べ!地政学」「地政学」を「悪の論理」から「愛の論理」に転換させる「平和学」にしよう!!”

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