志村史夫さんの「こわくない物理学~物質・宇宙・生命」は、文系の方にとっても最適な「理系分野入門書」です!!
「こわくない物理学~物質・宇宙・生命」
文系の方にとっては、「理系分野」の専門書って
とっつきにくいですよね??
そんな悩みに答え下さるのが、前にも「寅さん」の
記事でご紹介させて頂いた志村史夫さんです。
文理双方の視点で、ご自身も敬愛される夏目漱石や
寺田寅彦に倣った「一般向けの軽い科学エッセー」の
感覚で、最適な「理系分野入門書」をお書きになっています。
それが、今回ご紹介させて頂くこの本です。
「こわくない物理学~物質・宇宙・生命~」 (志村史夫著、新潮社、2002年)
志村史夫さん(以下、著者)は、前にも当ブログでご紹介させて頂いた
『寅さんに学ぶ日本人の「生き方」』の著者です。
著者は、長年月にわたり日米両国で「半導体シリコン結晶工学」の
分野で研究開発を積み重ねられてきました。
そうしたご経験が生き生きと伝わってくる類書にはない
ユニークな視点で書かれているのが、この本の特徴です。
特に、「半導体結晶」の研究から学び取られた
「物質から生命へと至る過程」についての論考には、
「結晶の生長過程」の解説とともに
大変面白く読むことが出来ます。
この本を貫く「一本の柱」が、この「物質から生命への流れ」です。
これを中軸に据えて、「物質・宇宙・生命」に共通する
「誕生の秘密」についてよくわかる充実した内容構成となっています。
管理人だけでなく、文系人間にとっては
興味関心があっても、なかなか親しむことが難しい「理系分野」ですが、
そんな方にこそ、是非お読み頂きたい好著です。
最近、「技術の革新」とともに「人間の活躍可能な範囲」がどんどん
狭まりつつあるような世相にありますが、そんな不安な時代だからこそ
積極的に学んでいきたいものです。
この本を読むと、「機械(コンピュータ)と人間の違い」を知るうえでも
欠かせない「物質と生命の違い」についても学び取ることが出来ます。
「物から心は生まれるのか??」
最先端の物理学や脳科学の分野では、「人工知能」の研究開発とも相まって
目立った業績も積み重ねられてきているようです。
それに伴い、「人間の価値観や倫理」についても、さかんに議論されている
ところです。
この本では、最終的に「科学と哲学と宗教の三位一体化」を目指した
「学問の未来予想図」も描かれています。
理系分野に苦手意識を抱き続けてきた管理人だからこそ、積極的に「理系分野」の
書籍もご紹介させて頂いています。
21世紀は、ますます「人工知能」に負けないほどの「学際的視点」が、
人類にとって生き残りのためにも必須となってきます。
そういう時代の流れにもあることから、皆さんとともに「文理融合的思考法」を
積極的に学んでいこうと、この本を取り上げさせて頂きました。
生物と無生物の間に架け橋をかけながら考察する!!
生物(有機物)と無生物(無機物)の間に「大きな壁」はあるのだろうか?
ちなみに、「有(無)機物の<機>とは、いのちのこと」です。
20世紀までの科学史の流れでは、明確に区別されてきましたが、
「量子革命」や前にもご紹介させて頂いた「ブラウン運動の発見」から
21世紀現在では、一般に思われているほど「境界線」も厚くなくなってきているようです。
「ブラウン運動の発見」が、1827年。
「産業革命」に伴う機械打ち壊し運動が、1811年から1817年あたり。
この19世紀前半は、西洋社会におけるルネッサンスから近代科学の黎明期を
経て、ようやく人類の実生活に「衝撃」を与え始めた時期でもあるようです。
素粒子を実験観察していくと、
まるで「粒子が意志を持って動いている!!」ように見えたことから、
あらためて「物質(非生命体)と精神(生命体)の境目」についての
見直し作業が始まっていきました。
冒頭でも語りましたが、ロジャー・ペンローズ博士や
スティーヴン・ホーキング博士も「宇宙や物質の構造」を探索していく
過程で、「物質には意識があるのではないか??」との問題意識も
出てきたようです。
それでも、今もって
「生命の誕生の瞬間(物質から意識(心)が生み出される瞬間)」は
相変わらず「秘密のベール」に覆われているようです。
最近、ホーキング博士も「人工知能が人類に与える強い影響」について
警告されたようで、いわゆる「強い(人間に近い)AI(人工知能)」か
「弱いAI」かの違いはあるようですが、私たちにとっては、
いずれにせよ、決して無視出来ない議論でもあります。
そんな「緊急事態」も発生していることから、科学界においても
「物質と生命の境界域」についての議論に注目が集まっています。
この本を読むと、「物質から生命に至る過程」が物語風にわかりやすく
解説されています。
私たちが、子どもの頃に親しんだ科学教育では、
「物質の最小単位(これ以上分割出来ない)は、原子」とする
「原子論」という名称でしたが、
21世紀現時点では、「原子」よりも「細かく分割出来る物質」も
相次いで発見されてきたことから、著者は古代ギリシャの原点に
立ち返って「アトモス論」として読替区別されて解説されています。
「教育的知識は、科学の最先端知見よりも遅い!!」
私たちは、いつもこのことを念頭において日々学んでいく必要が
あります。
マスメディアも「扇情的な情報」しか伝えない傾向にあるので、
こうした「一見地味な情報」については、何も解説してくれません。
こうしたことから、
「あらためて情報は自分で求めていかなくてはならない!!」
「日々、自己教育(研鑽)を積み重ねていくしかない!!」
という点も、あらためて教えてくれる本でもあります。
あらたな「生命哲学」を求めて・・・
「物質と生命の違い」について、まとめますと、
「物質=秩序から無秩序への流れ」
「生命=無秩序から秩序への流れ」を表現していそうです。
この本では、「宇宙論」についても解説されていますが、
今回は紙数の関係で省かせて頂きます。
著者の問題意識は、「物質」「宇宙」「生命」の
それぞれの起源と構造を探っていくと、すべてに共通する
「美しい世界」が見えてくることにあります。
ただ、すべての世界を分析していっても「有限な」人間には
わからない一点があります。
それが、「意識であり心」です。
そもそも、理性以前に彼方から落ちてくる「直感」は
どこからやってくるのだろうか?
ここにこそ、創造を基礎づける「神秘の杖」があります。
それを、「神」とも「仏」とも「サムシンググレイト(村上和雄)」
とでも呼ぶしかない「何か」です。
著者は、ベルクソンの「創造的進化」を紹介しながら、
「生命の(目に見えない)盲目的意志」についても考察されています。
この視点から、著者は「近代科学の限界」に迫っていきます。
近代科学の「世界観」・・・
それは、私たちの「社会」に張り巡らされた「糸であり網」でもあります。
政治、経済、宗教における世界観にさえ「映し出されてきた近代的自我」を
克服できないでいる「人間像」が、まさに現在
行き詰まりの様相を呈し始めています。
こうした一連の「近代的世界観」を根拠づけてきた
「目的論的(機械論的)世界観」に終止符を打つべき時期が
来たのではないかとも論じられています。
著者は、インド哲学や数々の仏教の教えから<たとえ>を借りて
「有機的な生命哲学」を再構築する知識・知恵を提供しています。
「華厳経」にあるような「一即一切、重々無尽」は、
「全体性と内蔵(在)性」の関係性をうまく表現しているようです。
これは、「全体主義」ではありません。
「全体主義」は、人工的(機械的)な強制的世界観ですので・・・
数学に親しみを感じられる方なら、「フラクタル構造」でしょうか?
「自然な相似形の合わせ鏡」とでもイメージして頂ければ
よろしいのでしょうか?
最先端の物理学でも、「物質の行き着く果ては、エネルギー(光)」とも
イメージされているそうです。
現在、多様な「仮説」が乱立していますが、共通しているのは
「本来は、みなともに収まるべき場に収まる!!」という
イメージ像のようですね。
著者も、「エントロピー増大の法則(秩序化から無秩序化の流れ)」を
説明されている箇所で、
私たちの住む地球が「閉じた体系」であることにも注意を促しておられますが、
原点回帰とは、この「視点」に戻ることでもあるようです。
人間を含め、生命体は「負のエントロピー(無秩序化から秩序化への栄養補給!!)」
を食べながら生きていますが、この「閉じた」地球上で暮らす限りは、
「エネルギーの有限性」にも最大限配慮しなくてはなりません。
現在、フリーエネルギーはまったく困難であれ、
「太陽エネルギーから、無尽蔵なエネルギーを供給するシステム」が
開発中とのことですが、安易な「楽観論」にも問題が潜んでいるようです。
その「無尽蔵??な太陽エネルギー」が「地球の生態系」にいかなる重大な影響を
及ぼすのかは、「地球温暖化問題」以上に「未知の領域」なのですから・・・
やはり、謙虚になって人類の進歩・進化を考えていかなければなりません。
言うまでもなく、地球は人類のみの理想郷ではないのですから。
そういう視点で考察していくなら、ブッダの「物質・宇宙・生命観」には、
現代のあらゆる学問の行き詰まりを打開するヒントがあるのではないでしょうか?
この本を読みながら、あらためて気付かされました。
「マインドフルネス」
世界的な有名企業でも実践導入されているという「原始仏教の教え」です。
この本における量子物理学的表現をするなら、「すべては相補性」でしょう。
これが、21世紀以降の「合い言葉」です。
「有限なエネルギー・資源対策」としても、私たちのこれからの「生き方」に
是非取り入れていきたい考えでもあります。
この本は、狭義の「理系的視野」に止まらない「奥深く広い世界観」まで
学べるようになっています。
そういうことで、皆さんにも是非「理系分野入門書」としてお薦めしたい1冊
であります。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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[…] 前にも当ブログにてご紹介させて頂いた、 […]
[…] 前にもご紹介(記事①、記事②)させて頂きましたように、 […]