「いまがわかる世界史の教科書」は、必読です!!世界史の中の日本の今後の行く末を一緒に考えましょう!!
「いまがわかる世界史の教科書」
洋泉社編集部が、世界史の中における
現代日本の立ち位置を考える際のヒントを
わかりやすく解説されています。
グロバーリズムとナショナリズムの
せめぎ合いに揺れ動く現代世界史・・・
産業技術史のうえでも、18世紀の産業革命後の
世界史に酷似しつつあるようです。
2016年は、様々な意味で
「世界史における大きな分岐点」となる予感がします。
今回は、この本をご紹介します。
「いまがわかる世界史の教科書」 (洋泉社編集部編、洋泉社、2016年)
今回は、いつもとは異なり、洋泉社編集部の企画として
「いまがわかる世界史の教科書」をテーマとして、
各地域事情に詳しい専門家の協力を得て編集された
「世界史の教科書」を活用しながら、皆さんとともに
学ぼうと思います。
前回の記事でも、日本の幕末史を通じて「世界史の中の日本」を
考察してきましたが、今回は「現代史」として学びます。
2016年は、5月に「伊勢志摩サミット」も控えており、
世界中の各界の有識者が来日される予定であります。
わが国と大変関係の深いアメリカでは、大統領選挙もあります。
一方で、ヨーロッパ情勢も再び複雑怪奇となりつつあるようです。
イギリスのEU離脱を問う国民投票、ドイツ・フランスなどの
EU内における路線対立、EUの経済危機の中心地ギリシャ、イタリア
スペイン・ポルトガルなどの地中海周辺の南ヨーロッパ諸国の
経済危機など。
北欧諸国やスラブ系諸国、トルコ周辺国も移民・難民問題などを
抱えており、ヨーロッパ諸国も全般的に大変な「経済的苦境」に
立たされています。
ロシアも、英米を中心とした西欧諸国との間で、「ウクライナ問題」を
抱えており、絶えず緊張状態にあります。
翻って、日本周辺の東アジア情勢も日中韓の三国の間で、様々な難題を
「三つ巴」のように抱え込んでいます。
経済における新興国BRIC’s諸国(ブラジル=中南米諸国連合、ロシア、
インド、アフリカ・東南アジア連合とも多様な利害関係を持つ中国)も
目覚ましい大躍進の陰には、「歪んだ経済格差」も生じてきており、
政情はますます不安定になりつつあるようです。
「海洋国家」日本としては、台湾総統選挙の結果も
今後の日中関係にとっては、忘れてはならないテーマです。
本書でも触れられていますように、現代中国は、
あらたな「大航海時代」を迎えているそうなので、
今以上に深刻な利害対立に発展しないことを祈るばかりです。
このように、「地球儀を俯瞰する日本外交」にとっても、本年は
地球レベルにおける「経済格差問題」の解決に向けて、いかに
軟着陸させていくかの正念場に差し掛かっています。
20世紀における「経済格差」を巡っては、社会主義・共産主義や
国家社会主義(ファシズム=全体主義)といった面から、
自由資本主義にも修正を迫らせました。
それが、ケインズ型資本主義経済革命をもたらしました。
また、20世紀は、18世紀のフランス革命以来の近代的理念
(自由・平等・博愛などの抽象的理想)の限界も至る所で
綻びを見せ始めるようになりました。
第一次・第二次の両「世界大戦」を経て、近代国民国家という
「近代型」のナショナリズムに見直しを迫る「民族独立革命」が
第二次世界大戦後には相次ぎ、その激しい動きも大国間の思惑の中で、
相互の壮烈な政治的駆け引きという難題を抱えながら、
現代に至っています。
特に、21世紀における「経済格差」解消を巡る思想的運動として
勃興してきたのが、世界史の中で人類の壮大な知的遺産を残してきた
にもかかわらず、絶えず「自尊感情」を傷つけられてきた
イスラーム文化圏でした。
このイスラーム思想は、20世紀における「近代的経済革新主義」とも
異なる、あらたな公平な経済的価値観をも問題提起してきたことから、
現在、世界中で大きな影響力をもって浸透しつつあるようです。
もとより、再び、世界を震撼させるような事態を引き起こすことなど
あってはなりませんが、世界に不平等に極端な「経済格差」が拡大する一方の
現状では、決してそうした問題提起も見過ごすことは出来ません。
そこで、歴史的激動期で迷った時には、「賢者は世界史に学ぼう!!」ということで、
今回は、この本を取り上げさせて頂きました。
「世界史」の知識がない方にも、出来るだけわかりやすくお伝えしていこうと
努力いたしますので、どうか温かくお見守り頂きながら、
ともに世界の明るい将来を誠実に探究して頂ければ幸いです。
キリスト教文化圏とイスラム教文化圏の接点
まずは、本格的な本書に関連する考察に入る前に、本書の内容構成を
まとめておきます。
①序章「なぜ世界史の知識が必要なのか?」について、
大きなキーワードが、「オスマントルコ帝国」と移民難民問題です。
この切り口から、
②第1章「中東問題」、③第2章「ヨーロッパ問題」に進み、
④第3章「アジア問題」、⑤第4章「アメリカ問題」として編集されています。
アジア問題についても、一見すると「イスラム問題」や「移民難民問題」の
関連性は薄いように思えますが、必ずしもそうではないようです。
この点は、本書でもあまり詳細に解説されていませんので、
管理人の方でも補足説明させて頂こうと思います。
さて、ここからが本題に入ります。
その「オスマントルコ帝国」ですが、
イスタンブール=ビザンチウム(コンスタンティノープル)という
首都がありました。
このオスマントルコ帝国は、イスラム系の国家ですが、
すでに建国前から、現代にまで至る緊張関係の布石がありました。
オスマントルコ帝国以前に存在した
セルジューク=トルコ(これもイスラム系)が、
キリスト教・ユダヤ教・イスラム教の三大聖地であるエルサレムの
占領から、キリスト教徒の巡礼を迫害したことが、キリスト教徒による
「聖地回復運動」としての、「十字軍」につながるのですが、
現在では、「西欧側」の事実誤認から開始されたとの見方もあるようです。
この十字軍遠征と拡大勃興し続けるイスラーム諸国家との間で、
大きな緊張が生じたことが、現在にまで持ち越されてきただけに、
厄介なのです。
もっとも、このキリスト教文化圏とイスラム教文化圏の対立緊張関係が、
人類に大きな貴重な知的財産をもたらしただけに、
歴史とは心底分からないものです。
現代の最先端コンピュータ技術の基礎である数学的知識から
「アルゴリズム」が発明されたり、その他にも人類に多大な恩恵を
もたらしました。
この事例のように、キリスト教文化圏とイスラム教文化圏の相互の長所が
混ざり合って成長していきました。
ところが、ここで問題が発生します。
世界史は、ほとんどが「西欧」的価値観で語られてきたことから、
キリスト教文化圏のみがクローズアップされ、イスラム教文化圏の
世界史における貢献が、無視されていき、彼らの「自尊感情」を
大きく傷つけてしまったのです。
このことで、イスラム教文化圏の人々に、後々まで「心の傷」を
与えてしまうことになったのです。
ここで、時代は、オスマントルコ帝国建国時に話を戻しますが、
上記のようにキリスト教文化圏であったビザンツ帝国の首都であった
コンスタンティノープル(ビザンチウム)は、
オスマントルコ帝国による攻撃で、陥落します。
それで、この首都名がイスラム風に改名されてイスタンブールとなり、
現在まで、オスマントルコ帝国の名残を残したトルコ共和国へと至るのです。
もっとも、現代トルコは、第一次世界大戦を経てケマル=パシャによる
近代化改革路線でイスラムも世俗化され、現代のトルコ共和国に至るのです。
ちなみに、日本とトルコとの友好関係も、この時期の「近代化」とも
関連してくるのですが、説明し始めると、
本題からかけ離れてしまいますので、今回は省略させて頂きます。
では、本題であるキリスト教文化圏とイスラム教文化圏の関連ですが、
トルコは、イスラム系の「イスタンブール」の改名前には、
東ローマ帝国=ビザンツ帝国の「コンスタンティノープル」でもあったことから、
ギリシャ正教(東方キリスト教会)でもあり、ここでも聖地エルサレムと
同じ問題があります。
さらに、同じキリスト教同士の緊張関係もあるだけに、なおさら複雑です。
ここで、関連事項として触れておきますが、現在「東方教会」系のロシア正教と
かつての「西ローマ帝国=ローマ・カトリック教」との対話が模索されていますが、
こうした世界史における宗教対立を見てきただけに、大変好ましい変化だと思います。
ところで、このようにトルコでも多少の難題は抱え込んでいるのですが、
後にも触れます中東情勢とは異なり、何とか共存しているようです。
このエルサレムとイスタンブールにおける混乱の大きな違いには、
「近代化」という問題もあるだけに、今後の中東情勢を考えるうえで、
トルコ的視点も参考になるようですが・・・
現実には、なかなか簡単には進まないでいます。
このように、トルコを中心とした「現代東方問題」、
そして、次に語ります「中東問題」が、今「現代イスラム国運動」とも
相まって、非常に世界史の流れを複雑にしています。
本書でも、詳細な解説がなされていますが、「現代イスラム国運動」は、
かつてのイスラム教文化圏が最大化した「ウマイヤ朝」を模範としているようです。
相当な広範囲です。
世界史を選択された方ならご存じだと思いますが、現在のスペイン・ポルトガルに
当たるイベリア半島にあるアルハンブラ宮殿や、
インドのムガール帝国にあるタージ=マハル廟も「イスラム系」です。
アルハンブラ宮殿は、アラブ系の「ナスル朝」、
ムガール帝国は、トルコ系のイスラム文化であり、必ずしもアラブ系の
「ウマイヤ朝」と重なる訳ではないですが、それでも広範囲ではあります。
このように現在のシリアを拠点とする「イスラム国」だけではなく、
トルコ系やイラン系、モンゴル系などが、続々と「イスラム系国家」を
形成していった時期が、世界史にはあるのです。
もっとも、現在世界中の注目の的である「イスラム国」は、
厳密には、こうしたイスラム諸文化とも大きく異なるようですが、
少なくとも、イスラム教徒にとって根深い「自尊心」が傷つけられてきた
歴史的背景事情は、忘れてはならないところです。
これらの一連の「イスラム教文化圏」は、アラブ系のみならず
「拡大の一途」を辿ってきましたが、やはり一番見逃し得ないのが、
アラブ系の「イスラム諸国家」であります。
現代の中東情勢は、ほとんどが、第一次世界大戦中の「西欧諸国」が
混乱の種を蒔いた点から始まっています。
ことに、イギリスの二枚舌・三枚舌・・・外交による、各民族間の
分断統治方式は、あまりにも悲惨な状況をもたらしたことは知られています。
アラビアのロレンス中佐も、草葉の陰で泣いているそうです。
このような事情もあるだけに、イスラム圏外にある日本外交としては、
下手に深入りすると大きなやけどをすることが予測されるだけに、
なお一層慎重な姿勢が要請されるところであるようです。
日本とイスラムの接点は、中東のサウジアラビアとの関係もありますが、
現在のサウジアラビアとイランとの厳しい関係から判断しますと、
日本としては、穏健なイスラム系国家であるトルコとの連携で
「平和への道」の仲介役に徹すべきかもしれません。
それでも、中東とトルコでは、同じイスラム教文化圏にあるとは言っても、
これまで語ってきましたように、かなり大きな「断絶」もあるようなので、
余程の慎重さが要求されそうです。
その意味でも、「世界史の中における日本」という視点が、今後とも
ますます重要になってくることは否めません。
イスラム国と移民難民問題と日米関係のあり方とは??
さて、「イスラム国運動」もさることながら、
世界中で「今なぜイスラム教なのか??」に注目が集まっているようです。
それは、「経済格差」に対する考え方が、
世界3大宗教(キリスト教・ユダヤ教・イスラム教)の中でも、
「イスラム教」が断然「経済格差問題」に敏感だったからのようです。
最近ではイスラム金融など、「イスラム系商法」にも注目が
集まっているようですが、ここでも独自の経済感覚に由来するようです。
「神の前の平等」
私たち日本人を含め、西欧諸国では「政教分離」が当然視されている
こともあって、「法の前の平等」には親しみを感じていますが、
一般的には「聖俗分離文化にない」とされるアラブ系イスラム文化圏では、
法よりも「神の前の平等」が重視されるようです。
詳細は、本書をお読み頂くとしまして、ここから「世俗法」よりも
「イスラム(ウンマ)共同体法(シャリーア)」が重視されています。
つまり、アラーの神の使徒(ムハンマド=マホメット)のような
預言者である代理人(後継者)の意味のある「カリフ」の言葉、
なかんずく「正統」なカリフの法解釈が重視されるといいます。
そこから、誰が「正統カリフ」なのかを巡っても、問題があるようですが、
一応その判断に従いながら、イスラム社会は平和的に運営されてきたといいます。
「経済格差問題」についても、「世俗法」よりも「聖なる法」が
重視されますので、出来るだけ「世俗的格差」を生じさせないような
経済制度に改善していったことも、イスラム史から読み取れます。
特に、税制面では「ハラージュ」などのように、細かい点では
差別もあったようですが、イスラム教徒であれば
「アラブ・非アラブ間の不公平」を解消していったとされています。
このように経済格差に敏感で、経済平等を追求する点でも
イスラム教の世界への布教拡散には強い促進力があるようです。
ところで、イスラム文化圏では、資本主義経済そのものの発展条件にも
強い動機付けがなかったようで、資本主義的経済活動から外れてしまう
貧困層も生まれやすく、複雑な中東史の歴史的経緯もあって、
諸外国へ移民難民が大量に流出していきました。
特に、ドイツではトルコ系移民、フランスではアラブ系の移民を
「安価な労働力」として受け入れてきた経済事情があるだけに、
好景気ならともかく、不況期になったからといって、おいそれと
帰国を促すこともままなりません。
なぜなら、本国そのものが不安定であり、彼(女)らも命がけだからです。
ということで、西欧諸国における近代国民国家の理念そのものが
ネックともなり、不安定就労問題もスムーズな解決には至らないのです。
不況期になればなるほど、国内労働者と国外労働者との間で
どうしても摩擦が生じてしまうのは、避けられないところです。
こうした厳しい現状を、現代資本主義経済の仕組みでは、
完全に解消することも難しいことから、一向に移民難民問題の解決にも
至りません。
そこで、私たちの住む東アジア情勢と日本およびアメリカの明日を
ともに真剣に世界史的観点から考察してみましょう。
アジアだけでも、イスラム文化は、インドやインドネシアなど
日本にとっても関係のある諸国に浸透してきました。
中国も、世界史的にはイスラム文化を受け入れていた時期もあります。
意外に知られていませんが、日本にもイスラム信者はおられます。
そのような状況で、中国・韓国などの隣国も経済格差問題を抱え、
日本国内でも相当な経済格差が拡大する一方にあります。
ですから、特に「排外的な差別感情」を抱いていなくても、
安易な移民難民受け入れ策に根強い反対もある訳です。
現実的な生活防衛の観点からは、多くの日本国民が
「移民難民受け入れ政策」に対して、心配になるのもやむを得ないでしょう。
それでなくても、少子高齢化などの難問も山積みであるだけに、
政官財による安易な「安価な労働力」として移民難民の受け入れを、
本気で考えているとするなら「正気の沙汰」とは思われません。
今ならまだ十二分に事前対策を備える余地はあります。
冷静に、世界情勢を見回せば、いずれの国々も(移民国家を大前提としてきた
アメリカやフランスでさえも)これ以上の受け入れに苦労しているのですから、
ここは真剣に当局者の方には「善処策」を練って頂きたいところでもあります。
「深刻な国内外紛争に発展しないためにも・・・」
そこで、最後に今後の日米関係のあり方を考察することで、
締めくくらせて頂きたいと思いますが、日本にとっても
非常に興味関心ある本年のテーマが、アメリカの大統領選挙です。
日々、日本でも、共和党候補の(不動産王)ドナルド・トランプ氏と
民主党候補のヒラリー・クリントン氏の大接戦が繰り広げられている様子が
伝わってきていますが、大方の日本人にとっては、どちらの候補に
勝利の軍配が上がったとしても、正直心配なところだと思われます。
トランプ氏の過激発言も心配な種ですが、クリントン氏も民主党で
「リベラル寄り」といっても、その国外政治運営には心配の種もあります。
特に、民主党の現職オバマ大統領が、本書でも触れられていますように、
「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言されているだけに、今後の
中東情勢や東アジア情勢は、より一層厳しい状況になりそうで、
世界平和を真剣に祈る者としては、不安になります。
ロシア情勢も、未知数なところもあるだけに、冒頭でも語りましたが、
5月の「伊勢志摩サミット」でも、真剣に生産的な議論を日本から
提起して頂くことを願っています。
ということで、長々と語ってきましたが、現在ただ今においても
「幕末史における世界の危機」と同じような不安定な状況が、
再び訪れようとしているだけに、読者の皆さんを
ことさら不安にさせるような気持ちはありませんが、皆さんにも
本書をご一読頂き、世界史的観点から「地球儀を俯瞰する日本外交と
明るく安心出来る明日」をともに考察して頂ければ幸いです。
なお、世界史における「経済史」を簡単に
おさらいしたい方には、
「経済は世界史から学べ!」
(茂木誠著、ダイヤモンド社、2013年)
「やりなおす経済史(本当はよくわかっていない人の
2時間で読む教養入門)」
(蔭山克秀著、ダイヤモンド社、2014年)
※両著ともに、大学受験予備校の名物講師が
わかりやすく解説された一般向け教養書ですので、
楽々??読み進めることの出来る好著です。
この他にも、わかりやすく面白い世界史入門書は
ありますが、また追々、当ブログのラインナップとして、
追加していきたいと思いますので、楽しみにして
お待ち頂ければ幸いです。
また、イスラム教については、
「日本人のためのイスラム原論」
(小室直樹著、集英社インターナショナル、2002年)
をご紹介しておきます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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[…] なお、「トルコ」については、こちらの記事もご一読下されば幸いです。 […]