「楽観主義者の未来予測(上)~テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする」人類は、必ず試練を乗り越える!!
「楽観主義者の未来予測(上)
~テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする~」
あのホーキング博士の無重力体験をアシスト
したことでも有名な起業家が、未来予測されています。
ちょうど本日、人工知能ソフト「アルファ碁」がプロ棋士
相手に初勝利したとのニュースが飛び込んできたばかりの日本。
相次ぐ「人工知能」の躍進の中で、不安になる私たち人類ですが、
悪いことばかりでもないようです。
本日より2回に分けて、この本をご紹介します。
「楽観主義者の未来予測(上)~テクノロジーの爆発的進化が世界を豊かにする~」(ピーター・H・ディアマンディス&スティーヴン・コトラー共著、熊谷玲美訳、早川書房、2014年)
ピーター・H・ディアマンディスさんは、アメリカの
Xプライズ財団のCEO(最高経営責任者)、本書でも
紹介されているシンギュラリティー大学の共同創業者にして、
10を超える宇宙・ハイテク関連企業を創設された起業家です。
一般的には、あの車椅子の宇宙物理学者スティーヴン・ホーキング
博士の無重力体験をアシストされたことで有名だそうです。
そして、この本のもう一人の共著者がジャーナリスト・ライター兼
起業家でもあるスティーヴン・コトラーさんです。
今回は、お互いの共著ということで、「著者」にて統一させて頂く
ことを最初にお断りしておきます。
さて、今回ご紹介させて頂くのは、今もっとも皆さんが心配されている
「人工知能(AI)と人類の将来の関係」についてです。
ご紹介させて頂きましたが、今回は「楽観派」の方です。
「人工知能(AI)」には、大きく分けて二種類あると
されています。
私たち人類の知的能力に比較的近い距離から見て、
「強いAI」から「弱いAI」まで幅広く研究開発されています。
本日の産経新聞夕刊(大阪版のみ?)の記事によりますと、
「第3次ブーム」と呼ばれるところまで来ているようです。
冒頭でご紹介させて頂いた、グーグル傘下の人工知能開発ベンチャー
「ディープマインド(イギリス)」が開発した囲碁のコンピュータソフト
「アルファ碁」は、上記の定義からすると「強いAI」のようです。
記事によると、『開発チームは、やみくもな計算をやめ、
膨大なデータを学習し判断能力を高めるAIの「ディープラーニング」と
呼ばれる新技術などを組み合わせた。』とされており、
「自己学習能力」を持ったいわゆる「強いAI」に該当するようですね。
この「強いAI」が、生身のプロ棋士に初勝利したそうなので、
かなりの「反響」になったということです。
この20年のコンピュータテクノロジー関連の技術革新は、
目を見張る勢いで進化してきたようです。
そんな中で生きる私たち人類には、今後どのような未来が
待ち受けているのでしょうか?
これだけ驚異的なスピードで、人類の知的能力に迫ってきたのですから、
いかにも「悲観的な将来像」が到来するようにも予想されますが、
よくよく考察してみると、悪いことばかりでもないことに気付きます。
これからも、「人工知能関連」の書籍は追々ご紹介していく予定ですが、
このような「急激な歴史的転換期」だからこそ、冷静に考察を深めながら、
皆さんとともに良質な情報を共有していかなくてはなりません。
そこで、今回は「楽観主義者」の立場から「不安やおそれ」を軽減して
頂こうと、この本を取り上げさせて頂きました。
マルサスの「人口論」の見方は、すでに時代遅れなのか!?
この本の全体像は、「潤沢な世界の実現へ向けて・・・」を
「最終目標」として、「指数関数的テクノロジー」を
いかに人類の「明るい未来」に向けて有効活用していくのかの
「見取り図」を描くことから始まります。
その過程で、必然的に出くわす「人口問題」「食糧問題」
「資源エネルギー問題」の現状分析と解決方法について
詳細な解説が展開されていくのが、上巻の要約です。
1970年代に、ローマクラブが提示した「成長の限界」は
日本でも多くの方に知られており、学校教育などでも
その内容が刷り込まれてきました。
その前提にあるのが、マルサスの「人口論」でした。
簡単に要約すれば、
「人口増加に、食料エネルギーの供給が追いつかない!!」
「地球資源は、有限である!!」
そのためには、「人口調整する必要がある!!」
との考えで、今に至るも地球上の大多数の人々の反対にもかかわらず、
「陰に陽に」現実に「人口調整」されてきたようです。
当ブログでは、もとより安易な「陰謀説」などを煽ったりするのが
目的ではありませんので、慎重に考察を深めていきたいと考えていますが、
全体的に観察してみれば、20世紀末あたりから現代に至るまで、
このような「悲観論」が満ち溢れているように思われます。
そうした現実的なマイナスイメージ像は、やはり皆さん漠然とでも
お持ちであるようなので、著者も最初に不安を払拭するための知識を
提供されています。
具体的には、ノーベル経済学賞受賞者で、最近話題になってきた
「神経(心理・行動)経済学者」のダニエル・カーネマン氏などが
提唱されてきた「仮説」(認知バイアス=偏り)の説明をされています。
その説明は、この本をお読み頂くとして、私たち人類は、
長きに渡る歴史的過程から「欠乏感」に悩まされてきたことが、
脳科学の研究などからも詳細に判明してきたようです。
そのあたりは、前回ご紹介させて頂いた「情動」と「感情」のテーマでも
語らせて頂いた点ですが、その知見によると脳内の「旧皮質」と「新皮質」
とでは、「神経回路における認知処理速度」に大きな差があるようなのです。
つまり、21世紀現在になっても、「人類の脳の処理速度(反応度)は
原始(狩猟採集)時代のまま」だそうです。
人類史から見ると、圧倒的に「狩猟採集時代」の方が長かったということです。
「農耕牧畜革命」は、今からたった約1万年前ですし、「産業革命」にしても
たかだか200年、そして現在進行中の「情報通信革命」はここ20数年の出来事・・・
確かに、冷静に人類史を振り返ると「ものすごいこと」が起きています。
そうした人類史を踏まえたうえで、著者は冷静に「現状分析」しながら、
それでも少しずつ少しずつ非常にゆっくりとですが、「累積的な進歩」を
してきたことを強調されています。
そして、これからも人類が自然とも相互協力しながら、このような
「過酷な試練」を乗り越えていく未来像を提示されています。
もちろん、相変わらずマルサスの予言は完全に外れた訳でもないようですが、
「有限」で「閉じられた生態系」の中にあっても、人類がテクノロジーとともに
謙虚に自然や歴史からの教訓を汲み取りながら、調和していく未来図を
語っていきます。
知られていない技術革新が多すぎる!!
この本を読むと、まったく公のマスメディアでは報道されていないような
「貴重かつ良質な情報知識」を学ぶことが出来ます。
特に、「最新農業革命の裏面事情」や「遺伝子組み換え生物に関する誤解」
などの箇所は、必読です。
最近、環境に優しい経済ということで、再び「自給自足文化」が
見直されてきているようですが、やはり「限界」があるのが
現実的な帰結でしょう。
また、人類史の中で「農業」が紛争や環境汚染の原因となってきた
ことが、意外にもあまり正確に知られていないようです。
20世紀における「農業革命」の実態は、「石油や農薬産業保護」
だったようですし、「土耕栽培」が主流でしたので、そのことが
「土壌や水質汚染」も招いてきました。
しかも、地球上の土地は有限のうえ、地域によって天候事情などの
関係も絡み、収穫が不安定だったことも難点でした。
そうした、「20世紀型農業革命」からの「革命的転換」が、この本でも
詳細に解説されている「水耕栽培」や「垂直農場」の手法です。
実は、「水耕栽培」はすでに第二次世界大戦前から、その「発想」自体は
あったようですが、本格的な導入は「戦後」からでした。
「水耕栽培」の様子は、ご存じの方もおられるかもしれませんが、
龍村仁監督のドキュメンタリー映画「地球交響曲」でも「知る人ぞ知る」
農法です。
この映画を見る限りでは、「遺伝子組み換え作物不安(反対)派」の方でも、
安心出来そうな栽培法のようです。
この映画では、大阪の某企業が「トマトの水耕栽培」の模様を紹介しているのですが、
それによると「遺伝子組み換え作物」や「特殊な種子」も使用せずに、普通に
「水耕栽培」した結果だけで、平均以上の収穫量が得られたそうです。
そこで、この上巻で特に著者が強調されているのが、「良質な水資源の確保」と
「テクノロジーを使用したエネルギー再生活用法」です。
また、著者は「培養肉」についても紹介されています。
これも、「人工的な遺伝子組み換え作物」の一種のようですが、
一部の動物愛護団体の方も支持しているようで、従来の「家畜栽培」よりは
安全かつ「動物に優しい」ようですね。
エネルギー問題に関しても、「藻類や生ゴミなどの活用法」が紹介されています。
出来るだけ、自然の生態系をこれ以上損傷させずに、「90億人もの人類を養う」
ためにも、水面下の公に知られていない世界では地道に研究されているようです。
著者の予測では、今から「20~30年以内」の未来に実現される技術だそうですが、
テクノロジーは、「指数関数的」に「ある日突然(ティッピング・ポイント)」が
来れば、爆発的に普及する性質があるようです。
数学的には、「相転移のような緩やかなカーブを描いて段々と上昇するグラフ」で
表現出来るようです。
ここに図表を挿入出来ればよいのですが、その技術力が管理人にはありませんので、
この本の豊富な「図表(参考資料)」をご参照下さいませ。
最後に、もう一度皆さんが一番心配されておられる「テクノロジーと雇用の将来」
について、まとめておきます。
著者も明日ご紹介する予定の下巻の巻末で、悲観派からの反論が予想される
「指数関数的テクノロジーにひそむ危険」についての、著者なりの問題意識が
「付録」として掲載されています。
著者自身も、公平を期するために「付録」の説明だけでは「不十分」だと
認めておられますが、悲観派から当然予想される反論に対しては、
読者自身にも十二分に考えてもらうための素材を提供されています。
具体的には、①バイオテロ②サイバー犯罪③人工知能と失業問題について
触れられていますが、やはり③には特に注意を払っていかなくては
ならないようです。
③は、「欠乏感(豊かさの欠如や不公平さ)」にもつながり、結果として
①②の問題を悪化してしまいかねませんので、これからも慎重に注視して
いく必要があります。
著者もこの本で重点的に主張されていますように、その際には、
「テクノロジーの進化度合と失業率の増加との相関関係(ことに時間差)」
には、最大限の手当が必要となることが予測されます。
著者の「オープンコース教育(オンラインなどによる教育<低価格>化)」
に対する論考には、正直「過度な楽観」が感じられたのが、「管理人の本音」です。
その理由は、この過程で必然的に生じるであろう「新規就労への移行教育訓練」で
大きな「格差」が生じてしまうと、厳しい現状をより強めてしまうことにも
なりかねないからです。
残念ながら、ここは利益追求を主たる目的とする「民間企業」には厳しい点なので、
公共的な支援制度を今以上に工夫して「セーフティーネット(安全網)」を
構築していかなくてはならないところです。
そして、「未来学」のように将来的な全体像を各人が描いていける教育も不可欠です。
著者は、そのような目的でシンギュラリティー大学を設立したそうですが、
そうした試みは私たちもテクノロジーの恩恵をフル活用して万人と協力しながら
人類の知的財産を共有していかなくてはならないでしょう。
自己宣伝めいて大変恐縮ですが、管理人もささやかながら「書評ブログ」を
通じて、知的情報を皆さんとともに共有していきたいと思っています。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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