岩村充先生の「中央銀行が終わる日~ビットコインと通貨の未来」仮想通貨の衝撃から見た中央銀行の役割と経済民主化・安定性考察
「中央銀行が終わる日~ビットコインと通貨の未来~」
元「日本銀行」職員の岩村充先生が、
ビットコインを始めとした「仮想通貨の衝撃」と
今後の通貨未来像、中央銀行の役割(主に、金融政策面)に
ついて、分析考察された解説書です。
2016年現在、アベノミクスの金融主導の目玉である
未曾有の量的金融緩和策もマイナス金利導入や
多少の円高傾向などで正念場を迎えています。
今回は、この本をご紹介します。
「中央銀行が終わる日~ビットコインと通貨の未来~」 (岩村充著、新潮選書、2016年)
岩村充先生(以下、著者)は、元「日本銀行」職員。
「日本銀行」企画局兼信用機構局参事を経て、
現在は、早稲田大学大学院(ビジネススクール)教授を
務められています。
著書には『電子マネー入門』や『サイバーエコノミー』など
最新の「情報経済学」の最前線や
前著『貨幣進化論~「成長なき時代」の通貨システム』
(新潮選書、2010年)のように「未来貨幣資本主義経済論」など、
今後の未来経済を占ううえで貴重な論考を提供されてこられました。
本書は、前著『貨幣進化論』では貨幣の過去史「どこから来て、どこに
いるのか」に焦点が当てられた論考だったようですが(本書12頁<はじめに>より)、
本書『中央銀行が終わる日』では、貨幣の現在進行形と
今後の未来予想図「今どこにいて、どこへ行くのか」について、分析考察されています。
著者は、冒頭にも触れさせて頂きましたが、元「日本銀行」職員で、
現在の「日銀政策」の内情に通じた研究者でもあります。
そんな内情分析から、目下実施中の「金融政策」の「限界」も
見えてきたとも指摘されています。
外部からは、ビットコインなどの国家による正規の法定通貨でもなく、
未だ日本では、正式な「通貨扱い」にまでは至っていないとされる
「仮想通貨」が絶えず「衝撃」を与え続けているといいます。
著者は、本書で、あくまで、2014年にその倒産劇で日本社会に
衝撃を与えた「マウントゴックス社」による「取引システムの不安定性」に
ついては「否定的」な意見を出されていますが、ビットコインそのものについては
「経済民主化(つまり、貨幣使用選択の自由度が高まるなど、国家通貨非常時に
おける個人的リスク分散に資するなど)」の観点からは、
「肯定的」な意見も出されています。
もっとも、日本における「現行の」ビットコインの「安定性」については
かなりの疑問もお持ちのようですが・・・
(本書166~170頁他ご参照)
とはいえ、2016年現在、未曾有の量的金融緩和政策を主柱とする
「金融主導型経済成長戦略」を看板に掲げたアベノミクスの成果も
今ひとつ、「一般」国民の間では実感を伴わないでいます。
直近の経済指標では、若干「プラス値」が出たともされていますが、
いずれも、ほぼ「ゼロかマイナス成長」と示されています。
マイナス金利が導入されるとともに、国内外の為替の値動きを
日々観察していても、「円高・株安」へと、当初の目論見から
外れていく景気の流れにあるとも懸念されています。
そんな中、今月末の伊勢志摩サミットで予定される
国際経済「協調」政策の合意内容や来年度の消費「再」増税の
「延期論」にも注目が集まっています。
いずれにせよ、日本経済はおろか、世界経済に一刻も早く
「経済安定性」と「経済民主化」が回復してくることを祈るばかりです。
ということで、皆さんにとっても、今もっともご興味関心のあるテーマが
何よりも「経済生活安定が第一!!」だと思われますので、
今回は、この本をご紹介させて頂くとともに、明日の「未来経済」を
ともに考えていこうと、この本を取り上げさせて頂きました。
ビットコインなどの「仮想通貨」の衝撃から見た「貨幣進化論」
さて、これからビットコインなどの「仮想通貨」について、
簡単にご紹介していこうと思うのですが、これが厄介な大難問(苦)で
あります。
管理人は、もとより、経済の専門家ではありませんので、出来るだけ
読者の誤解を避けるため、理解した範囲内で分析考察していく予定で
いますので、あらかじめご了承願います。
経済の実際的知識も、大学や新聞で学べる程度の「一般教養」でしか
ありませんので、時に「誤解」もあるかもしれませんが、
その時には、遠慮無く、優れた明解なコメントを頂ければと思います。
以下、どこまでも「明るい未来」に向けた「経済論」を目的に
考察させて頂くことにします。
「ビットコイン」という存在は、一般的な日本人であれば、
2014年のあの衝撃的な映像で知った方が多いのではないでしょうか?
普段、このような「電子決済システム」にせよ、
通常のプリペイド式あるいは後日精算式の「電子マネー」や
「ポイント制」などとも異なるのが、「ビットコイン」の特徴ですので、
おそらく大多数の方にとっては、無関係の事件だったかもしれません。
管理人も、この倒産会見で始めて、「ビットコイン」の存在を
知った人間の一人です。
ところで、「貨幣論」については、これまでも、下記関連サイト記事にも
ある西部忠先生による『貨幣という謎』でもご紹介させて頂いたところです。
(ちなみに、西部忠先生は、本書冒頭でも紹介されている
ハイエク「貨幣論」の翻訳者でもあります。
「ビットコイン」解説については、こちらの方がわかりやすいかもしれません。)
管理人も本書を読み進めながら、「ビットコイン」の「わかりやすい解説」を
イメージしながら、綴ろうとしているのですが、
詳細は、本書『第2章 来訪者ビットコイン-枯れた技術とコロンブスの卵』
(本書52頁~108頁)と、
『第3章 ビットコインたちの今と未来-それはどこまで通貨になれるか』
(本書110頁~170頁)をご一読されることをお薦めさせて頂きます。
とはいえ、それでは、あまりにも不親切ですので、
「わかり得た範囲内」で解説しておきますね。
①「ビットコイン」は、「貨幣」には成り得るようですが、
「通貨」ではないと、現時点ではみなされていること。
(他国はともかく、日本では少なくとも検討中とのこと。とはいえ、
「ビットコイン」とは性質も異なりますが、
「オンラインゲーム」上の「アイテムポイント??」などは
一部「通貨」扱いするなど、今週報道もあったところです。)
②「取引履歴管理台帳」に当たる「ブロックチェーン」という仕組みを
介した「仮想(オンライン上の)デジタル暗号通貨」が「ビットコイン」。
③この「取引履歴管理台帳」は、もちろん、「仮想掲示板」のような
ものなのですが、利用者間での「公開共有」が可能だとか。
④基本的に、「P2P(パーソンtoパーソン)」といった「直接相対取引」が
送金ルールだとか。
⑤「全体」の「統合管理者」が「不在」とする
「ネットワーキング型金融決済システム」。
つまり、国家における「中央銀行」のような「統御者」が存在しないということ。
⑥そして、ここが最大の他通貨との相違点であるようですが、
貨幣の「自己生成」が可能だということ。
これを、「マイニング(ゴールドラッシュに例えた金鉱脈採掘のような
イメージ??)」とその採掘者(貨幣生成者)を「マイナー」と呼ぶこと。
などなどが、「ビットコイン」の特徴だそうです。
この「まとめ」をイメージして頂くと理解しやすいかと思いますが、
「ビットコイン」は、単なる「貨幣」に止まらず「金融決済システム」まで
「自前」で調達する「金融通貨システム」のようです。
この「ビットコイン」の考案者とされる「謎??の人物」サトシ・ナカモト氏の
論文によると、「ビットコイン」は、現行の「法定通貨」や他の各種「お金」に
比べれば、かなり相対的に「安定的かつ民主的」な「通貨」とはいうのですが・・・
先程の事件も、「ビットコイン市場」における「取引所」が「故障」しただけで、
「ビットコイン」自体は、「安全」だとも説明されているのですが・・・
どうも、「胡散臭いなぁ~」といったところが、著者ならずとも、
一般人の「第一印象」ではないでしょうか?
(もっとも、「現行」の「ビットコイン運用会社」の
すべてが疑わしく怪しいとは、言っていませんよ。念のため。)
また、「中央銀行」といった「制御者」がいないため、
インフレ・デフレ的現象にどのように対処するのか?
「4年に1度半減期を迎える」など貨幣流通「量」を自動的に制御するなどの
様々な工夫もあるそうですが、よくわかりません。
とりわけ、その「製造コスト」がバカにならないようで
(電気料といったエネルギーコスト)、たかが取引の媒介手段である
「通貨」自体に「生成(労働)コスト」を持たせるなどとは、
それこそ「非生産的」ではないかとの意見もあるようです。
この点が、現状、様々な問題点は抱えているとはいえ、
中央銀行もしくは政府発行の「法定通貨」の方が、
はるかに「製造コスト」も安く、使い勝手も良さそうです。
「偽造対策」に関しても、一長一短あるそうですが、
私たちが、普段使用量の多い「アナログ」通貨の方が、
「デジタル(仮想)」通貨よりも「目に見え、持ち運び便利??
(量や場所などにもよりますが・・・)」といった利便性の点で
優れているようです。
もっとも、「現金」である「アナログ」通貨も「預金」に変換すれば、
「デジタル」通貨処理されますが、人間という存在は、
「目に見えやすいモノ」の方が、安心できるようです。
とはいえ、現行の「中央銀行」による「金融政策」にもかなりの無理が
生じているように見える(後ほど、項目を変えて、ご説明します。)ため、
「通貨」の「多種多様な選択肢の実現(選択の自由=貨幣リスクの分散論)」には
注目が集まっているところです。
「通貨」自体も、「国債化」するなど、ほとんど「債券(有価証券)」に
近づきつつあるようですが、いずれにせよ、通常の「通貨発行特権」だけに
依存し過ぎるのも問題のようです。
もちろん、逆の、「極端な(例えば、景気の過熱期=バブル発生など)」時期に
おける「過度」の「国債発行」には注意も必要ですが、
後にも触れますが、現段階では「デフレ(総需要縮小・不足)期」であり、
「完全自国通貨建て」の「内国債」であるため、「国家破綻」することなど
まず、正常な感覚では成り立たないと言われています。
(未来を極端に<悲観的>にしか考えられない論者を除いて。
残念ながら、そのような<悲観論>が「陰謀論」とも重なり売れる時代の
ようですが、少なくとも賢明な読者の皆さんには、「釈迦に説法」だと思います。)
まとめますと、現行の「金融政策」に対する懸念から、「私的」な「仮想通貨」が、
正規の「公的」な「法定通貨」を駆逐しようとしているようです。
「悪貨は良貨を駆逐する」という、学生時代に世界史などで一度は耳にしたことが
あるかもしれませんが、「グレシャムの法則」というのがあります。
さて、今後、どちらの「通貨」が「悪貨」で「良貨」になるのでしょうか?
こればかりは、予想もつきませんが、少なくとも、未来経済における
私たち一人ひとりによる「通貨選好観」によって変化していくのでしょう。
その意味でも、現行の「マイナス金利政策」は注視していく必要があります。
現実に、昨年末頃でしたか、「景気振興策」の一環として、
正規の「法定通貨」に代替する、ある種の「地域通貨」の使用が
奨励もされていたところです。
このあたりを見ても、政府自身が、様々な角度から「貨幣進化度」を
試しているのかもしれません。
まぁ、私たちにとっては、「生活安定」が叶えば、どのような「通貨」でも
決済上は問題ないのですが、「仮想通貨」だけは、「目に見えにくい」ために
まだまだ抵抗感も強くあるというのが、大方の見方ではないでしょうか?
通貨「独占」発行特権と「中央」銀行の未来
ところで、この「マイナス金利政策」には、イマイチあまり評判が
宜しくないようであります。
著者も、本書で「通貨進化論」や「金融政策論」、
「中央銀行の民主化論」など様々な角度から、今後の未来経済を
見据えた貴重な提案を数多くなされています。
わけても、「流動性の罠」といって、
「(民間)資金「需要」不足<資金不足ではない=
こちらは、通貨発行特権を行使(つまり、お金を新規調達すればいいだけ)で
「需要」を満たせるから>」にある時に、これ以上、
「通貨」を市中に流しても積み上がっていくだけ・・・といった結果が
予想されるだけに、「マイナス金利政策」には「限界」もある
(つまり、「無駄(死蔵)金」だけが滞留し、「実体」経済にも寄与しない状態が
心配されています。)
とりわけ、「デフレ期」にあって、あらたな「投資先」が見つからないなど
(正常経済を回していくのに必要な)資金「需要不足」にある時には、
直接生産とは関係のない株や不動産など「資産バブル」押し上げ効果にも
つながると懸念されています。
様々な評価や解説はありますが、アベノミクスにおける
当初の「デフレ脱却論のうち<金融面>でのリフレーション政策(一種のインフレ政策)」
では、「資産バブル」から、一般経済に「明るい」心理的効果を引き起こし、
「トリクルダウン(持てる者から持たざる者への資産移転効果を狙った<したたり落ちる>
効果」による、景気の底上げを狙っていたようです。
そのうえで、「成長戦略」による経済活性化とともに、「自然税収アップ」とによる
「歳出・歳入のバランス調整(プライマリーバランスといいます。)」を
中長期的に実現していくこと。
および、「金融政策」と「成長戦略」をミックスさせた「柔軟な機動的<財政政策>」で
もって、それでもなお、しぶとく残り続ける「総需要不足」に対応しながら、
少しずつ、経済の安定的成長軌道に乗せていこうとの気運が「原点」だったといいます。
(あくまで、管理人の私見で、細かい点では見解の相違もあるでしょうが・・・)
一旦、ここで、整理しておきますと、アベノミクスの「心理的効果」には、
この「失われた20年間」に完全自身喪失(つまり、デフレーション=デプレッション
<まさに抑鬱状態>)に陥った国民を元気づけて、そのうえで無理のない範囲での
これまでたまり続けてきた「ウミ(構造障壁=新規参入規制など)」や
「借金返済」をしながら、「中長期」的に立ち直ろうとの処方箋だったはずなのです。
ところが、国外情勢の変化や国内の「政局」事情など、諸般の事情はあったのでしょう。
焦りもあったのかもしれません。
2014年には、消費税「増税」路線に踏み切ってしまいました。
もっとも、政治的公平な観点から、このことは、現政権以前の「民主党時代」から、
さらに遡れば、今は昔の1998年前後からの「橋本緊縮経済路線」から
「小泉構造改革路線」など、すべては「財務省主導型」の「金融主導型経済施策」を
通して、今日まで積み重なってきた問題でした。
一方で、「社会福祉費用の増大」や「人口調整問題」などとも重なり、
一概には、「金融主導型」にだけ責任を負わせるのも粗雑な議論ではありますが、
そのようなこともあって、「財政政策」を抑制してきたようです。
また、理由はよくわかりませんが、「公共事業悪玉論」も根強くありました。
あるいは、「円高」が長く続き「黒字亡国論」などを展開した論者もいたようで、
そのことが、
今日の「円安誘導政策(今は、若干「円高」基調ぎみですが・・・)」に
偏っていったのでしょう。
いずれにせよ、その都度その都度の「政局問題(政権交代ゲーム??)」に
よって、経済政策も首尾一貫性を欠き、迷走し続けてきたのが現状です。
この間に、一部の時期における「景気回復」はあったにせよ、
全体的に総括すれば、「雇用なき景気回復」と称されてきました。
そして、もう一つ忘れてはならないのが、この「失われた20年」に
おいて同時進行してきた「情報産業経済化」といった「経済進化」が
あったことです。
このことを予め織り込んだ新発想の「経済理論構築」や
「実践的経済対策」も後手後手に回っていたようです。
そこに、「利権構造」といった隙間も創出され、
「新旧利権の交代劇」がなされてきたのは、
注意深く日々観察しながら生き抜いてこられた方なら、
ご理解して頂けるのではないでしょうか?
ことに、一般国民(管理人も含む)にとっての「労働環境」が、
日に日に悪化していったことは憂慮の念にたえないところです。
このように考察してきますと、「暗く苦しく憂鬱」にもなってきますが、
それが、当ブログの趣旨ではありません。
あくまで、「未来志向」で「明るく」、これ以上の「失われた20年」を
体験させられず、次世代の方に特に「自信と誇り」を以て、
日本人として、世界平和(さらには、宇宙調和)の「架け橋」となって
飛翔していって頂きたいからです。
建設的な私見は、これからまとめとして語らせて頂きますが、
こうした「冷静分析論(悲観論ではありません!!)」も、
そのための布石でした。
ところで、ここからが本記事の主題ですが、著者は、
「マイナス金利」や「さらなる量的金融緩和」、
さらに「中央銀行の役割」にまで「悲観的」であるようです。
もっとも、著者の本旨は、タイトルのように『中央銀行が終わる日』と
誤解ある表記をされていますが、あくまで「現行の形態であれば・・・」
という留保が付けられています。
最終的には、冒頭のハイエクの慧眼を持ち出すまでもなく、
「中央」銀行の「通貨独占発行特権」に極度に依存することなく、
「民間」銀行(銀行だけに限定されないのでしょうが・・・)による
「通貨発行権」も容認することで、「独自通貨」の多種多様化や
「地域通貨」など、一人ひとりの国民が自由自在に
独自の「通貨使用範囲(リスク分散術)」を選択できるようにすることで、
急激な「経済生活変動」にも十二分に個人的に耐え得る制度運用に
切り換えていくことが、「経済安定性」や「経済民主化」にも
寄与するのではないかという方向で、
現行の「中央」銀行の役割権限も徐々に「縮小」して
いくべきではないかとされているようです。
その「第一」として、「通貨独占発行特権」を徐々に「整理縮小廃止」の
方向へと持っていくべきではないかと。
とはいえ、依然、「経済安定性」の問題は残るので、
著者は、最後に、江戸時代の「秤座」に近い存在へと移行すべきだと
提案されています。
それは、「金融政策」といった「景気対策」から
「物価安定目的」という「経済安定性」という「本来業務」へと
復帰すべきではないかということです。
現行の「中央」銀行は、経済的観点から見て、ある意味「リベラル」に
なり過ぎているようです。
その「リベラルさ(政策のフリーハンド化)」が、かえって、
現代日本経済に深刻なダメージを与え続けてきたのではないかとも
見立てられています。
つまり、「経済を不安定にさせてきた元凶」だと。
それを、再度かつての「物価の番人」と呼ばれていた頃の
「保守的」な方向へ転換させよとのご意見のようです。
著者は、日本銀行の本来の立場から、現行の「金融政策」について
本書で、あたらしく登場しつつある「ビットコイン」に代表される
「仮想通貨の衝撃」も踏まえた建設的批評をされてきました。
また、<おわりに>で、最初の方で述べました「流動性の罠」から
抜け出すための処方箋として、政権担当者には独自の「信念」が
あって、ある種の「突破口」としての「減価通貨のようなもの」を
イメージしながら、この「マイナス金利」を導入したのかもしれませんが、
本書でも見てきましたように、そこにはなお「乗り越えがたい壁がある!!」と
強調されています。
このような「預かり金(それも、マイナス金利導入後の新規預金に限定!?)」に
「マイナス金利」を付すような「小手先のテクニック」だけではなく、
思い切って、「銀行券そのもの」に金利を付すべし。
しかも、「マイナスにもプラスにも自由自在に」ということを、
「地域通貨の神様」ゲゼルのアイディアを考慮した「通貨改革」を
提案されています。
このことは、「マイナス金利導入」前の長期「残高滞留預金」の使い道を
有効活用させるためにも、(現状では動かずに<これを、難しい言葉で「不胎化」
というそうです。本書297頁ご参照>民間銀行による国債買取資金に
活用されていたらしい、それによって調達された余剰金で
「過去」の国債償却源に当てていた??など、「決算書上での処理方法など」
様々なからくりもあるようですが、よくわかりません。)、
「実体」経済に対する「新規」投資資金に回ったりしないことには、
いつまでたっても「デフレ脱却」からは、遠のくばかりです。
そこで、本書では、著者が「日銀マン」でもあられたことから、
「金融政策」に比重が置かれた解説で閉幕されていますが、
やはり今後サミットでも話題になるだろうテーマは、
「機動的な財政政策」と「消費税<再>増税の延期」であります。
これが実現しないことには、アベノミクスもついに日の目を見ることなく
「駄目だったのか・・・」と、多くの国民が「意気消沈」して、
本当に「投げやり」な状況へと追い込まれないためにも、
これが「最後のチャンス」だと、最後まで望みを捨てなかった
「未来志向の<楽観派>」の経済批評家などは指摘されています。
ただ、本書でも著者が警告されていましたが、
サミットなどにおける国際「協調」が、
意外にも「ネック」になるかもしれないと示唆されています。
(本書16~26頁ご参照)
特に、安倍総理ご自身は、サミット前から「機動的な財政政策実施」へ
向けた「最後のお願い」に各国首脳との間で「根回し」されてこられましたが、
肝心なユーロ圏では、日本以上に深刻な「緊縮財政路線」だとも聞きます。
このように、「協調」路線が、かえって「裏目」になることもあるようです。
もっとも、サミット前の本日時点では、「最終宣言」は「未発表」の段階で
ありますが、何とか、「緊縮」ではなく
「拡張(と、表現するのもおかしいですが・・・)」、
適宜「柔軟」な景気回復路線へ向けた「ロードマップ」を提示して頂くことを
祈るばかりです。
そこで今後の日本経済の行方を考察するうえで、
今しばらく「円安」から「円高」に移行しつつあることが、
かえって「追い風」となるかもしれません。
なぜか、今もって、「円高悪玉論」もあるようですが、
これは「黒字亡国論」と同じく「極端な見方」であります。
管理人は、ごくごく通常の「一般教養知識(学校で習う程度)」で
考察させて頂いていますが、
「円安」「円高」ともに、当たり前ですが、
「メリット」「デメリット」の双方の視点を持っています。
そもそも、かつて『黒字亡国論』(文春新書でしたか)では、
日米間に極度に偏った考察だったように記憶しています。
この時期には、確かに「貿易黒字分」を国内「財政赤字補填」への転用などへ
振り向けるといった「需要」もありましたから、割合「好評」な意見も多かったようです。
そんなこともあり、「短期的視点」では、管理人も「全面否定」する訳では
ないのです。
しかし、その思考法を「中長期的視点」で適用していくと、
危険度も高まるようです。
「円高不況論=黒字亡国論(必ずしも、100%一致はしませんが・・・)」も、
現代では、説得力も薄れてきているようです。
そもそも、「日本経済」は、「輸出依存度が意外に小さい」とも指摘されて
いますし、すでに「輸出企業」は、海外に移転するなど、
「高コスト体質」にも耐え得るように改善もされてきたからです。
そこで、この「円高」は、かえって、「内需拡大」に寄与もし、
「財政政策」にも「追い風」になるかもしれません。
この「内需拡大策」が、進展し過ぎる「円高」の歯止め役を
果たしてくれるとも指摘されています。
要するに、「円高(他国に対する自国通貨高)」なので、
「輸入コスト」の面でも有利だとされています。
資源が少ない国では、この方法が適切だと思われます。
将来「インフレ」になった際には、またその時に考えれば済む話です。
とにかく、今は「デフレ脱却=景気回復優先」が「常道」でありましょう。
これが、「円安=輸入超過」なら、確かに「インフレ」を促進し、
ついには、「クラウディングアウト(民間資金の締め出し=民間投資の抑制)」
にも進展しましょうが、いまや「円高基調=非入超移行期」であります。
しかも、まだまだ「デフレ(膨大な需給ギャップ)脱却までの道のりは険しい!!」
のですから・・・
十二分すぎるほど、余裕もあることでしょう。
さらに、この「資金需要不足経済」の下、「有効需要創出」として、
防災や安全保障、エネルギー・食糧自給率アップなどのための
「大規模公共事業」といった「国土強靱化型公共投資」が、
「財政政策」によって賄われることが、
望まれているところでもあります。
(ちなみに、毎度、当ブログでご紹介させて頂いている藤井聡先生の
「わかりやすい」図表解説の記事は、こちらをご参照のこと。)
ですから、まさしく、2016年こそが、最後の「デフレ脱却」のための
「天下分け目の関ヶ原(または、天王山)」であります。
昔、小室直樹博士の著作で学ばせて頂きましたが、
「まさに、今となっては、ケインズ(財政)政策の出番!!」であるようです。
国際為替上の「マンデル=フレミング効果」など、難しい議論もあるようですが、
管見の限りでは、「完全開放経済」の時代のモデルだとか。
ですので、今日の「グローバル開放経済」とはいえ、
現実的な精密度から言えば、再び「管理された(ないしは、<ブロック化>)」に
傾く時代にあるようなので、あまり厳格に考えすぎない方が、
うまく良い方向に「財政政策」が働くかもしれません。
「最適解」は、管理人の勉強の範囲内では、「輸出総額=輸入総額」の
「枠内」に「差額」を押さえ込めばいい訳ですから、
今までの「円安誘導」の「余剰金」で、今後促進も予想される「円高」による
「損失分」も「補填」出来るでしょうし、それこそ「未曾有の量的金融緩和」の
「余剰資金」もあるでしょう。
そろそろ、最終結論に入りますが、
何度も強調させて頂きましたように、
「景気回復に、即効性などない!!」ということと、
「歳入・歳出額の均衡」にせよ、「輸出入差額問題」にせよ、
「中長期的」に解決していけばよいということです。
しかも、
「社会保障財源=赤字国債(または、今まで積み立ててきた<消費目的税>」で、
「公共事業=建設国債(未来志向)」でというように、
ごくごく基本的な処方箋で、地道に一歩ずつ「改善」を積み重ねていけば、
どこかの地点で、「臨界点」に達し、「デフレ脱却」も実現出来るでしょう。
それには、この「失われた20年」が長すぎたことや、
今後の「人工知能」などの進展、「長期低成長時代」とも複雑に絡むため、
「相当に長期間」の「臥薪嘗胆」も必要となることでしょう。
とはいえ、私たちのような、ごくごく普通の「庶民」は、
「生き抜いていく権利(生存権)」もあります。
このままいけば、「地獄の道は、<善意??>で敷き詰められている!!」の
文字通り、「じり貧状態」に落ち込んでいきますが、
今なら「まだ引き戻せます!!」と、
少なくとも、管理人だけではなく、真に日本を世界を宇宙を愛する人間ならば、
「確信」して頂けるはずです。
なぜなら、「諦めたら、本当に<最悪な人生>だったと、
誰しも後悔してしまうから」ですね。
ヘルマン・ヘッセも強調していました。
「地獄は、必ず克服できる!!」と。
「思考停止せず、自分で考え、明るく前向きに行動する限り・・・」
ということを、皆さんにも呼びかけながら、筆を擱かせて頂きます。
著者は、「中央銀行」の役割権限を少なく見積もっておられるようですが、
このような現状である限りでは、まだしばらくは「通貨独占発行特権」を
手放すのは「早すぎる」ようです。
つまり、「中央銀行は、まだ終わっていない!!」であります。
とはいえ、著者が、ハイエクに触発されたところから考察されていかれたように、
現在のアメリカの『大草原の小さな家に戻ろう派??』が掲げる
生粋の「草の根保守派」による「中央銀行廃止論」にも興味深い論点がありますが、
時期が時期だけに、こうした「過激な案??」につきましては、
世情が落ち着いてから、また論じなければならない機会が出てきましたら、
分析考察していきたいと思っています。
要するに、『ビッグ・ブラザー・イズ・ウォッチング・ミー』
(ジョージ・オーウェル)のような、
国民生活の隅々までが、相互監視されていくような
「集産型計画主義(経済)社会」(ハイエク、『隷従への道』ご参照)に
対して、気味が悪いと感じられる形を変えた「経済民主化論」であります。
もちろん、揶揄ではなく、本当に大切な論点ですが、
今回は、上記「安全保障上」の理由と紙数の関係上、外させて頂きました。
それよりも、ごくごく身近な問題であり、
管理人だけではなく、大多数の国民の皆さんがむしろ懸念されると
思われるのが、「財務省」の消極的な動きです。
「政府よ、しっかりして下さい!!」
「しかと、日本銀行と政府(財務省)の連携を果たして頂くことを
お願い申し上げます。」
日本人として、日本国家を「信認」している以上は、
一国民として、叱咤激励させて頂きます。
最後は、著者との見解に相違点も多少出て来てしまいましたが、
著者の問題意識には共鳴もできますので、
著者には今後「新しい未来型」の
著者の本文中の表現??では、
「フィンテック=ファイナンス+テクノロジーの合成語」を
応用活用させた「財政政策」の新研究をお願いしたいと思います。
ということで、本書は、様々な角度から、「未来経済」を考えるための
良き教材ですので、是非一度、皆さんもお手に取って、
ともに考察して頂くことをお薦めさせて頂きます。
また、「仮想通貨の衝撃論」につきましては、
今後とも、様々な角度から追跡していく予定でいますので、
お楽しみにお待ち頂ければ幸いであります。
なお、「国債論」は、
『日本は「国債破綻」しない!~ソブリンリスクとデフレ経済の行方~』
(三橋貴明著、実業之日本社、2012年)
などを含めて、複数の書籍を参考にさせて頂きながら、
拙い頭ではありますが、分析考察させて頂きました。
ここに厚く御礼申し上げます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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[…] 「ビットコイン」については、前にもご紹介させて頂きましたが、 […]