野田宣雄先生の「二十一世紀をどう生きるか」を読もう!!「混沌の歴史」のはじまりにいかに希望をたぐり寄せるか??

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前回に引き続き今回は具体的な

「21世紀型生存術」を考えていこうと思います。

再び、「中世」へと回帰していく21世紀・・・

これは、どうも世界的に共通する状況です。

複雑な学問やそこから堅固に構築されてきた諸制度も

今や「原点」に立ち返り、すべてを根底から見直さなければ

ならない時期のようです。

「他力の時代」が一時期流行しました。

「自力」による生き方が困難になれば、人は何を頼りに

生き抜く指針とすればよいのでしょうか?

今回は、この本をご紹介します。

『二十一世紀をどう生きるか~「混沌の歴史」のはじまり~』(野田宣雄著、PHP新書、2000年)

野田宣雄先生(以下、著者)のプロフィールは

前回もご説明させて頂きましたが、実は「もう一つの素顔」が

おありのようです。

親鸞上人を開祖とする「浄土真宗」の僧侶だそうです。

「混沌たる中世」には、「他力本願」にすがりたいという

庶民の切なる願いが高まります。

21世紀現在、世界的に「新しい中世」へと回帰中とのことですが、

日本で「中世」というと平安末期から室町前期辺りとされています。

この頃、日本では長引く「戦乱」や「天災」とともに、

経済社会では、「貨幣経済」が本格的に庶民社会に流通し始めた時代でした。

著しい「経済格差」の中で、様々な「救済願望」が高まっていきました。

「他力来世信仰」の浄土教が上下問わずに幅広く浸透していきました。

源信僧都や空也上人を始め、鎌倉時代の一遍上人に至るまで「遊行僧」という

それまでにない「新たな集団」が生まれました。

この浄土教の流れから、鎌倉時代に二大浄土教宗派が分かれていきます。

法然上人の「浄土宗」と親鸞上人の「浄土真宗」ですね。

管理人は、宗派を問わず信仰には寛容な立場ですし、何でも学べるものは

遠慮無く学び取らせて頂こうという考えなので、今回のテーマにも

宗教上の他意は一切ございませんので、安心して下さいませ。

さて、著者は浄土真宗の僧侶でもいらっしゃいますが、

ここで思い出すのが大学時代の思い出です。

この本は、そんな大学時代の2000年に出版されたのですが、

その前に「親鸞ブーム」が大規模に起こりました。

そうです。

1998年(管理人の大学入学の年)ですが、

五木寛之さんの「大河の一滴」が大流行・大ベストセラーになりました。

そんな時期に、同じサークルの先輩から「超就職氷河期」の影響からだったのか、

この「他力」に関する1冊をご紹介して頂くことになりました。

「大河の一滴かぁ~、俺もそんな生き方が出来ればいいなぁ~」

当時、多くの老若男女でこの本をお読みになられた方は、

皆さん一様にそんな感想を抱かれたことでしょう。

京都は寺社も多く、わが母校にも梅原猛先生の影響か

親鸞上人に惹かれる方も多かったのでしょうか?

そんなこんなで、長々と私事を語ってしまい大変恐縮ですが、

親鸞上人に対する思い出があるのです。

この本では、浄土真宗の僧侶でもある著者が、親鸞上人を通じて

「新しい中世」における生き方のヒントも提示されています。

著者は、ドイツの近現代史がご専門で、当然「宗教改革運動」にも

目配りが届く方でもあります。

東西のプロテスタント宗教運動を比較できる方です。

今回は、「東西の中世」を比較しつつ21世紀以降

相当長期に渡るであろうと予想される「新しい中世」における

生き方をこの本を通じて皆さんとともに模索していきたいと思います。

そういう訳で、この本を取り上げさせて頂きました。

「遊びをせんとや生まれけん♪♪」(梁塵秘抄)

この梁塵秘抄は、上下貴賤問わず人口に膾炙していった歌曲でした。

今様というそうです。

かの織田信長が好んで舞ったという幸若舞「敦盛」の一節も

この今様が原型となっているそうですね。

親鸞上人を始め中世の遊行僧は、「和讃」という歌曲を念仏とともに

踊りながら布教活動をしていたといいます。

こうした「混沌とした歴史」状況においては、学問も教義もあまり

庶民には力になりません。

「人間いかに一寸先は闇の中で、大安心するか」が一大事です。

さて、16世紀(中世末期)のドイツでは「宗教改革運動」が

さかんであったようですが、日本の中世事情とは大いに異なっていた

ようですね。

同じ頃の日本では、すでに近世に入りつつある室町末期(戦国の乱世)から

豪華絢爛たる安土桃山時代ですが、ドイツの事情と異なり

生真面目な宗教環境ではなかったようです。

意外にもその「明るさ」が悲劇を生んだのですが・・・

織田信長と石山本願寺勢力の対立は、なかなか一進一退で

「庶民の力」も侮れなかったそうです。

そんな時代環境の下では、「遊び狂い」が上下貴賤問わず

流行になっていました。

翻って、「中世のヨーロッパ」を考察したホイジンガという学者も、

「中世の秋」や「ホモ・ルーベンス」という論考で、

「人間の本質は遊び」だと指摘しています。

そこから、最近ではこの学者の業績などが強調され

ヨーロッパの中世も「暗い中世」ではなく「明るい中世」だとの

見解も生まれてきているようです。

が、どうでしょうか?

ルネッサンスは、近現代社会の母胎となる土壌を提供しましたが、

その後の科学技術の驚異的な進展が、今日のような心の荒廃を

同時に招いてしまったのだとすると、どこかに大きな「欠陥」が

あったのではないか、と思うのは管理人だけでしょうか?

おそらく、デカルト以来の「主客二元論」がここまでの事態を

招くものだとは、当時ヨーロッパの知識人層は思ってもみなかった

のではありますまいか・・・

そう考えると、やはり「明るい中世」だとは

おおよそ考えられないように感じるのです。

職業中心の人生観の崩壊がもたらすもの

さて、管理人とは異なる別の視点で著者も「新しい中世」について

考察されていくのですが、中でも「職業中心の人生観の崩壊」という

テーマは必読です。

前にもご紹介させて頂いたマックス・ヴェーバーを引き合いにして

近代資本主義の批判分析をしていくのですが、さすがのヴェーバーも

「近代官僚制」を始めとする「管理社会批判」までは考察するも、

現代の不安定な「経済事情」までは予測していなかったようです。

「中世」は、昔も今も「混沌とした不安定な時代」を本質とするよう

ですが、「異常に投機性が高く偶然性の強い」現代経済社会事情は

これまでの人類史にも稀に見るため、誰もが尻込みしてしまうようです。

前にも当ブログ「暇と退屈の倫理学」のテーマ前回のミヒャエル・エンデの

対話のところでも考察させて頂きましたが、極端な「貨幣経済化」は

もはや人間が安心してゆとりを持った生活をするのに極めて困難な状況を

もたらしています。

ですから、今までの「一般常識」は通用しないようです。

そのような「暗澹たる思いに駆られる新しい中世」の中に

私たちは放り込まれてしまったようです。

「人生の安定した計画設計が出来ない!!」ということです。

もちろん、21世紀に生きる現代人は、

これまでの人類史の中で非常に恵まれた「特権的地位」にいることは

間違いありませんが・・・

ゆとりを無くした時代状況の中で、「豊かな文化」を

安定して育んでいけるのかどうか?

これは、私たちの「生きがい」にも大きく絡んでくるだけに

なかなか厄介な問題です。

こうして厳しい経済事情の中で、

「芸術・文化は万人の生きがいにはなりえない」と考察を進める

著者も「絶対他力」を必要とする契機になり得るのではないかと、

語っておられます。

こうして、私たちは「現世における希望」を諦めて逝かざるを

得ないのではないかと、深く嘆息してしまうような結論に導かれて

しまいました。

こうした時代に少しでも「絶望」から脱出し、

「希望はなくとも意義のある」人生を過ごしていくには

どのような考えやイメージを持てばよいのでしょうか?

「みっともなく生き、安心して苦しむ」ための知恵を

親鸞上人は用意して下さっているとおっしゃるのですが・・・

結局は、「欲を抑えていくしかないのか・・・」

とは思うものの、この「絶対他力」にはなぜか「大安心」を

与えてくれるような「温かい希望の灯火」があるような感じもします。

最後に著者は「二十一世紀の蓮如」として、新たな「アイドル」が生まれ

新たなコミュニティーを可能にする集団が現れるかもしれないが、

結局は「空しく朽ちて逝かざるを得ないのではないか?」とも嘆息されています。

しかし、「中世」は希望も残してくれているようです。

「既存の価値観や肩書き・世間体など気にせず、自らの信ずる道を生きる

ことを可能にする」からです。

新たなコミュニティーとは??

人によっては、それこそ「コミケ市場」という方もおられるでしょう。

いずれにせよ、私たちに「生ある限り」何とか創意工夫しながら

明るく絶望しつつ、時に微笑みながら生きていくのが幸せなのでしょう。

なお、著者の別著として、

「歴史をいかに学ぶか~ブルクハルトを現代に読む~」

(PHP新書、2000年)

をご紹介しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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