チャールズ・サイフェさんの「宇宙を復号する」量子情報理論が解読する、宇宙という驚くべき暗号!?

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「宇宙を復号(デコード)する」

チャールズ・サイフェさんが、

『異端の数ゼロ』に引き続き

量子情報理論に基づき、「宇宙の暗号」を

解読することに挑戦されました。

「宇宙の実相は、情報!?」

ということは、私たち人類自身も

つまるところ「情報体」なのでしょうか?

20世紀は、不幸とともに始まりましたが、

一方では、現在の私たちにとっては欠かせない

「情報通信技術」を生み出してもいます。

今回は、この本をご紹介します。

「宇宙を復号(デコード)する~量子情報理論が解読する、宇宙という驚くべき暗号~」(チャールズ・サイフェ著、林大訳、早川書房、2007年)

チャールズ・サイフェさん(以下、著者)は、

前にもご紹介させて頂きました『異端の数ゼロ』の著者です。

アメリカのイェール大学で数学の博士号も取得されている

著名なサイエンス・ライターです。

前回に引き続き、今回は「宇宙の暗号解読」に挑戦されています。

「そもそも、私たちはどこから来て、どこに立ち去っていくのでしょうか?」

人類は、太古の昔からあらゆる角度から、

その「真相追究」に励んできました。

前回の『異端の数ゼロ』のテーマとも共通する「始原論」です。

「宇宙の誕生」を探っていくことは、「生命の誕生」の謎を

解読することでもあります。

人類史は、悲しいことに「闘争や対立」を繰り返してきました。

その過程で、「いかにして他人よりも優位に立つか?」を確実にするために、

「情報秘匿技術」の開発を巡りしのぎを削ってきました。

安全で効果的な適度に複雑な「情報暗号(復号)化技術」は、

誰しも「のどから手が出るほど」欲したものでした。

残念ながら、人類はいまだに悪用する個人や集団が後を絶たないでいます。

しかし、「情報秘匿技術」は、何も悪いことばかりではありません。

誠に悲しいことですが、社会で無事に生き抜いていくためには、

一定の「性悪説」も必要とされることもあり、生存確保のためには

その技術を活用せざるを得ないところが、現状でもあります。

そうした現状の中で、希望と絶望を繰り返しかいま見させてきたのも

「情報理論」でした。

第二次大戦後から現在に至るまで、各国において

様々な「情報理論」が研究されてきました。

21世紀現在、日々の暮らしの中で「情報通信」なくしては

過ごしていけないほどに、社会に深く広く浸透普及しています。

今回は、そんな「現代情報通信技術」のきっかけを生み出した

量子情報理論の歴史探索とともに、そこから見えてきた

驚くべき「宇宙の真実」に迫っていきます。

本書読了後には、「隠れていた宇宙」(ブライアン・グリーン著、記事①記事②)とも、

また一味違った「異次元な世界」へと導かれていくことでしょう。

著者によると、「相対性理論」も「量子理論」にも共通するキーワードが、

「情報理論」だとされています。

本書では、「近現代情報通信技術史」や「現代物理学の基礎知識」も

同時に学びながら、「宇宙の実相」へ向けたタイムトラベルをしていきます。

「宇宙の実相は、情報だった!?」

その「暗号解読」の果てに見えてきた世界とは?

ということで、皆さんとともにタイムトラベルしながら、「宇宙の実相」を

考察していくことで、あらたな視点も得られるのではないかと思い、

この本を取り上げさせて頂きました。

「相対論」も「量子論」もその本質は「情報理論」だった!?

現代物理学の知見では、「宇宙の実相構造」は、

「物質とエネルギー」から成り立っていることが大前提と

なっています。

この「物質とエネルギー」は、「目に見えるもの」であれ、

「目に見えないもの」にしろ、私たちにとっては

比較的「具体的」な事物として認識されています。

ところで、現代物理学の最先端では、

今何が大きなテーマとなっているのでしょうか?

前にもご紹介させて頂いたフランク・ウィルチェク氏の記事でも

紹介されていましたが、スイスの「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」や

ニュートリノ観測に成功した日本人ノーベル物理学賞受賞者である

小柴昌俊さんの「カミオカンデ」などの「素粒子観測装置」では、

「最小物質の衝突実験から生成消滅してくるエネルギーの研究」なども

なされているようです。

つまり、時代の最先端は、「物質(素粒子)からエネルギー(情報)へ」の

流れにあるということです。

特に、前者のスイスでは、この観測装置を使って「人工のブラックホール創造」

過程から、「わたしたちの宇宙の起源の謎」についての解析がされているようです。

このような、「エネルギー(情報)」解析が身近になりつつある一方ですが、

どうしても私たちにとって、「エネルギー(情報)」については、物質よりも

抽象的なイメージで認識されているようです。

確かに、「エネルギー(情報)の実相」は、物質以上に「肉眼」では把握しづらい

点もありますので、仕方がないところでもあります。

著者は、そうした私たちの「盲点」から出発します。

「情報は質量やエネルギーや温度におとらず実在する、

具体的なものなのである。」と・・・

ところで、その「情報」の解析に一躍かったのが、

「現代コンピュータの父」アラン・チューリングでした。

チューリングこそ、第二次世界大戦のドイツの情報暗号「エニグマ」を

解読するのに成功した人物でした。

戦後、その時に得た知見を基礎にして、今日につながるコンピュータ科学を

発展させていきますが、実人生では、なかなか一般社会に受け入れてもらえず

悲しい生涯を閉じられました。

私たちが、現在このような便利な「情報通信技術の恩恵」を享受させて

頂いているのも、このような「天才の悲しい裏事情」があったことも

決して忘れてはなりません。

さて、その「情報通信技術」にも「栄養補給」が必要です。

それが、「エネルギー」です。

その「エネルギー」をいかに安価で効率よく導出していくかを通じて、

物理学・化学・数学などの基礎理論も発展していきました。

そのあたりの詳細は、この本をお読み頂くとして、

本書でもっとも重要となるキーワードが、「エントロピー」と

(量子)デコヒーレンス」の考え方です。

マクロ物理を対象とする「相対論」、ミクロ物理を対象とする「量子論」に

とっても、「自然界の厳しい現実」からは、かなり手強い抵抗にあってきたようです。

「そのまま放置しておくと無秩序・乱雑になっていく!!」と説明されることの多い

「エントロピー」ですが、著者はボルツマンの「確率・統計的」な見方の紹介を通じて、

「ランダムにあまねく拡散し、平衡状態に近づいていく」というイメージ像で理解する

ように解説されています。

もう一つのキーワードが、「(量子)デコヒーレンス」です。

これは、量子論で有名な「思考実験」として有名な

シュレディンガーの猫のパラドクス(逆説)」から生み出されてきた考えです。

ミクロレベルで観察すると、粒子はからみあって(重ね合って)いる状態から、

現実に「観測確定」させると、局所的な「1点」に収縮していく状態へと変化する

様子が見られたのです。

私たちの住む「現実生活圏」では、こんなこと「当たり前」と思われますので、

わざわざこんな「思考実験などするまでもない!!」というところですが、

これは、あくまで「ミクロレベルからの観測実験」であります。

「猫」くらいの人間の肉眼で見えるレベルの「物体」であるからこそ、

かえって「量子論の研究領域」を見定めるうえでも、適した実験材料なのでした。

つまり、「(量子)デコヒーレンス」とは、その収縮過程を「情報の流れ」に

見立てると、「情報の一方通行への拡散」ということです。

さて、ここでアインシュタインの登場です。

一般的には、マクロ世界を描写する「相対性理論」で

ノーベル賞を受賞したように思われていますが、実は「ミクロ」世界の

「光量子論」で受賞していることは、あまり知られていないようです。

そこでは、光の性質を巡って深刻な対立がありました。

「光は波か粒子か??」

現在では、もちろん「光は、波でもあり粒子でもある」との見方ですが、

この当時は、まだまだ「解明途上」だったのですね。

まとめますと、20世紀前半の「相対論」と「量子論」との対立的見方を

いかに整合的に体系化させていくべきかの方向性を巡っての「物理学論争」でした。

そのつなぎ目に、大きく立ちはだかった存在・・・

それが、「ブラックホール」でした。

この「ブラックホール問題」を解析していく過程で、「相対論」と「量子論」に

共通する流れが「情報」だとの視点が現れたのでした。

宇宙は、やがて冷たく滅び行く存在!?

ここで、やっと本書の主題につながりました。

著者の結論から言うと、

「宇宙は、有限で多層・多元的な情報体で構成されている!!」とともに、

「だが、その究極的結論は、情報自体に内在する本性から破滅のたねを抱えている!!」

ということのようです。

「宇宙は、膨張し続けている!!」

これは、あくまで20世紀に観測された結果から導かれた

「私たちの現在生きている宇宙」です。

また、「ビッグバン仮説」の立場から「宇宙に始まりと終わりがある」

ことを暗黙の大前提にする限り、「有限」だという結論に導かれます。

言うまでもなく、「人間は生きています!!」

それは、「生命ある存在の掟」です。

仮に、「有限宇宙論」を前提としない「無限宇宙論」を採用したとしても、

人間(有機的生命体)は、「有限」な存在であることには変わりません。

「では、やがて必ず死ぬ人間は何のために生きるのか?」

著者は、リチャード・ドーキンスの議論などを参考にして、

「利己的遺伝子(個体よりも情報重視説)」を援用しながら、

「人間は、情報の媒体者」として理解されています。

「個体は死んでも、情報は永遠に続く。つまり不死だと・・・」

いわゆる「文化的遺伝子(ミーム論)」ですが、ここから、

人間を含めたこの宇宙の森羅万象には「情報」が満ち溢れているとの、

「拡大情報仮説」へと向かいます。

そこで、ここでも「情報のエネルギー理論」が難問となってきます。

「情報は、本当にいつまでも保存され続けるのか?」

それとも、

「情報は、いつの日か完全に消滅していくのか?」

著者は、この結論を出す「仮説」の前提に、先程の「エントロピー」と

「(量子)デコヒーレンス」をもって考察していきます。

「情報は創造されることも破壊されることもありえない」と・・・

それが、本当かどうか確認したい・・・

著者の「思い」もそこにあります。

そこで、ブラックホール」の出番です。

「エントロピー」は、「閉じられた体系(地球)」においても

「平衡状態」に向かいますが、

この「(量子)デコヒーレンス」は、さらに「開かれた体系(宇宙空間など)」でも

「エントロピー」以上に、強力に作用していくらしい・・・

そうしたことが、「ブラックホール」の研究で解析されていきました。

もっとも、現在は未だすべての「ブラックホールの謎」は

解明しきれていないようです。

「ブラックホールは何も答えてくれない!!」らしい・・・

「人間が、ブッラクホールに吸い込まれたらどうなるのか?」

これも地球上に、未だかつて経験した人間もいないようですし、

いたとしても「音信不通!!」になってしまうそうです。

あくまで、理論上の予測ですが・・・

ですので、「何とも答えようがない!!」というところが、

物理学者の正直な意見だそうです。

様々な物理学者の見解もあるようですが、

「情報は保存されている」との「楽観的な見方」に傾きつつあるようです。

著者の意見もこちらのようです。

ですが、その「事象の地平の果てには・・・」

著者は、悲観的なようですね。

そこで、情報の全貌を解明する鍵は、ブラックホールにあります。

さて、長々と語ってきましたが、著者は「物理的」に考察していった結果、

最後には「憂鬱な気分」になってしまったようです。

「文明は破滅する運命にある」

これは、本書「序章」の書き出しですが、

「事実はまさにこのとおりなのだ」と・・・

そこで、「平行宇宙論」などに「救い」を求めつつも、

有限な生命はすべて死に絶えて、それまで生物が貯蔵していた「情報」も

宇宙のどこかに散逸してしまうので、使い物にならなくなるとの見解を

提出されています。

「情報の法則の究極の皮肉」だと・・・

それは、そうでしょうが、管理人は

そんなに悲観的になる必要もないのではないかとの意見です。

「今ある」私たちは、もちろん「有限」な存在ですし、いかなる「平行宇宙論」を

採用するにせよ、やがて「宇宙の死とともに情報は散逸する」という法則からは

確かに逃れがたいことではあります。

それでも、「希望はある!!」と思います。

昨日も「水の記憶」で触れましたが、

「何らかの形で、宇宙に記憶は残るのではないか・・・」

それは、「やがて無限に生成消滅流転を繰り返しながら、何者かが

その情報を受け継いでくれるのではないか・・・」ということです。

もちろん、「科学的」にも「現実経験的」にも明晰な唯一の正解でないことは、

「百も承知」であります。

このテーマを、宗教的に考える人なら、アカシック・レコードなどと

表現される方もおられるかもしれませんね。

弘法大師「空海」さんの表現なら、「宇宙にあまねく散在する<虚空蔵>」です。

著者の暫定的な結論では、「すべては情報次第!!」ということですが、

情報を貯蔵した人間の「意識=宇宙を理解する能力」も死ぬことにより、

「情報の法則そのもの」によって「無価値」となるようです。

それにしても、「壮絶な絶望感ですなぁ~」と思うのです。

これ以上は、「物理学の世界」を跳躍してしまいますので、

このあたりで止めさせて頂きますが、皆さんもご一緒に

「情報の本質」を「宇宙論」とともに考察して頂ければ幸いです。

いずれにせよ、チャールズ・サイフェさんの「テーマ設定」は

面白かったです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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