前田英樹先生の「独学の精神」を読んで、身ひとつで生き抜く知恵を学ぼう!!
「独学の精神」
前田英樹先生は、「独学の精神」は
自らの真剣に生きる営みの過程で
体認・体得する性質のものだと
語っておられます。
若くして、「本当の学ぶ喜び」に触れることが
出来た人は幸いです。
現代教育では、まったくこの逆に進んでいるようです。
未来に明るく羽ばたこうとする若者に
生きる勇気と喜びを持ってもらいたい・・・
そんな愛情あふれる1冊を2015年度の
最後にご紹介したいと思います。
「独学の精神」(前田英樹著、ちくま新書、2009年第2刷)
前田英樹先生(以下、著者)のご専門はフランス思想、言語論です。
柳生新陰流剣術の遣い手でもあり、芸術論や武術論にも
大変造詣の深い方でもあります。
著者は、この本で主に2つのことを強調されています。
①「ほんとうに大事なことは何ひとつ教えることなど
できない」
②「学ぶことは身ひとつで生きる自分が学ぶという
あり方でしかなされえない」と・・・
現代教育が、完全に行き詰まっているのも
「独学の精神」がまともに身に付かない環境にある
ことにも原因があるようです。
現代日本教育は、どこで道を誤ったのでしょうか?
著者は、二宮金次郎を例にとって
分かりやすく説明されています。
二宮金次郎にとって、「学問の意味とは?」
それは、「学問そのものが目的!!」ということです。
「役に立つも立たないも関係なく、学問そのものが
生きる糧であり、目的だった!!」のです。
その熱く燃えたぎる想いを深めながら、学び働くことで
精神的に独立して生きる感覚を養っていったといいます。
その「自主独立の精神」が明治以降の学校教育では
完全に書き換えられていったところに、
今に至る「諸悪の根源」がありそうです。
若き日に、「学問から深い喜び」を味わい学ぶことが
出来た人は幸いです。
「人間らしさの回復」も「学問の正しい身につけ方」から
始まります。
今回は、将来ある若者のために「学問の本当の意義」と
「独立の精神」を身につけて頂きたく、
この本を取り上げさせて頂きました。
葦のように考えよ!!
「人間は考える葦である」(パスカル)
「気晴らし論」でも有名なパスカルですが、
彼が本当に伝えたかったことは何だったのか?
結論的には、「人生は決して暇つぶしではなく、
信仰に生きよ!!」でした。
著者の表現によると、「身ひとつで生き抜く」と
いうことです。
この世でたった一人しかいない「極小な自分」を
「無限大」の宇宙と「無限小」の世界の中で、
恥じない生き方をするには、どうあるべきか?
常に問い続ける姿勢こそ大切だと語ります。
二宮金次郎は、「実地正業(日々の生業)」から
離れた「机上の空論(無意味な論争)」に
時間を費やすことなど、「学問の本道」から外れた姿勢だと
されています。
職人さんの姿勢に学びながら「物とともに一体化」
する学習姿勢の重要性について語っておられます。
そこから、頭だけの知性を偏重させる
「賢しらな計らい(さかしらなはからい)」
から離れる生き方を強調されます。
本居宣長を引き合いに、「漢意(からごころ)」から
「やまとごころ・まごころ」に戻る意義も説かれます。
ここから、バランスの取れた本来の人間のあり方である
「中道」に還る姿勢が生まれるのだと・・・
「知らないことは、知らない」と正直に認める姿勢は、
「誠実に生きる道」にもつながります。
明治から現代に至るまでの「実学思想」は、本来の「実学」とは
およそかけ離れたものでもあるようです。
「死者のありがたさ」を感じる心は、そのまま「職人の手技」を
語り伝えていく姿勢にもつながります。
このことは、現代の「後継者問題」などを
根本から考え直すうえでも重要な考えだと思われます。
稲とともに生きてきた日本人
著者は、職人の世界とともに稲作という生産活動に
注目していきます。
いずれも、「手作業」の重要性について語られています。
現在、農作業の風景が日々薄れつつあり、高度な機械化から
「狩猟採集時代への回帰」が話題にもなっているようです。
そのような時代環境でありながら、私たちに反省を促す
優れた貴重な論考を提供されています。
「狩猟の悲しみ」と・・・
この論考から学んだことは、「本来の生産性とは何か?」という
原点回帰思考です。
生産性と言えば、今日「効率性、低コスト」などでイメージされて
いますが、こうした生産に対する意味づけが当然視されていくに
つれて、人間精神も「貧弱化」させられていく一方です。
2015年は、「TPP(環太平洋経済連携協定)と6次元農業化」も
話題になりましたが、こうした急速な農業改革の中で
見失われていく視点も
この本では提供されています。
生産する喜びは、手作業と「物と心の一体化」から生まれます。
前にも当ブログの「七福神」のテーマでご紹介させて頂きましたが、
結局「モノにこころあり!!」をいかに日々の生活の中で
実感していくのかに尽きるようです。
年末年始、商売繁盛祈願で「七福神巡り」をされることも
おありかと思いますが、是非こうした視点も持って頂ければ
幸いです。
著者は、「柳生新陰流の遣い手」でもあります。
そうした自らのご経験から「稲とともに生きる平和生活」の
大切さを強調されています。
「淡々と、黙々とする手作業こそ日本の勤労の原点」です。
私たちも、日々生活が「簡素合理化」されていく過程で
失われつつある人間にとって本当に大切なものを
見つめ直していこうではありませんか?
そのことで、『「無益な物」への欲望から自立』することや
「生きる喜びを深く味わう生活」を取り戻すことにも
つながっていくようです。
「不安やおそれから来る煽り言論に惑わされることなく、
落ち着いて日々の生活をともに平和に築いていきましょう!!」
来年以降も、様々な角度から「本と人のご紹介」をさせて頂きますので、
どうぞ今後とも宜しくお願い致します。
2016年以降こそ、「明るい世の夜明け」が到来しますことを
祈りつつ筆を擱かせて頂きます。
なお、著者の別著に
「倫理という力」
(講談社現代新書、2001年)
「武道家」甲野善紀さんとの共著
「剣の思想 増補新版」
(青土社、2013年)
をご紹介しておきます。
2015年応援して頂きました皆さんに感謝申し上げます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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