井上智洋さんの「人工知能と経済の未来~2030年雇用大崩壊」AIによる人間労働経済社会縮小化へ向けた提言を読む!!

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「人工知能と経済の未来~2030年雇用大崩壊~」

若手の新進気鋭マクロ経済学者が解析された

「マクロ経済の視点」から捉えた人工知能<経済>論です。

人工知能によってもたらされる未来経済は、

バラ色の社会を約束するか、それとも・・・

第4次産業革命に連動させた働き方改革など

様々な経済改革案が発出されていく中、

私たち各自の労働観の問い直し作業も要請されています。

今回は、この本をご紹介します。

「人工知能と経済の未来~2030年雇用大崩壊~」     (井上智洋著、文春新書、2016年)

井上智洋さん(以下、著者)は、

新進気鋭のマクロ経済学者として

ご活躍されている若手研究者です。

ご専門は、マクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論だと

いいます。

特に、近年の目覚ましい人工知能の躍進と経済成長との

相関関係などをマクロ経済学の視点から多角的に

分析・提言されてこられたといいます。

学会だけではなく政府などの公的機関でも

積極的なご提言をされており、

AI(人工知能)社会論研究会の共同発起人も

務められているとのことです。

なお、これからご紹介させて頂く本書内では、

政府が国民家計に直接お金を振り込む方法で投資援助して

現在の淀んだ経済循環構造を軌道回復させ得るアイディアとして

昨今話題になっている「ヘリコプターマネー論」についても

若干程度触れられていますが、

その具体的詳細論としてのご提言は、

今月発刊予定の著書『ヘリコプターマネー』(日本経済新聞出版社)

触れられるようです。

その他コンピュータ関連本としては、

『新しいJavaの教科書』

(ソフトバンククリエイティブ、2006年)なども

好評発売中です。

さて、これまでの記事内でも多種多様な観点から、

人工知能と今後進展することが予測される未来経済(特に雇用問題)について

たびたび話題にさせて頂いてきましたが、

現在のところは、「楽観論」よりも「悲観論」の方が

上回るような勢いにあるようです。

正直なところ、人工知能開発の進展度合と経済成長の速度に

相関することから、現時点では、

近未来経済が確実に未曾有の大好況期を迎えるのか、

それとも、

空前の大不況(衰退)期を迎えるのかは、

今後の経済政策の舵取り次第でもあるので、

確実な断言など出来ない段階にあります。

とはいえ、予測されることは、

皆さんもお察しのように、

「人工知能による人間の<労働需要>が圧倒的に減少するのではないか」という

見通しが通常の見方であるようです。

あくまで、現在のような経済環境が、

このままずっと続くと仮定すればの話ですが・・・

こうした想定から、

「それでは、人間の<労働需要>が圧倒的に減少して大量失業時代が

やってきたなら、どのように生計を成り立たせていけばよいのか?」という

不安な声も出始めています。

そこで、本書における最終的解決法として提示される処方箋が

ベーシックインカム(以下、BI)論」であります。

今回は、その具体的内容の詳細な分析考察や

経済論をも超越した<そもそも論>としての原理的な哲学考察は

必要最低限に抑えさせて頂く予定ですが、

先に本書の結論を示しておきますと、

いわゆる2045年問題(シンギュラリティー=技術的特異点)が

訪れるまでに早期のBI導入を目指していく経済制度改革路線を

採用しなければ、

著者によると、

『もしBIのような社会保障制度がなければ大半の人々にとって、

未来の経済は暗澹たるものになりかねません。BIなきAIは

ディストピアをもたらします。

しかし、BIのあるAIはユートピアをもたらすことでしょう。』

(本書235頁)ということになります。

ということで、このような時代の大まかな流れを

ざっとつかんで頂いたところで、皆さんとともに、

近未来の雇用大崩壊に備えた妙案を探究していこうと、

この本を取り上げさせて頂きました。

2030年雇用大崩壊は、人工知能の進展度合と人間の知恵比べ次第でいくらでも緩和可能なのか??

さて、最初に本書の目次を以下で示しておきますが、

本書の主眼は、第5章にあります。

これまでも、当ブログ記事内で多種多様な「人工知能論」を

「楽観論」・「悲観論」を問わずに分析考察し続けてきましたが、

本書の「第1章」から「第4章」で論旨展開される

人工知能一般論につきましては、すでに十分知悉し尽くして

「私には腹一杯だ!!」と感じられる方には、

とりあえずは、「第5章(BI論)」だけでもご一読下されれば、

本書からの収穫は十二分に得られるものと思われます。

そのような読者の方にも、ざっと現状の人工知能水準や

過去・未来の流れをざっと追跡確認して頂く姿勢で

前にもご紹介させて頂いたジェイムズ・バラット氏

松尾豊氏の書籍ご紹介記事などに再度目を通して頂きながら、

本書をご併読頂けると、よい復習にもなるかと思います。

それでは、本書の内容構成の要約に入っていきましょう。

①「第1章 人類VS機械」

本章では、これまでの人類史の流れにおける

機械一般との対立協調にまつわる話題から

直近の「人工知能(AI)」の技術開発進展度と

現状報告を兼ねた解説から始まっています。

そこでは、機械による「技術的失業問題」が紹介されています。

この「技術的失業問題」は、18世紀末期から19世紀初頭における

イギリスでの産業革命と

それによる第二次囲い込み運動(エンクロージャー)が

比較歴史的には有名な事例であります。

それまでは、「マルサスの罠」といって、

人口増加に食糧増産が追いつかないものとされ、

人類の貧困化は不可避だと『人口論』でも主張されていたところ、

この産業革命による大規模機械化農法が可能になったことで、

一旦は回避し得たかに見えました。

この食料など資源面における限界論については、

実は、21世紀現在でも、本当のところは

未解決だとされる見解もあります。

いずれにせよ、この地球上の資源が「有限」であることを

大前提とするならば、人類が、「無限」に増殖し続けることは

不可能とまでは言えなくとも困難ではありましょう。

その問題点につきましては、

その後の先進国内外における啓蒙教育(例えば、

産児制限技術などの受容による革新的成果など)とも相まって、

かなりの程度までは回避し得ているかに見えます。

本題に戻しますと、ここでの問題は、

その大規模な機械化が、人間を「労働者」にさせたことと同時に、

それまでの「工場制<手>工業」によってまかなえた雇用分を

「喪失減少」させていったというところにあります。

その背景事情に関する詳細な解説は、

前にもご紹介させて頂いた本山美彦先生の

書籍ご紹介記事でも触れさせて頂きましたので、

ご興味関心がある方には、そちらをご一読されることを

お薦めさせて頂きます。

その後、時代は一気に現在にまで飛びますが、

この大規模<機械>産業化が、過剰在庫を積み上げ、

現代経済の好不況状況を左右してきたことは、

誰しもご存じのとおりです。

つまり、そのことが大きな要因の一つとなって、

「生産(供給)>消費(需要)」となり、

それに伴い、労働雇用面におけるミスマッチ(=必然的な失業状態の創出)も

生み出されてきました。

だからこそ、不況(デフレ)期には、公共投資による有効需要の創出が

不可欠ということになるわけですが、

ことに、成熟しきった先進国経済の状況下では、

「すでに飽和状態でカンフル剤が効かない!!」などという

悲観的な意見も続出中であることも皆さんが

よくご存じのところです。

そのように現状の大規模<機械>化産業経済の下での

「技術的失業」も深刻な中で、さらに、「人工知能」といった

さらなる<機械化>が推進されていけば、「どうなるか??」

それは、想像するまでもないことですね。

この領域こそ、「2030年雇用大崩壊」と呼ばれる現象を

誘発させる未体験ゾーンということになります。

これまで公刊されてきた「人工知能」関連書や著名識者の想定だと、

2045年にシンギュラリティー(技術的特異点)が到来すると

されてきましたが、その勢いは、想定以上に速まるかもしれません。

あるいは、もう少し、遅くなるかもしれません。

それは、人工知能開発の進展度合とこの間における

人間による制御技術の知恵次第であります。

いずれにせよ、著者は、このままの現状が進展していけば、

遅かれ早かれ、2030年あたりには、

相当な「技術的失業問題」が目に見えて現れてくるだろうとの

見通しを立てられています。

まとめますと、

この「技術的失業問題」を引き延ばしすることは可能かもしれないが、

いずれ、どこかの時点で「臨界(特異)点」に達することは

ほぼ間違いないということになります。

②「第2章 人工知能はどのように進化するか?」

本章における人工知能の進化史につきましては、

前にもご紹介させて頂きました甘利俊一先生のご著書が

比較的詳細に触れられていますので、

そちらに委ねさせて頂くことにしますが、

本書から新たに学び取らせて頂いた数点だけ

捕捉説明しておきましょう。

しばしば話題にされる2045年頃に本格化するおそれのある

大規模な「技術的失業問題」を引き起こす形態の人工知能とは、

「汎用型人工知能(以下、汎用型AI)」であること。

現在、世の中で話題にされている形態の人工知能とは、

あくまでも『一つの特化された課題しかこなすこと』(本書<はじめに>5頁)の

できない「特化型人工知能(以下、特化型AI)」だということです。

後者の特化型AIも「量」的側面における「技術的失業」を誘発させることは

もちろんありますが、これまでの経済史的展開を踏まえると、

他業種への<労働移動>が可能であり、雇用吸収が叶えば、

「技術的失業」は解消(少なくとも、小規模な失業率で済む)されるだろうと

推定されています。

その一方で、『人間に可能な知的な振る舞いを一通りこなすこと』ができ、

また、『あらゆる課題・目的に対応できるような』(本書77頁)

汎用型AIの場合には、

文字通り、人間の労働需要を優に剥奪しかねない急激な勢いで

「質」的側面における経済構造転換を余儀なくさせる「危険物体!?」だと

推定されています。

「推定」と表記させて頂いたのは、

このままの推移で何らの歯止めもなく人工知能開発が

進展していった場合であります。

この汎用型AIは、現在世界中でしのぎを削った激しい開発競争が

繰り広げられていますが、「第4章」で詳細に分析考察されている

「(第2の)大分岐点」における跳躍に失敗すれば、

『停滞路線に取り残されるということ』(本書189頁)にも

なりかねません。

本書での分析によれば、

これまでの「第3次産業革命(=米国主導のIT革命のこと)」に

日本が出遅れた前例もあるだけに、そのような可能性は低いとは

言い切れないところに懸念があると指摘されています。

そして、本章では、脳科学の知見を加味させた

「脳型(汎用)AI」開発においても、

下記の二つの方式があるとされています。

「全脳エミュレーション」と「全脳アーキテクチャ」であります。

具体的な解説は本書をお読み頂くことにしまして、

『全脳エミュレーション方式であれば「人工知能と自然知能の差」は

原理的にゼロ』(本書87頁)となることから、

これまでの人工知能が乗り越えることの不可能だった<生命の壁>を

突き破り、人間の活動範囲を著しく狭めて生存権にも直結し得ることから

人間の活動領域を残した『全脳アーキテクチャ』方式の方が、

人間にとっては安全かつ安心できるのではないかと提言されています。

まとめますと、

『全脳エミュレーションの方は国際条約で禁止にして、

全脳アーキテクチャ方式でのみAIを開発するようにした方が

世界は平和のままでいられるのではないか』(本書99頁)

強調されています。

ですから、この「全脳エミュレーション方式」の実現を可能な限り

引き延ばす間に、人間が得意でAIにとっては苦手な労働領域を

少しでも多く残しておくことが、

いずれ全面的に人類に押し寄せてくる「雇用大崩壊」に備えるうえでは

大切なことだということになりそうです。

③「第3章 イノベーション・経済成長・技術的失業」

本章では、著者の得意とするマクロ経済学の動向分析から

人工知能と人間の労働「需要」分析について、

わかりやすくグラフなどの図解を用いた解説がなされています。

ここでは主として、2030年以前の「特化」型人工知能が経済に

与えるだろう影響力について解析されています。

そして最後に、これまでの政府のマクロ経済政策の教訓などを踏まえた

著者独自の経済政策案が「ヘリコプターマネー論」の採用提案とともに

主張されています。

著者によれば、これまでの公共事業型の「財政政策」は

『需要不足による失業を解決する手段として妥当ではない』(本書136頁)と

されているようで、「ヘリコプターマネー論」に比重を置いた「金融政策」に

より期待を持たせた経済政策案を支持されています。

とはいえ、まったく「財政政策」の効果を否定されているわけではなく、

あくまで、従来型の「財政政策」にはあまり期待が持てないものと

考えておられるようです。

(注28、本書247頁などご参照のこと)

具体的なマクロ経済政策提言は、本書136~146頁あたり

ご参照願いたいのですが、

もう一つのAI開発の視点からは、

『政府はAIを産業として育てることではなく、その研究開発を

促進することに力点をおくべき』(本書127頁)

「イノベーション政策」に比重を置いた公共投資が必要だと

されている点も注目すべきところです。

私見では、現在は、何が次の「主力」産業になるかを

政府も民間も精確には予測も付かないところから、

戦後間もない頃から高度経済成長期へ向けた時期に活用された

傾斜生産方式>のような「(特定)産業(保護育成)政策」ではなく

著者も提唱されるような「イノベーション政策」の方が

より効果的ではないかという点は理解出来ます。

一方で、管理人にとって著者のご提案でよく理解できなかった点は、

「<公共事業型ではない>「財政政策」(本書145頁)とは、

より具体的に何を意味するのでしょうか?」ということです。

また、

「金融政策」により比重を置いたマクロ経済政策をと主張されますが、

現在のアベノミクスが推進する「第1の矢」である

未曾有の量的金融緩和の結果として、

誘導されたマイナス金利現状を鑑みても

果たして民間にどれほどの「資金需要」があるのかは明確ではなく、

公平を期して、まだ最終的結論は出ていないにせよ、

市中での「実需」が少ない(つまりは、貨幣回転率を

上昇させることが民間レベルでは期待し得ない段階にある)」からこそ、

「財政政策」による<公共>投資による後押しが必要ではないかと見るのが、

庶民感覚では「常識経験」的見方ではないかとも思われます。

つまり、「<お金そのもの>よりもまずは<仕事>をくれ!!」です。

現実に、お金だけを配っても、「仕事」した結果得られる所得保障なくして、

景気回復することなどあり得ないでしょう。

なぜなら、今ある「余剰」物品等の買い取りには使えるし、

多少の生活費補助にはなるでしょうが、一時しのぎの便法にしか

ならないだろうと想像が付くからですね。

「お金」はあくまで経済の潤滑油であって、

補助輪にしかすぎないということです。

また単に、管理人が勉強不足だからかもしれませんが、

およそ「財政政策=公共投資」とイメージするのが通常でしょうから、

<公共事業型ではない>などと表現されるのは、

一般国民にとって誤解を招く要因になり得るのではないでしょうか?

こうした表現は、この「失われた20年」における

「公共事業悪」なる大手主流メディアなどによる印象操作もあり

多くの国民にとっても混乱する要因となっているようで、

何も著者だけに特有の見方ではないのでしょう。

ですが、普通の庶民感覚では、この「失われた20年」における

「公共事業悪」運動の大合唱の流れのツケが

この数年間に一挙に回ってきて引き起こされる自然現象が

多発していることの意味が示唆していることを

いかにお考えなのか、

そのあたりの見解を聞きたいという一般国民も

多いのではないかと推測されます。

まさに、公共投資不足による社会資本整備が大々的に

遅れてきたからこそ、事故等が多発しているのではないでしょうか?

その点は、「人工知能」や「人間」よりも、

「お天道様(自然)」の方が正直であります。

恐れながら、このように厳しく指摘させて頂いてはいますが、

何も論破してやろうなどという悪意を込めて

主張させて頂いているわけではないのです。

というのも、マクロ経済政策(つまりは、<総需要>不足解消政策のこと)は、

労働需要不足を誘発させる「人工知能」対策だけに

特化して考えるべきではないと思われるからです。

確かに、2030年前後あたりから本格化するであろう汎用型AIによる

「技術的失業」に伴う需要不足は大規模なものとなるおそれがあることは

容易に想像が付くところです。

とはいえ、AI関連による「技術的失業」に伴う需要不足は、

マクロ経済全体の「総」需要不足にとっては、一部分でもありますから、

「技術的失業」以外を要因とした需要(投資・消費)不足問題を

解消する手段としては、依然として、<公共事業>による需要喚起の

意義がなくなるとも思われないからです。

いやむしろ、「人工知能」だけでは完結できない経済領域こそ、

大規模な公共事業だと考えるからであります。

先に語りましたように、社会資本整備という<公共投資>は、

人間が社会の中で安心して暮らしていける生活を望む限りは、

絶対になくなるものではありませんし、

著者が解説されるような

『橋や道路は必要に応じて建設すべきであり、不必要ならば

建設すべきではないからです。』(本書136頁)などという

生やさしいものではないのです。

管理人の友人知人にも建設業関連など社会資本整備業に携わっている方が

数多くいますが、現場感覚からすれば、

<公共事業>とは大手主流メディアや一部知識人がイメージするような

単なる「失業対策」事業ではないとの想いで日々汗水垂らしながら、

私たち一般国民の陰で朝から晩まで励まれている方々が圧倒的多数なのです。

管理人はそのような「声なき声」を持つ圧倒的大多数の公共事業に

携わる勤労者が胸に秘める想いを無下にして欲しくはないのです。

つまり、その想いを傍観・等閑視したり、忘却しさえしなければ、

まだまだ人間による「労働需要」を残すことにつながるということです。

この「労働需要」とは、単なる<数字合わせ>の話ではないのです。

そしてここにこそ、人間の「労働需要」が潜在的にも顕在的にも

豊富に眠っていることを強調させて頂きたかったからです。

現在、第4次産業革命に向けて、重荷などを安全に取り運ぶことが

可能な<パワードスーツ>などの一般テクノロジー開発も

推進中ですが、さすがに、大規模な公共事業ともなれば、

そんなにすぐには<パワードスーツ>などを身にまとった人間に代わる

「(現場作業用の)汎用型AI」を全面的に導入することも

困難でありましょう。

経営者ならより一層のこと、

投資と雇用の経営判断にも慎重になるところだからです。

この皆が抱くであろう道理に対するごくごく素朴な疑問点を

解消して頂きたく、次著での明快なご説明が期待されるところです。

(念のため、何度も強調させて頂きますが、

このような手厳しい批評をさせて頂いたからといって、

本書で提起された諸問題意識の値打ちが下がるものではありませんので、

皆さんも是非とも本書をお手に取りながら、ともに考察探究して頂ければ

幸いです。)

④「第4章 第2の大分岐-第4次産業革命後の経済」

本章では、2030年以後に予測される経済構造の転換に

いかに対応するべきかが解説されています。

ここからが、「汎用型AI」の出番です。

ここで起きるとされる本書で表現される「第2の大分岐」における

人工知能研究開発投資に後れを取り、

世界における経済構造転換にも

うまく乗り切ることに失敗すれば、

国民大多数の雇用に多大な損失を与えることにもなりかねません。

「では、そのような絶望的に悲惨な雇用喪失状況に陥るようにしない秘策とは?」

また、

「仮に、最悪の場面を迎えても、国民生活の破局を最低限に抑制するための秘策とは?」

それが、最終章での本題「ベーシックインカム」導入案であります。

⑤「第5章 なぜ人工知能にベーシックインカムが必要なのか?」

本章こそ、冒頭で触れましたように、

本書における最大の「読みどころ」ですが、

このテーマは、今後の超重要課題ともなってきて、

哲学思想的な問題も複雑に絡まることから、

一度に語りきることも難しいので、

今後とも追って探究させて頂くとともに、

最後に項目をあらためて、現時点での疑問なども含めて

皆さんとともに考究していきたいと思います。

「純粋」機械化経済社会の国民生活安全弁としてのベーシックインカムとは!?

さて、本書の大枠のご紹介は済みましたので、

再度、本書の最大「主眼点」をざっとおさらいしておきましょう。

著者によると、

2016年の現時点あたりから当分の間(おおよそ2030年以前まで)は、

人工知能研究開発とその労働現場での実践的適用に関しては、

「特化型」AIによる人間による労働<補完>媒体にしかすぎないだろう

予測されていました。

とはいえ、この「特化型」AIにせよ、今後、その種類が増加し続けると

「量」的側面においては、「労働需要」減退が大きく生起してくるだろうことは

警鐘されていました。

その「特化型」AIが、人間労働の<補完>媒体に見えたとしても、

それは、マクロ経済全体面で分析すると、局所的であって、

全体的に見て判断すれば、代替的(つまりは、人間がAIに仕事を奪われると

いうこと)であることも多いので注意すべきだ(本書129頁)とも

指摘されていました。

そして、この「特化型」AIの進展によって、

徐々に、人間の「労働需要」(特に<労働集約型>であるサービス産業)と

生産性上昇率が低下していき、ついには、

経済全体的に「大衰退(停滞)」を招きかねないとも

タイラー・コーエン氏の『大停滞』などを参照しながら、

今後とも経済成長を望むのであれば、

『情報技術をこそ発達させるべきだ』(本書126頁)とされます。

(ちなみに、タイラー・コーエン氏の『大格差』については、

こちらの記事もご一読下さると幸いです。)

とはいえ、これは、ある種の無限後退のような側面もある

大矛盾を抱え込むことになります。

つまり、経済成長率と「情報(機械)技術」進展の相関度数に

極度に「人間」が依存してしまうことになるからです。

言い換えれば、「情報技術進展率≧経済成長率」になれば、

それ以上の生産性上昇や人間による労働需要を見込めなくなるからです

そして、現在世界中がこぞって研究開発競争している

「汎用型」AIの成果目途が目立って出現し始める時期が、

2030年前後であり、

遅くとも、その経済への波及効果が出てくるのが、

2040年代頃ということになるそうです。

この「特化型」から「汎用型」への部分的または全面的な移行が

スムーズに進展していけば、

現在常識とされているような経済生活は

まったくその様相を一変させることになります。

このことが意味することは、

これまでの人類の経済的「価値観」をも抜本的に変化させることに

なるだろうということです。

つまり、本書<おわりに>で紹介されている哲学思想家バタイユが

示唆するような「<有用性>経済から<至高性>経済へ」の

経済的「価値観」の転換が余儀なくされるだろうということです。

(なお、バタイユにつきましては、記事①記事②

ご一読下さると幸いです。)

今現在でも先進国では、すでに「余剰」経済であり、

豊饒な経済生活を享受し得る環境にはありますが、

それは、まだごく一部の「富裕層」だけの話で、

管理人も含めて一般経済層にとっては、

「贅沢」な世界の夢物語であります。

現在の問題は、モノやサービスは「過剰」に提供し得る

「供給」余剰経済にはあるものの、

その「消費」需要を賄うための十二分な「資金」を

一般経済層が手にすることが出来ないことに由来する

デフレ循環型不況にあることです。

そこで、そうした「負」の経済条件を少しでも解消すべく

著者などが提案する「ヘリコプターマネー論」などが

出てくるわけです。

紙数も残り僅かになりましたので、

簡潔にまとめますと、

この「ヘリコプターマネー論」は、あくまで、

現在遂行中の未曾有の量的金融緩和の「直接」方式であります。

つまり、民間銀行などの「中間」媒体を通さずに、

国民へ「直接」お金を振り込むというイメージです。

まさに、「ヘリコプターからお金をばらまく!?」といったイメージですね。

とはいえ、この「ヘリコプターマネー論」だけでも、

従来の「金融政策」の延長線上にあるだけで、

これまで縷々、本書のご紹介を通じて解説させて頂きました

「汎用型」AIが全面活用された「純粋」機械化経済社会においては、

そもそも人間による「労働需要」が激減してしまうために、

現在のような形態での「普通に働いて<賃金>所得を得る」経済生活が

絶望的に困難な状況となり、

極端な話ですが、

著者の表現をお借りすれば、

『純粋機械化経済に至って全ての労働者は労働から解放され、

もはや搾取されることもなくなるが、それと同時に飢えて

死ぬしかなくなります。何の社会保障制度もなければ

そうならざるを得ません。』(本書197頁)ということになります。

(ちなみに、この「ヘリコプターマネー論」と「BI論」とは

似て非なるもののようですが、現時点での管理人の勉強不足により

今後の「宿題」ということで、コメントは差し控えさせて頂くことにします。)

そのような経済環境に至っても、

すべての人間が、幸せに生きていけるように保障するのが、

「ベーシックインカム」制度です。

このBI論については、

管理人も、同志とともに勉強研鑽中ですので、

今後とも書評とともにその勉強成果などをご報告していけたらと

思っています。

なかなか興味深いテーマが数多くあり、

実現へ向けた現下における諸問題などの疑問点も多々ありますが、

いずれ近日中のお楽しみということで、

ここらあたりで筆を擱かせて頂くことにします。

本書の「主眼」が、「第5章」の「BI論」にありますので、

前半で著者に大変厳しいご指摘をしてしまい、

ご迷惑をおかけしてしまいましたので、

著者へのお詫びの意味も込めて、省略させて頂くことにします。

とはいえ、その一端だけは、

本文内の要約にて皆さんへご紹介させて頂きましたので、

あとは各自で考察して頂ければと願います。

ということで、本書は、「マクロ経済論」から見た

「汎用型AIによる人間の労働需要の激減(『2030年雇用大崩壊』)と

BI論」を主題に特化した好著ですので、

皆さんにも是非ご一読されることをお薦めさせて頂きます。

(なお、あくまで、本書への批評部分は、管理人自身の素朴な疑問点を

ご指摘したまでであり、本書の値打ちや著者の名誉やお仕事を

妨害する趣旨でさせて頂いたものではありませんので、

その点は、重ね重ねご寛恕願います。

今後とも著者のご活躍を期待しています。

なお、「公共事業論」として、

『公共事業必要論』(森田実著、日本評論社、2004年)

『新公共事業必要論~港湾・空港の整備が日本を救う~』

(同上、2008年)

※森田実さんは、かつて、

管理人が高校生だった時分(1995~1998年頃)に、

フジテレビ系の『めざましテレビ』でご活躍されていた評論家です。

森田実さんの名言コーナーに勇気づけられ、

古典が好きになったこともあり

ここにご恩返しさせて頂きます。

『公共事業が日本を救う』

(藤井聡著、文春新書、2010年)

※藤井聡さんは、「国土強靱化論」でお馴染みの論客です。

をご紹介しておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました。

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